看護師のみなさんは、バイタルや血液検査データの正常値を一生懸命覚えて身に付けてる方が多くいます。頼もしい限りなのですが、人間の体はテキストのようにはいきません。正常なバイタルであってもその患者にとってはショック状態であったり緊急的介入が必要な状況も考えれるのです。今回は臨床で起こった症例を出しながらアセスメントのコツを見ていただければと思います。
今回は実例を交えながらアセスメントのコツを記載していきたいと思います。看護師の皆さんや今から看護師になる方はアセスメントについてどのように考えていますか?血液検査データや正常なバイタルの数値を一生懸命覚えている方もいらっしゃるのではないかと思います。もちろん一定の正常値を覚えて臨床に活かすことはとても重要なことですし、覚えていることでのデメリットはありません。
しかし、その数値が逸脱したときに、それが本当に以上なのかな?っという疑問は常に持つようにすることが大切です。そもそも人の体は何か異常が生じた時に生命を守ろうとする反応が出ます。その反応は時には異常な数値であったり、正常な数値であったりすることがあります。緊急時に覚えている正常値が必ずしも対象の患者にマッチングしているわけではないという点に注意が必要です。医療界において経験がものを言う。っとよくお聞きになるのではないでしょうか?まさに今回お伝えするコアな部分になります。臨床では自分が想像していなかったような事例がたくさんあります。一部分のわかりやすい症例を2例あげてみました。
異常と正常について心臓の動きを簡単な例にして出したいと思います。患者さんのバイタルを測定するときに、第一印象から無意識に見ていると思います。これは顔が青白かったり、汗をかいていたりなど具合が悪そうかどうかを見ていることになります。次に患者さんに触れますよね。その時に、触感で患者さんの状態を見ることになります。抹消は冷たくないかな?皮膚は湿ってないかな?脈拍は早くないかな?遅くないかな?などです。それから、その状況が異常か正常なのかを血圧や熱を測定して数値をはめ込んで報告するという流れを看護師さんは行なっていると思います。今回はその第一印象からバイタルを測定するまでの間で、脈が速い、遅いを例にとって説明していきます。
脈拍が速い、つまり頻脈ですね。
その定義は100回/分となっています。臨床所見としては150回/分の場合で心臓に原因があることが多いと言われています。患者さんの脈拍を測定するときに、速ければどの程度の脈拍を拍動しているのかを観察します。ただ脈が速いだけで動悸を訴えているだけなら、臨床的には安定している頻脈として経過観察を行います。脈が速いから医師に報告ではなく、その背景を読み取ることが重要です。脈が速ければ他の所見はどうですか?冷や汗が出ている。胸痛を訴えている。血圧が低い、SpO2が92%と低い状態などであれば不安定な頻脈になります。
では実例を見ていきましょう。
60歳後半の男性医師のA氏、朝からめまい、動悸、息切れがすると言うことで来院されました。第一所見にて抹消冷汗、呼吸促迫、チアノーゼ、呼吸苦が見られていました。切迫した状態と判断し応援を要請後バイタル聴取。血圧は80/40 mmHg。SpO2:92%(ルームエアー)。聴診器にて胸部確認。全体的に湿性ラ音が聴取。12誘導心電図上はST変化なく上室性頻拍が疑われました。ポータブルレントゲンにて胸部写真を確認。心拡大、肺鬱血が認められました。モニターを装着しHR160回/分。酸素マスク6L投与にSpO2:96%まで改善。点滴ルートを確保し採血をオーダー。モニター付き除細動器上ではP波が確認できず不安定な頻脈として治療を開始しようとしました。一般的には心臓が脈拍を多く打っておりP波も確認できない。そのため発作性上室性頻拍と判断。またバイタル上もショックバイタル状態なので一早い、同期カルディオバージョンという電気刺激の治療がアルゴリズム上では行われます。みなさんはこの症例をどのように捉えましたか?切迫している状況だと全体像が見えずに、原因が心臓にあるという視点にスライドし、間違った治療を選択することになります。この症例の原因ですが、この後の迅速採血結果に出ていました。CRP10 WBS10000という結果が出ました。肺炎ですね。熱により頻拍となり呼吸状態が悪化。熱による発汗で体液も減少しており、血圧も低下。もちろん見落としていた熱も39度以上出ていました。相手が医師ということで早期に治療しなければという焦りもあったのだとは思います。
バイタルの正常値だけを覚えていたなら160回の脈拍は異常数値ですし、SpO2もルームで92%も問題があります。心電図上も脈拍が早くP波が確認できずPSVTと考え治療として同期カルディオバージョンを検討となるのは当然だと思います。もし患者全体像を見ずにバイタルの数値やアルゴリズムにとらわれていると間違った治療に移行します。
次は徐脈についてです。徐脈とは60回以下と定義されています。こちらも頻脈同様、同期のみの場合は経過観察ですが、それ以外の目眩、末梢冷汗、チアノーゼ、胸痛などがあれば症候性徐脈(不安定な徐脈)と判断します。徐脈の場合は不安定という言い方はしませんので、何か異常がある場合は症候性という表現を行います。30歳男性のY氏。既往にアルコール中毒があり、今回も酩酊状態で救急搬送されました。病院到着前より多量の嘔吐が見られており脈拍は120回/分。SpO2は100%(ルーム)血圧も92/60mmHgでした。
病院到着後に吐血が見られ、救急外来処置室に移送しました。呼びかけにも反応は薄く、モニター上ではサイナス波形が映し出され、12誘導心電図も問題は見られていませんでした。胸部レントゲンでも明らかな異常は見られず、肺音もクリアでした。しばらくすると2回目の吐血が見られました。脈拍は60回/分に低下しました。
さて皆さんはこの症例をどのようにとらえるでしょうか?正常なバイタルからすると、最初は頻脈でしたが2回目以降より脈拍は正常バイタル範囲に戻りました。またSpO2も100%(ルーム)で問題はありませんし、血圧も92/60mmHgで問題ありませんよね。実はここが落とし穴なんです。この患者さんは吐血により体の体液が著しく不足している状態なんです。それを補おうとして心拍出量が上がっていただけなんです。そのため血圧も保たれていたことがわかりますし、酸素かにおいても過剰な呼吸により100%となっている状態なんです。2回目の吐血で循環状態が破綻し血液量減少に伴い心拍出量も低下し60回となったのです。
これはショックバイタルなんです。このような状態を相対的徐脈と言います。2個目の症例においても正常値だけを覚えておくと気がつかない点が多くあると思います。アセスメントとは患者の全体像を捉え、その患者の体に何が起こっているのかを冷静に分析することが重要なのです。医療は経験が重視されるというのもこの部分が大切だからだと思います。
みなさんも数字ばかりを覚えるのではなく、患者さんが今ある状況を色々な視点から見分けていくことが重要ですよ。が効くかどうか確認しておくとスムーズに休みたいとき休めると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?自分が持っている知識を過信するのではなく何かがあるかもしれないという視点を持つことが患者さんの安全を守ることにつながることが理解できたのではないでしょうか?アセスメントのコツとしては正常な数値にとらわれるのではなく、目の前で苦しんでいる患者さんがどのような状態なのかを分析し評価することが大切です。
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