抗癌剤投与のため入院している患者さんから安心・信頼してもらえる対応のコツ

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#636 2019/04/02UP
抗癌剤投与のため入院している患者さんから安心・信頼してもらえる対応のコツ
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私は総合病院の産婦人科で長く勤務しています。その中で、抗がん剤治療のために入院している患者さんと関わる機会が多くあります。
入職したころは抗癌剤投与のために入院している患者さんとの関わりが得意ではありませんでした。そんな私が、今ではすすんで抗がん剤を使用する患者さんを受け持つようになりました。そのコツについて今日はお話ししたいと思います。
 

抗癌剤治療の看護が苦手だったころの私


3年目までの私は抗がん剤治療の看護が得意ではありませんでした。しかし、仕事なので当たり障りのない看護を行っていたと思います。

観察項目はしっかり観察していたつもりですし、点滴管理も得意だったので、抗がん剤のスケジュールもきっちり時間通りにこなすことができていました。(当時は輸液ポンプを使用しておらず、手動での管理だったためです。)ただ、日々の忙しい業務に追われて、看護がルーチン化していました。

自分の看護を見直すためのきっかけとなった出来事

ある時をきっかけに、私は自分の看護について考えさせられた出来事がありました。

その患者様は、60歳代の女性の患者さんで、Aさんとします。

Aさんは妹さんと二人暮らしで、婦人科系のがんを患い、抗がん剤治療のために入院してこられました。初めての入院時から漠然とした不安の訴えが強く、ナースコールも1日に何度も押してくる患者さんでした。毎日同じ不安を繰り返し話してくれるのですが、私はどう返答していいのかわからないため、早く話を切り上げる理由を考えることもしばしばありました。

その後、Aさんは在宅で数日間を過ごし亡くなられました。数日後、Aさんの妹さんが訪ねてきて、「話を聞いてくれてありがとう。」と言って帰られました。

私はその「ありがとう」の言葉にとても罪悪感を感じてしまいました。

それは、適当に相槌を打っていただけで、看護らしいことは何もせず、早く話を切り上げることを考えていたからです。


この出来事があってから、ありがとうと言われたときに罪悪感を感じない看護をしたいと思うようになりました。

私が抗がん剤投与患者様の看護が苦手だと思った理由

そこで私は、まずは自分の心と向き合ってみることにしました。自分のウイークポイントを知らないことには改善策は立てることができないと考えたからです。
私自身が苦手だと感じた理由は、

  1. 治療に対する不安から、同じ訴えを繰り返す方が多い。
  2. 感情の起伏が激しくなる患者さんもいる。
  3. 提供する看護技術をじっと見ていたり、点滴の抗がん剤が1滴ずつ落ちるのをじっと眺めていたりして、なんだか見張られているような気分になる


の3点でした。①と②に関しては、忙しい業務の中で、1人1人の患者さんが満足するだけの時間を作ることは不可能です。

しかし、患者さんの満足感を上げる話の聞き方をすることが何よりも大切なのではないかと考えました。③に関しては、私自身の看護技術の自信のなさが表れだと痛感しました。これは、看護技術、疾患、抗がん剤の知識を増やすことで自信をつけていくしかありません。

抗がん剤投与中の患者さんの問題点

看護を考える上では問題点も把握しておく必要があるので、患者さんの心理や問題点についても書きたいと思います。

  1. 長い期間続く治療であり、先が見えない不安やつらさがある
  2. 副作用が辛い治療であり、この先自分の体がどうなるかわからない不安がある
  3. 副作用など、辛い治療を長い間受けていると、身体だけでなく精神的にも疲れてしまい、体と心のバランスがとれなくなる
  4. 自分が癌であるという現実を受け止めきれていない段階で辛い治療が始まっている
  5. 入院や自宅療養中、自分の役割を遂行することができないことに対するもどかしさや家族に対する申し訳なさ
  6. 家族に心配をかけたくないという思いやりの心から、本当の思いを表出することができず、心が疲労していく。

などがあります。

患者さんの満足感を上げるコミュニケーションのコツ

ゆっくり話を聞く時間を確保することが困難であっても、毎日の検温やケアなどで、1日に何度も患者さんのもとに足を運んでいます。患者さんの満足感を上げるコミュニケーションをとることで、少しずつしか時間が取れない検温やケアの時間であっても、それらを有効に組み合わせていくことができれば、たくさんの情報を収集することができます。そうすることで、患者さんの満足感を上げることができ、寄り添った看護につなげることができるのではないとか考えています。

そのコツとは

  1. 患者さん自身、自分が何を望み、どのように生活したいのかを把握できていないことも多々あります。看護師と会話をしていく中で患者様の大切にしたいことや守りたい生活について患者さん自信で見つけれるように「○○がやりたいんですね。」などの声掛けをしていく。
  2. 突然の告知に驚き、「予後はどうなるのか」「将来設計が立てられない」といった不安を抱えています。先の見通しを立てることができるよう十分な説明を行うことが必要です。

    例えば、治療を続けながらどのように過ごすことができるのか、治療によって患者さんの生活がどう変わっていくか、治療が日常生活にどのような影響を与えるのか

    などです。
     
  3. 信頼されるためには、患者さんの気持ちが分かる医療者であることが求められます。「辛いですね。」「よく頑張っておられると思います」など励ましの言葉をいくら並べても、患者様は私たちの言動から嘘を簡単に見破ってしまいます。患者様の望む生活を送るうえで必要な支援は何なのかを、一緒に考えていく姿勢が大切だと思います。
  4. 患者様の選択をせかしたくなる時もありますが、医療者のペースにあわせて誘導してしまうのではなく、患者様のペースで一緒に考え、問題を整理することで患者さんの自己決定を促していくことが、満足感を上げる重要なコツだと思います。

まとめ

辛い治療を続けていくためには、共に歩む医療者が信頼できる存在である必要があります。医師が疾病を治療するプロならば、私達看護師は患者さん身体面・精神面・社会面を支えていくプロだと思います。
誰でも人に聴いてもらうことで気持ちが少し楽になると思います。患者さんの長い人生の中で、抗がん剤治療がどのような意味があるのか、患者様がどのようにがんと共存していくのかを看護師が一緒に考えていく姿勢が最も重要だと思います。

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