仕事中の意識レベルの低下、呂律困難で救急搬送された患者さん、くも膜下出血と診断後にICUへ入室し2日目でせん妄を起こしました。せん妄を起こした原因やその大の対応について自分のアセスメントと看護の実際をこちらの記事で紹介いたします。
〈はじめに〉
私は新卒でICUと救急外来のある部署へ入職しました。入職時はなかなか学習面で追いつけず、考えてからしか行動ができなかったので常に怒られていました。入職して半年以上たち、疾患ごとの看護についてやっと少しアセスメントができるようになった頃の事例です。
〈患者紹介〉
50代の男性が仕事中の突然の意識障害と麻痺があり救急車で運ばれてきました。運ばれてきた当初は症状から脳梗塞かもと言われていましたが、血圧が非常に高く200越え、CT検査に行きくも膜下出血の可能性が高いとわかりMRI造影検査実施後、IVRでコイル塞栓術を実施しました。その後ICUに入室しました。
〈経過〉
私は患者さんが救急車で運ばれてきたときの対応と、ICUでIVR治療後の患者の受け持ちを担当しました。私はこのときくも膜下出血後の患者さんを初めて受け持つので、スパイナルドレーンというくも膜下出血後特有の処置の介助や管理ができるのか頭がいっぱいでした。
治療から帰ってきたころには夜勤さんに引き継ぎを行い自分は受け持ちではあるけれども実際にその日関われたのは救急車で搬送されてきた直後のみでした。2日目夜勤で患者さんの受け持ちになりました。
幸い患者さんは麻痺は右上下肢に残ったものの昼間は受け答えもできており、JCS1程度でした。しかし実際に私が受け持ちだした時間から様子がおかしくなりました。周りをきょろきょろみたり、ドレーン付近を触ろうとしたり(ミトンは前勤務者からつけており、直接は触れない状態だった)明らかに昼間の申し送りとは異なりました。
おかしいなとは思いながらもいつも通りルーチン業務をこなしていたら、先輩看護師から「どう思う?」と聞かれました。その時私は環境変化によるせん妄だろうと思い込んでいたので「せん妄だと思います」と答えましたが「原因は何があると思う?」と聞かれ、「環境要因や病態的にせん妄リスクが高いので」と答えると「具体的に病態のどこがせん妄リスクなの?」と押し問答を繰り返しました。
最終的に「それではアセスメントが足りないからちゃんと勉強してきてね」と言われました。
〈アセスメント〉
私はまず患者さんの病態について学習しました。クモ膜下出血は血管にコブののよう空間が形成され、血管の壁が薄くなっていることで破れやすいコブが破裂しクモ膜下腔という場所に出血が広がります。今回は出血してすぐに来院されたので、すぐに止血剤の点滴を行い、血圧を下げました。
出血の原因のコブにIVR治療で血管内からコイルを詰めることで再破裂を予防する治療を実施しました。クモ膜下出血後の合併症として1番リスクが高いのはスパズムと呼ばれる脳血管攣縮です。その名の通りくも膜下出血発症後~2週間程度スパズムの期間があり、最悪脳梗塞を発症し麻痺を悪化させます。スパズムの対処法として血管が攣縮する期間は血圧を高めに管理する(といっても元々出血しているので180以上は危ないですが、140~160㎜Hgで管理していました。)あとは輸液量を多く入れることで、血管の容量を増やしスパズムを予防する。
スパズムの予防のために血圧を高めに管理することで脳血流量が増えます。過灌流とまでは言わなくても脳血流が増加することで患者さんは興奮状態になる方もいます。スパズム予防のために血管拡張を促す点滴も使用していました。
また脳血管疾患発症後は混乱しており状況を冷静に判断できません。
右上下肢は麻痺で動かすことができず、左上肢もミトンをされているし、ベッド上安静を強いられる環境もまたせん妄の要因です。
JCS1程度は治療後ありましたが、それでも状況を正しく判断はできないですし、せん妄のリスクは十分あります。
また食事を口からとることは難しいだろうとEDチューブを鼻から挿入されていたことや、多数の点滴、腰部にあるスパイナルドレーンなど様々な挿入物があった環境も、治療上仕方ないとは言うけれどせん妄要因の1つです。私が元々考えていた通り環境的な要因もあり、病態的な要因としてスパズム期の対処法やそれをしないとどうなってしまうのかというところまで、病態の学習を先輩看護師と一緒に行いました。
〈実際の看護〉
私は病態について調べ、先輩看護師とともに患者さんのアセスメントを行いました。確かにスパズム期で脳血流が増加することもあり、脳血管疾患で混乱していることもありせん妄につながってしまったのだと結論に至りました。
そこでまずはせん妄の対応として環境整備から実施しました。
留置されている挿入物は現在必要であり抜くことはできないけれど、抜けないようにドレーンの位置を調節したり、患者さんの視界からできるだけ見えない位置に配置しました。ミトンは取りたそうな動作があったので、看護師がそばで寄り添える時には外して行動を見守りました。血圧管理は指示範囲の中でコントロールしました。
また言葉は理解できる時と理解できない時があり、理解ができていそうな時にはどうして今こんな状況になっているのか、ここはどこで今は何時なのかを伝えました。夜間はできるだけ眠ってもらえるように明るさを最大限暗くしたり、物音を立てないように配慮しながら業務しました。
〈看護の結果〉
患者さんは夜間はなかなか眠れなかったようですが、混乱した会話も夜勤入りの時に比べれば減りました。時々「ここは○○病院か」「何時?」と自分から発言し、私が説明したことを覚えているときもありました。
ただその後もその患者さんは夜間にせん妄を繰り返し、スパイナルドレーンをいじったり、夜間に急に「帰ります」というようになったり、1日だけのかかわりではその後の変化は難しかったです。自分のアセスメントも看護記録には残しましたが、看護計画には反映が上手くできておらず、結果的にその患者さんのせん妄は悪化してしまいました。しかし一晩かかわりをアセスメントして工夫しただけで患者さんのせん妄が軽減していました。
〈事例を通して思ったこと〉
私は今回患者さんと関わる中で、病態と繋げてアセスメントができていなったんだと痛感しました。教科書で勉強したことがそのまま患者さんで起こるとは限りませんし、実際に患者さんの看護をアセスメントするのは現場で看護を実践している先輩看護師に相談したり、再度どんな病態なのかを調べるなどアセスメントする上で必要な材料を集めることが必要だと学びました。
自分だけでこうだと思うとアセスメントして看護実践するだけでは、不足している知識もあるし自分にない発想が先輩看護師にはあるかもしれません。自分がこうだと思い込んで間違った道に進まないためにも、必ずカンファレンスなどで他の看護師の意見を聞くことが大切ですし、根拠を持って看護を実践することで自分の看護実践に自信を持てると感じました。今まではこうかもしれない、とりあえずやってみようと思っていた看護もあったので、根拠を持ってアセスメントした看護実践の大切さを感じました。
まとめ
いかがだってでしょうか?私の経験を踏まえながら転職時に気を付けたいポイントは参考になりましたか。転職活動を通じでこれからの自分の育児や看護師としての働き方を考えることができるいい機会になると思います。またママさん看護師一人で育児をするのではなく、旦那さんや祖父母や職場のスタッフなど色々な人がそれぞれの形で育児にかかわってくれていると実感できるのではないでしょうか。どうかこの記事があなたの転職活動の参考になれていたら幸いです。私はくも膜下出血後のせん妄の患者さんと初めて関わる中で、自分のアセスメント力の未熟さと勉強不足について実感しました。アセスメントは自分だけで考えるものではなく、先輩看護師の意見をもらいながら学習し、病態とも関連付けてアセスメントしていくことが大切だとこの事例で学びました。事例の経験を今後の自分の看護に生かしていきたいと思っています。
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