精神科の患者さんのアセスメント

会員登録 ログイン
メニュー
#2540 2024/04/23UP
精神科の患者さんのアセスメント
更新情報を受け取る mail このエントリーをはてなブックマークに追加
mail

初めまして。私は精神科で勤務している看護師です。精神科とは、患者さんの内面を深く解釈する必要があるからこそ、他の科と違ってアセスメントに悩むこともあるかと思います。この記事では、精神科の患者さんに特化したアセスメントの方法を解説していきます。

①どうしてアセスメントが必要なの?

アセスメントとは、患者さんの分析と解釈です。情報を収集→整理→判断する過程のことを言います。情報の収集では、主訴、既往歴、家族歴、服用している薬についてを患者さんから聞きます。その後に、視診、聴診、触診、打診を行なって、客観的な情報を集めていきます。収集した情報、疾患、症状を知識と照らし合わせて、患者さんに必要な看護を考えていきます。そのためにアセスメントは重要です。問題点や、必要な看護は患者さんの全体像の把握を無くしてはできません。看護は、患者さんを知るというところから始まるのです。

②アセスメントの手順

1.S情報(主観的情報)とO情報(客観的情報)を収集する。
S情報とは、患者さんが訴えた「お腹が痛い」「呼吸が苦しい」などの情報のことです。
O情報とは、バイタルサインや検査データ、看護師が目で見て観察した情報のことです。
2.Aのアセスメントで情報を分析し、問題の解明を行う。
3.Pのプランで必要な看護を考える。
☆ゴードンの11の機能的健康パターンを基に記載していきます。
項目は、
1.健康知覚-健康認知(健康知覚は適切か、健康管理は適切か)
2.栄養-代謝(栄養摂取は適切か、身体各部での栄養代謝は適切か)
3.排泄(弁の排泄は適切か、尿の排泄は適切か、汗の排泄は適切か)
4.活動-運動(身体活動は適切か、日常生活活動は自立しているか、余暇活動は適切か)
5.睡眠-休息(睡眠・休息・リラクゼーションは適切か)
6.認知-知覚(感覚機能は適切か、認知機能は適切か、不快症状はどうか)
7.自己知覚-自己概念(自己概念はどうか、自尊感情はどうか、感情の状態はどうか)
8.役割-関係(適切に他者との関係を築けるか、疾病・治療による役割の影響はどうか)
9.セクシャリティ-生殖(生殖機能、セクシャリティはどうか)、
10.コーピング-ストレス耐性(ストレスとストレス耐性の関係はどうか、コーピングは適切か)
11.価値-信念(価値観・信念は守られているか)

③アセスメントの詳細

ここでは、身体的な評価ではなく、心の評価になる、「精神科」に特化したアセスメントの方法を見ていきましょう。精神科では、主にうつ病、統合失調症、双極性障害などが多く、目に見えない人間の内面を引き出していく必要があります。身体的なアセスメントとは違い、はっきりした原因・見える情報が少ないことがあります。
↓精神科に多い疾患↓
☆うつ病:ストレスが原因です。喪失感、環境の変化、人間関係の影響などで発症します。症状は気分が強く落ち込み憂うつになる、やる気が起きない、不眠、食欲不振、疲れやすいなどです。休息をとり、薬物療法、精神療法、運動療法などで改善を促します。治療には時間がかかり、再発予防期を含めると1年から2年間を要します。

☆双極性障害:直近のストレスが原因であるのではないかと考えられています。うつ状態と躁状態を繰り返す疾患です。うつ状態では、心と体がエネルギー切れの状態となり、抑うつ状態や不眠等になります。一方躁状態では、性格が変わったように気分が高揚して、ハイテンションになります。多くの患者さんは、うつ状態で受診に至るため、躁状態が現れて初めて、双極性障害との診断がつく場合があります。薬物療法、心理・社会的療法を行なって症状寛解を目指します。

☆統合失調症:原因は脳の機能にあると考えられています。陽性症状(妄想、幻聴、思考障害)、陰性症状(感覚鈍麻、思考の貧困、意欲の欠如、社会的引きこもり)、認知機能障害(記憶力の低下、注意・集中力の低下、判断力の低下)が起こります。1日でも早く治療を開始した方が寛解までの時間が短く、症状も軽くて済みます。薬物療法と精神的リハビリテーションを行なって寛解を目指します。

1 観察・情報収集

観察ポイントは、生活背景、心理面、身体機能面、社会面全体を見ていくことが必要です。具体的には、今一番何が辛いのか、抑うつの程度、気分の日内変動、周囲の人との会話の様子、訴えの多さ、妄想の有無、睡眠状態、食欲、排泄状況、仕事や学業の有無、、学生の頃にどう過ごしてきたか、育成歴、家族や兄弟についての情報、精神科に受診した経験はあるか、嗜好品の有無など、服用している薬、副作用の有無、その人がどう生きてきて今どうしていきたいのかを確認します。また、全身状態の把握のためと服薬する場合は肝機能や腎機能に影響が出ないかを調べるために、血液検査を行うこととバイタルサインを測定することもあります。精神科であっても、身体的にも状況を確認する必要があります。

2.アセスメントをする

得られた情報をS情報、O情報に分類し、内容をまとめて医学的根拠を基に分析をしていきます。知識を元に分析し、憶測では書かないように気をつけましょう。

3.問題を明確化する

分析した内容から、どんな問題点が挙がるかについての仮説を立てます。

4.必要な看護を考える

問題点から、患者さんにとって今必要な援助は何かを考えて、プランニングします。

5.行なった看護に対する評価

看護を行なったら、それに対してどんな結果が得られたのかを明確にし、評価します。プランニングが適切であったか見極め、変更する必要があるようであれば、再考します。

④実際にアセスメントをしてみる

双極性障害の患者さんをモデルに、アセスメントをしていきます。普段は社会生活を送ることができている患者さんで、外来受診をしているということを想定しています。
例)
S:「最近元気なときと落ち込むときの差が激しいんです。元気なときは、本当に調子が良くなってしまって、色々買い物をしたり、友達にLINEギフトとかを奢りまくったりしてしまうんです。それで、うつっぽくなるとなんであのとき色々な物買っちゃったんだろうとか、すごく落ち込んじゃって。食事も摂れないくらいに落ち込みます。うつ状態になった時には、お金がないことに気がついて、もしかしたら友達が私の財布から盗んだのかなと思ってしまうこともあります。そんなことはないと思いたいんですけど。なんでこんな風になっちゃうのかな・・・、」

O:話が止まらない様子。1週間周期くらいで、躁状態とうつ状態を繰り返している。躁状態の時は買い物に依存する、金銭感覚が鈍る。うつ状態のときは、食欲不振、過食はない。抑うつ傾向。職業はアパレル関係、週5勤務で勤務時間は9時から22時の間で8時間。残業は稀にあり。睡眠は睡眠導入剤服薬にて8時間ほど、中途覚醒なし。学生の頃はいじめなどなく、平凡に過ごした。同胞あり、弟1人。家族関係は良好で頻繁に連絡をとっている。都内にて1人暮らし。希死念慮なし。妄想症状あり。服薬している薬は・・・。副作用なし。既往歴なし。
食事を摂れないとがあることや、服薬しているため、全身状態の観察の目的で血液検査を実施。結果・・・

A:自分に起きている症状に対して不安を抱いていると考えられる。自身が金銭をたくさん使ってしまうことを制御できない様子であるため、第三者の協力が必要となると考える。食事に関しては、うつ状態の時の食事摂取状況を観察し、栄養面の把握を行う。

P:薬物療法にて、作用と副作用の観察をする。金銭管理については一緒に行う、家族に協力を依頼する必要がある。症状が強くて、日常生活に影響が出てしまうようであれば、入院も視野に入れる。

まとめ

いかがでしたでしょうか。看護を考える上でアセスメントはとても重要で、患者さんに関わる第一歩です。特に精神科では、見えない部分が多いので、理解を深めるのに大変なことも多いかと思います。この記事を読むことによってアセスメントの方法を知って、患者さんにより良い看護を提供できる一助になったら嬉しく思います。

こんな記事/動画も見られています

 

こちらの本が読まれています

意見をメールする 更新情報を受け取る

バックナンバー

 

【看護師お役立ちコラム】への応募・問合わせ

名前【必須】
電話番号
Eメール【必須】
Eメール(確認)【必須】
問合わせ・応募内容
【必須】

 

Facebook Twitter email
看護師の転職・求人。病院を動画で確認!ミスマッチを防ぎます Pagetop