人間の3大欲求の一つと言われる食事は日常生活を送る中でも生きるよろこびの1つといっても過言ではありません。しかし、麻痺やADLの低下によって自力で食事をすることが出来ない患者さんも多くいます。そのため、安全にそして安楽に食事介助ができるようにするコツや流れをお伝えしたいと思います。
食事介助を行う目的
・必要な栄養や水分を摂取する
・食事行動の自立にむけて残存機能の維持または拡大し、意欲をもたせる
・安全かつ安楽に食事を摂取することができる
1 食事介助を行うことを患者さんに説明し同意を得る
→しっかりと覚醒を促し、誤嚥の予防を行う
2 患者さんの本人確認を行う
→安全のために名前を名乗れる場合はフルネームで名前を名乗ってもらう。そして、食札と本人の食事で本当にあっているかの確認を行います。また、コツとしては必要に応じて食事や水分にトロミをつけます。
3 食事環境を整える
→尿器やポータブルトイレを片付け、食事に適した環境を整える。ここで注意したいところは汚染したものは周囲から遠ざける
4 口腔ケアを行う
→口腔ケアを行うことによって唾液の分泌によって誤嚥の予防に努める
5 必要に応じて義歯を装着する
6 患者さんの手指衛生をおこなう
7 患者さんの食事する体制を整える
→起立性低血圧を起こしやすい患者は食事を行う30分ほど前よりベッドのぎゃっちアップを行います。また、ギャッチアップを行う際には足元を挙げてから上体をギャッチアップしていきます。足元からギャッチアップすることによって上体をギャッチアップした際に下にずり落ちてしまいまい食事を取る体制が不自然となり患者さんに苦痛を与えてしまいます。そのため足元から上体の順番でギャッチアップするように心がけましょう。
8(端座位の食事の場合)
→顎を引いて食事をしてもらう。そうすることで気道の入り口が狭くなるため誤嚥を予防することができる
9 足底は床にしっかりつくようにテーブルとベッドの高さを合わせる。そうすることで、体幹の安定に繋がり、姿勢を整えることができる。
10(ベッド上の場合)
→顎を引いて食事を行う。そうすることで、気道閉塞を防ぎ誤嚥の防止につながる。
11 患者さんにメニューを説明する
→患者さんに食事を見せたりにおいを確認してもらいながら食事内容を伝えることで患者さんの食欲増進につながる
12 看護師は椅子に座って患者さんと同じ目線に合わせる。立って介助することによって患者さんが上を向いてしまい、食べものが気道に入り誤嚥を起こしやすくなる。
13 看護師が右手で介助する場合は患者さんから見て右側に座る
→解剖学的に気管支は右気管支の方が角度が緩く太いため誤嚥しにくいため、言語聴覚士の嚥下機能訓練は右から介助をすることがある
14 スプーンに一口量をすくい取り、口に入れる
→一口量が多すぎると誤嚥や窒息の原因となるため、適切な一口量を調整する。また、摂食嚥下障害がある場合は、誤嚥予防のため、とろみ水やゼリーなどから摂食してもらう。
15 口をしっかり閉じてもらい、スプーンをゆっくり引き抜く
16 嚥下を促し、患者さんの嚥下反射の観察を行う
→患者さんが嚥下するまでは、話しかけないようにして誤嚥の予防をする。また、咀嚼の挙上を観察する。
17 口腔内を確認せる
→食べ物が口腔内に残っていないか確認し、残っている場合にはもう一度嚥下を促す。また、口腔内に食事が残っていないか確認に食事をすすめることによって誤嚥の予防となる。
18 患者さんのペースに合わせ、主食と副菜のバランスよく摂取できるように介助をすすめる。誤嚥の兆候がないか観察する。また、むせた場合は食事を中断し咳を促すとともに、吸引を行い呼吸状態を観察する。そして、窒息が疑われた場合はハイムリッヒ方を施行する。
19 食事が終了したら下膳する
20 口腔ケアを行う。口腔内残渣による誤嚥を防止する。
21 食後30分から1時間は上半身を起こしたままの状態で休憩を行う。消化管への逆流や誤嚥を防ぐ。また、消化管への逆流は肺炎を起こす可能性があります。
自助食器はスプーンを入れる方向が決まっており、患者が食べやすい健常側や自助食器の向きを確認しておく必要がある
以上の一連の流れが食事介助を行う上で安全・安楽に行える食事介助技術となります。
また、食事介助を行う上での正しい食事介助技術と誤った食事介助技術をお伝えしたいと思います。
①患者の状態にかかわらず、患者の希望する食事形態で提供する
患者の状態にかかわらず、患者の希望する食事形態で提供することによって、誤嚥性肺炎を起こしたり窒息してしまう可能性があります。しかし、全てミキサーにかけ、ドロドロにしてしまうと患者さんは食欲が低下し、食事摂取量が落ちてしまう可能性があります。そのため、常食が摂取することができなくてもソフト色にするなど、目で食事を楽しめるような工夫が必要になってきます。
②適切な姿勢を保持するには、体位変換する際からずれ防止に配慮した動きが必要である
上記で説明しているように食事を行っているときに体幹がずれてしまえば、食事している間苦痛を感じてしまい食事に集中することができません。そのため、正しく体制を整えて食事をしてもらうように援助を行いましょう。
③患者の状態が許せば、ベッド上よりも車椅子での食事介助が望ましい
介護用語で寝食分離という言葉があるように、食事を行う場所と寝る場所を分けることによって生活にメリハリがつきます。これにより、昼夜逆転を防いだり認知機能の低下を予防することにつながるため、移動が出来る患者さんはなるべくベッド上よりも車椅子、あるいはリビングなどに移動し食事をすることをおすすめします。
④指示された食事形態が患者の現状に合っていない場合は、他職種と連携し対応する
多職種と連携することで、患者さんに対して色んな角度からアプローチすることができます。正しい食事形態を選択し患者さんが安全・安楽に食事できるように支援していきましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
食事介助は看護師また介護士にとっても介助に携わることの多い技術となります。わたしも最初の頃は知識では分かっていても患者さんがむせてしまうことがあって…とても大変でした。正しい技術や知識を身につけることによって、患者さんのADLの維持・促進を促して安全・安楽に食事介助できるようにお互いに頑張っていきましょうね。
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