介護の現場業務における認知症の方への対応のコツ

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#1135 2020/07/13UP
介護の現場業務における認知症の方への対応のコツ
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2000年から始まった介護保険制度も今年で20年目を迎え、介護保険サービスは多忙をきわめています。介護保険サービスは基本的に要介護認定を受けた方が対象となり、その中には多くの認知症を患った利用者がいます。認知症対応は一種パターン化することがひとつのコツだと思いますので、それを紹介したいと思います。

認知症対応のコツ

・私が認知症対応をする経緯

私は長年ショートステイを担当しています。
ショートステイでは要支援から要介護5の方まで特定の条件を除き誰でも利用でき、日によってバラバラのお客様を対応しなければなりません。
時には要介護1・2程度の比較的軽度の方が1ユニット10人利用されることもあれば、要介護5で食事・排泄等すべてにわたって介助が必要な方が複数人利用されることもあります。
そのような状況の場合、毎日違った対応が必要となりケアの統一をはかることが困難となります。また利用者様個人としては、ユニット型のショートステイは1ユニット10人で共同生活をしていただく都合上、認知症状として徘徊行動や収集行動がある場合、荷物の混同・他居室への侵入が起きてしまい適切なサービスを提供することができなくなってしまいます。ですから、いかに効率的に相手がどのようなタイプなのかを瞬時に判断し、どの声かけが適切で、どういった提案が受け入れてもらえるのかを常に探らないといけません。私も仕事に勤めはじめの頃は認知症の方に接することが、何を考えているのかわからないとかどうして普通ではない行動をとるんだろうとかそういった点で恐怖を感じてしまい苦手としていました。しかし介護の現場業務を続けていくことと様々な研修を経て少しずつ認知症への理解が深まり今では苦手意識はなくなりました。
介護保険サービスに従事していると必ず認知症の方と接する機会があると思います。徘徊行動や盗み食いや服薬拒否など認知症といえども様々な周辺症状があり、一概に『認知症の人にはこうだ』という明確な正解はありません。しかしながら、それを踏まえてパターン化することがひとつのコツだと思いますので提案します。

①傾聴

落ち着かない認知症利用者がいる場合、まずは対面を避けて同じ目線に合わせ話を聞きましょう。徘徊している時などは距離を開けつつ体力的に疲れてきた様子をみせたら椅子にお連れして一緒に座る。相手が論理的ではないことやつじつまが合わないことを話してもとりあえずうなずき話に耳を傾ける。対面は面接のようになってしまいますし、上から話しかけるのは身長差で威圧感を与えます。また声かけで「何してるんですか」や「早く座ってください」などの相手を咎めたり急かしたりすることはNGです。

②共感的理解

傾聴していくうちに相手のストーリーを把握しましょう。徘徊している方は帰宅願望のため家に帰ろうとしているかもしれないですし、実はトイレを探しているが職員に伝えることができずに迷っているかもしれません。あるいは職員側が予想できない考えをもって行動していることもあり得ます。その内容を見極めて何が相手にとって効果的なのかを探ります。ただしこの時間は長ければ長いほどいいというものではなく、あまり相手のストーリーに共感しすぎるとヒートアップしてしまい、コントロールがきかなくなることもあります。

③提案

共感的理解をしていき落ち着いたところで次の行動に向けて提案が必要になります。具体的には帰宅願望のある方には、「今日はもう遅いですからこちらで休みましょう」や「よければ夕食をご用意しましたので召し上がってください」など相手を否定せずにこちらのしてもらいたい行動に誘導します。服薬拒否の場合も拒否する理由は人によりますがその内容をできるだけ否定しない形で提案します。

④提案を受け入れてもらえない時

傾聴→共感的理解→提案の順にうまく進んだとしてもそれを受け入れるかどうかは、本人次第であり従事している身の実感としては、長い時間をかけて信頼関係が築けていない場合、一度で受け入れてもらえないことは多いです。そういう時は次のようなルートを実行しています。
a.主介護者やその人に近い人の名前を出しながら提案する
およそ多くの高齢者は、配偶者や息子様・娘様を頼りとしています。あるいは認知症軽度であればケアマネージャーや民生委員など生活支援をいてくれている方の名前が効果的です。例えば服薬拒否の方なら「○○さんからしっかり薬を飲むように頼まれているんですよ」のような声かけがよいかと思います。ここでポイントなのは息子様や娘様、その他の近しい方を代名詞で呼ばず名前で呼ぶことです。それによって職員に対して安心感を抱いてくれることもあります。ただし認知症状による不安症から疑り深くなっていたり用心深くなっていたりする方には「息子(娘)がそんなこと言うはずない」などと納得していただけないこともあります。
b.役職や権力をもつ人の名前を出しながら提案する
およそ多くの高齢者は認知症も含めて持病がありなにかしらの医療機関にかかっています。そのため服薬拒否の場合であれば、実際かかっている病院やその主治医の名前を出しながら「○○病院の○○先生から処方されていて飲むように言われています」のような声かけがよいかと思います。また介護施設であることを理解されている方であれば、「施設長の○○から薬を内服するように言われています」などの声かけも可能です。
c.決まりとしてあることを伝える
日本人は比較的『こう決まっている・みんなそうしている』といった言葉に弱いとされています。そのため、帰宅願望があり何度も起きてしまう利用者に対して「みんなここで休んでいますから安心して○○さんも休んで大丈夫ですよ」など他利用者がそうしている姿をみせて納得していただくこともできます。入浴拒否の場合も同様で、「施設ではみんな入浴することになっているんですよ」など他利用者がはいっているところを見せるのも効果的です。

⑤距離を置く

以上のことを遂行した上でそれでも拒否がある場合は距離を置き、時間が経った後に再度傾聴から繰り返す必要があります。実はこの部分が一番むずかしく、経験を積めば積むほど出来なくなっていきます。それは『早く次の仕事をしたい』『なんでこっちの言ったとおりにやってくれないんだ』と職員本位の感情が芽生えてしまうからです。こういった感情はストレスの原因にもなりますし、それによって他利用者のサービスにも影響してしまいます。そのためできるだけ感情は持ち出さないようにある意味で機械的に処理することが望ましいです。

⑥パターン化する

機械的に処理とは、利用者の行動をパターンにあてはめて、(この時間にAさんはこういう行動に出る→その行動に対して職員はこういう行動に出る→それでも止まらなければ次はこういうアプローチをする)とあらかじめ決めておくことを指します。処理時間もおおよそで考慮しておけば、予測可能となります。いかにパターン化出来るかが鍵となります。

⑦パターン化した行動を修正する

パターン化できた内容は常に修正・アップデートする必要があります。なぜなら、認知症対応は対人であり、利用者は常に身体的にも精神的にも変化するからです。例えば声かけがただの提案で済んでいた方でも認知機能の低下によりいわゆる『認知が進んだ』状態になれば、声かけや指示が通らず、他の提案方法や工夫をしなければなりません。

私は以上のようなパターン化をすることで余計なストレスを抱えずに仕事に向き合っています。介護は(介護だけに限ったはなしではないかもしれませんが)職場の人間関係や労働賃金の安さなど実際の現場業務外の部分でもストレスにさらされてしまうことがあります。その上に現場業務の中でもストレスを抱えてしまっていては、身が持たないと思います。そのため出来るだけ簡単に、よりスマートに認知症対応をするための提案をさせていただきました。

まとめ

いかがだったでしょうか。
認知症対応は上記の内容で言えば、⑤の距離を置くことが本当に難しいです。職員側がヒートアップしてしまうと相手の行動を抑制したりこちらの考えを押しつけてしまうことになりがちです。まずは落ち着いて一呼吸をおいてから対応にあたるようにしましょう。認知症対応のコツはパターン化することにあると思っているのですが、それも結局のところ、落ち着いて対応できるようにするための方法ということです。

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