消化器・泌尿器科の混合病棟で3年間看護師として勤めていました。患者さんの中には、ストーマ(人工肛門)を造設する患者さんがいます。ストーマを造設することによって、患者さんやその家族は日常生活の再編成を余儀なくされることとなります。短い入院期間の中できめ細やかなアセスメントを行い支援を行う必要があります。私が病棟で働いてきた中で重要だと思うアセスメントのポイントについてお伝えできればと思います。
・ストーマを造設する患者さんの情報・背景を知る
交通事故や緊急手術の場合を除いて、ストーマ造設のインフォームド・コンセントやオリエンテーションは外来で行われていることが多いです。ストーマを造設することにより患者さんのボディー・イメージが変容するので、医師記録や外来看護師の記録を見ながら、患者さんの手術に関する理解度やストーマ造設に対しての受け入れ状況や不安の程度を確認し、アセスメントをしていきます。
消化器の手術では一時ストーマなのか、永久ストーマなのか。一時ストーマを造設する可能性が「高い」と説明を受けているかどうか。状況によっては一時ストーマを造設する可能性があるので、記録を見た上で入院してきた患者さんに改めてどのように認識しているかを入院時に確認することが重要です。
永久ストーマの場合は身体障害者手帳の申請が可能ですから、その準備ができているかも確認します。(後から申請することも可能ですが、ストーマ助成金を貰うことのできる時期が遅れてしまうからです)
また、高齢の患者さんがストーマ造設術を受けることも多くなっていますので、患者さん以外にも家族の理解度はどうか、サポートは得られそうかをカルテや入院時のオリエンテーションで情報収集し、アセスメントをしていきます。訪問看護を導入する場合もあるので、その場合には介護保険の申請の準備もしていく必要があります。
ストーマを作る際には事前に位置を決めるためのストーマ・サイトマーキングを行います。その際にベルトの位置が何処にくるのか、どんな服を着ることが多いのか確認しておくと、位置決めの際の参考になりますし普段どのように過ごしているか、社会的側面の情報を収集しアセスメントする際の参考にすることができます。
・周術期合併症を予防しながらセルフケアの獲得を目指す
ストーマの手技獲得も重要ですが、同時に周術期合併症の予防も重要となってきます。特に術後の疼痛が強い場合は離床が進まず周術期合併症のリスクも高くなるため、疼痛コントロールを行いながら早期離床を目指していきます。
術後合併症の出現時期を踏まえながら、周術期の経過から逸脱していないかをアセスメントしていきます。離床への支援に関しては、理学療法士が介入している場合にはリハビリ記録も確認しておくことが望ましいです。手術時間に応じて周術期の合併症のリスクも変わってくるので、術中記録を確認した上で患者さんに起こりやすい合併症は何かを基礎疾患や身体情報を踏まえながらアセスメントし、離床に向けて支援を行います。
患者さんの身体的状態を見ながらストーマの交換・手技獲得を行っていきます。初回のストーマ交換では、患者さんに最初から全部の工程を一緒に行ってもらうことは難しいので、看護師が交換する所を見学するところから始めて徐々にセルフケアができるように支援をしていきます。
患者さんの家族が支援する場合は事前に日程を調整し、家族がいる時に交換できるようにしていきます。装具交換の初回は疼痛や疲労感も強いためベッドで臥床のまま行うことが多いですが、経過と共に落ち着いてくるので徐々に座ってもらったり処置室や浴室で練習するようにしていきます。この時に患者さんの反応を見ながら声をかけて進めていきます。手技だけでなくストーマケア用品の使い方や管理方法、面板の見方や破棄の方法も含めて指導し、理解度を確認していきます。
ストーマの交換の手技獲得だけでなく、パウチ内の便や尿の破棄方法も練習していく必要がありますので適宜声をかけていきます。ストーマ装具が漏れてしまうことは患者さんがストーマを管理していく上での不安につながるので、消化管のストーマであればガス抜きや便破棄のタイミングを一緒に確認していきます。泌尿器のストーマの場合はトイレに破棄する方法とタイミング、採尿バッグに接続する方法、採尿バッグにある程度集めてから破棄する方法があるため、どのように管理するかを確認しながら支援を行います。患者さんによってはレッグバッグを使用することもあるので、レッグバッグを使用する場合には装着方法を一緒に確認していきます。
高齢の患者さんの場合はどこまでを自己でやってもらうか検討しながら関わっていく必要があります。患者さんの反応を見ながらどのように管理していくかを日々検討していきます。家族が主体となってストーマの管理を行う予定だったとしても、患者さんができる場合がありますし、患者さん一人では難しく家族にお願いする場合や訪問看護を検討する場合もあります。家族が行う場合には、その家族の年齢や社会的状況もアセスメントする必要があります。実際に指導を行った際の患者さんや家族の反応を見ながら評価をし、次回のケアに向けて何が必要かの計画を立案していきます。一人の看護師が毎日受け持つとは限らないので、どこまでを指導したか、次回は何を見てほしいかを記録に残しておくことが望ましいと思います。
ストーマのセルフケアの支援をしながら、自宅での環境について情報収集をしていきます。多くの人はストーマを入浴時に交換することが多いので、お風呂場の環境を聞いたり、どんな風に交換するかイメージしてもらうために浴室で交換の練習をすることもあります。泌尿器のストーマの場合には寝るときに尿が流れるようにしないといけないので、敷き布団の場合は高さを作って貰う必要があったり、ベッドの場合にはS字フックなどバッグを掛けられるものを用意してもらうこともあります。
患者さんの中にはストーマを造設したことで大きなショックを受ける人もいます。セルフケアを支援しているとどうしても出来ていない所に目が行きがちですが、出来ている部分に着目しながら声をかけるようにしています。
・退院~退院後の支援
患者さんや家族がストーマ管理で困った時は、相談できるように外来へと支援につなげていく必要があります。どんな時に相談したらよいのかをセルフケアの指導の際や退院指導の際に確認しておきます。また、退院時点で外来でも継続して見ていく必要がある場合はそのことについて外来に情報共有を行います。
一時ストーマで回腸にストーマを作った場合には脱水や食事の形態の工夫が必要になるので食事管理についても患者や家族に対して指導を行う必要がありますので、必要に応じて栄養指導を行ったり栄養士に依頼をすることがあります。
私が働いていた病院では、退院後に皮膚排泄外来の予約を取得することが必須となっていましたので、外来でも継続してストーマケアに対するフォローを行うことが可能となっていました。そういった外来がない場合は他施設のストーマ外来を受診するよう説明します。また、フォローを終了してもトラブルや相談したいことが出来た際は利用できることを伝えておきます。ストーマの管理ができなくなって自宅から出られなくなった、ストーマが漏れるので外出できなくなってしまった…ということがないように何が必要なのかをアセスメントし、支援を行うことが病棟看護師として必要なのではないかと思います。
まとめ
ストーマを造設する患者さんのアセスメントのポイントとしては、
①患者さんの情報・背景を得ながら②周術期合併症を予防しつつ、セルフケアの獲得を目指し③退院後の支援に向けてつなげていく
ことが挙げられると考えます。患者さんはストーマ造設の為に生活を再編成するため、病棟看護師として担う役割が多く大変ですが、患者さんの持つ力に気付かされることも多々あります。日々変化する患者さんの状態を見ながら何が必要かをアセスメントし、支援につなげられるように計画を立案し評価していくことが重要だと考えます
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