透析患者さんの食事指導ってどうすればいいの?看護師のアセスメントに必要なコツ【3つ】

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#1520 2021/07/27UP
透析患者さんの食事指導ってどうすればいいの?看護師のアセスメントに必要なコツ【3つ】
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看護師なら誰しもが、患者さんへの対応に悩んだ経験があるかと思います。患者さんによって異なるニーズを的確にとらえるのは、至難の業ですよね。今回は、透析患者さんの食事指導の際に必要なアセスメントのコツを【3つ】にまとめました。これを押さえることで、アセスメントがスムーズにでき、信頼関係の構築、QOL向上につながることでしょう。事例を紹介したうえで、アセスメントのコツを1つずつ解説していきますね。

【事例】

70代男性の外来透析患者Aさん。妻と息子夫婦、その孫の5人家族。ADLは自立しています。
透析導入1年目、2日で体重が4㎏を越えることが頻回にあります。透析中に血圧下降し、透析早期終了、もしくは透析時間延長することが度々ありました。
腎不全の病態や透析をしている理由、心不全の危険性、食事制限の重要性など、理解度が低いです。
週に2回デイサービスに通い、昼食とお茶5杯を摂取しています。普段の食事は、孫が作っています。
医師の指示で、まず看護師が食事指導をすることになりました。必要に応じて、管理栄養士から栄養指導を行います。

【事例に対するアセスメント・対応】

まず腎不全の病態、透析をする理由、食事・水分制限の重要性など、イラスト付きの資料を用いながら、すこしずつ段階的に説明していきました。
さらに、情報収集を進めていくうちに、体重増加の原因が明らかになったので、患者さんと一緒に改善策を考えていきました。

主な要因と対応は、次の3つです。

①飲水量を量っていない点。

Aさんは水分制限の必要性は理解していたものの、飲水量を量っていませんでした。
透析患者さんの一般的な水分摂取量は1日あたり500~600?。
薬を内服する際や、うがいをする際の水分摂取も含まれます。気付かないうちに、過剰に水分摂取をしていた可能性が考えられました。
1日の飲水量を500?のペットボトル1本におさえるよう説明し、実践してもらいました。

②普段の食事で汁物が1日2回出る点。

心不全の危険性を説明した上で、汁物を1日1回に減らす、もしくは具だけ食べるよう勧めました。
作ってくれる家族に申し訳ない、とAさんは訴えましたが、塩分・水分管理の重要性を家族にも説明するよう促し、納得されました。

③週に数回通うデイサービスで5回ほどお茶が提供される点。

Aさんは、出されたものは断れない、残せないと訴えていました。
水分制限の必要性と、お茶の回数を減らす旨を、病院の連携室からデイサービスに連絡してもらいました。

以上の対応をしたところ、数日間は体重増加が2㎏以下に減りました。
しかし、1週間ほどして再び体重増加は3~4㎏に。理由は、汁物を残すのは、食事にケチを付けるようで、家族に申し訳ないということでした。
再度、同様の説明をしましたが、改善されず、医師に報告し、管理栄養士に介入してもらうことになりました。
家族を交え、本人と一緒に説明を聞いてもらいました。
Aさんや家族の努力、連携室やデイサービスの協力、看護師や管理栄養士が連携した甲斐もあり、体重増加は2㎏前後で維持できるようになりました。
結果、問題なく透析を行えています。

【事例から学ぶアセスメントのコツ1つ目”個別性”】

アセスメントする際に、まず意識したいのが「個別性」です。個別性とは、個性、持ち味、キャラクターのこと。
患者さんによって、痛みや苦しみ、求めることは異なります。いち早く気付き、人それぞれに合わせた対応をしていく必要があります。
誰一人として同じ人間はいないので、一定で機械的な対応をしていては、患者さんに適した看護を提供できません。
事例では、Aさんの性格、家庭環境を知ったうえで、家族に協力してもらうのが重要でした。
差し出されたものを断れないAさんの思いに、まず共感することが大切です。その上で、病気への認識を再確認し、家族にも共有するよう伝えます。
Aさんの性格上、本人から家族には伝えにくいことが分かり、本人に了承を得て、管理栄養士に介入してもらいました。
自分だけの力で、同じ説明を繰りかえしたとしても、患者さんの自尊心を傷つけ、意欲を低下させてしまうかもしれません。
場合によっては、今回のように多職種との連携も必要になってきます。
実現可能な最善の対処法を、患者さんと一緒に見つけることが大切です。
個別性を意識することで、患者さん主体の看護アセスメントに繋がることがわかりました。

【事例から学ぶアセスメントのコツ2つ目”信頼関係”】

アセスメントを円滑に進めるには「信頼関係」が必要不可欠です。
信頼関係を構築することで、心を許せる存在になり、患者さんのニーズに気付きやすくなります。
心を許せる存在とは、家族や友人など大切な人に近いと思います。
注意すべきは、自分から何でも話してくれる人、なかなか心を開いてくれない人など、患者さんによってさまざまなタイプの人がいるということです。
同じ言葉や方法が、誰にでも通用するわけではないと念頭に置いておくことが大切です。
また、病室や診察室、在宅など、状況によっても患者さんとの関わり方は異なります。
入院してる患者さんであれば日々の生活が垣間見えますが、外来患者さんではそうはいきません。患者さんの訴えが全てと言えます。
いずれにしても、患者への興味・関心を持ち、受容的な態度で接することに変わりはありません。心を許せる存在に近づくことが最適です。
事例のAさんとは、透析室で週に3回は顔をあわせる、いわゆる顔なじみの関係でした。
透析中のベッドサイドで、目線を合わせながら、家庭の話から、趣味嗜好、好き嫌いの話まで、患者さんはさまざまな話をしてくれました。同時に、患者さんのライフスタイルの中で、自らがムリなく行える改善方法を探っていきました。
患者さんや家族のことを知ろうとせず、いきなり塩分・水分制限の必要性を説明していたら、結果は変わっていたと思います。
何気ない気配りや、興味・関心をもつことは、患者さんとの心の距離を縮めて、良好な信頼関係を作ることに繋がります。
まちがいなく、アセスメントする上で信頼関係をつくることは重要だと再認識しました。

【事例から学ぶアセスメントのコツ3つ目”コミュニケーション”】

アセスメントする上で欠かせないポイントの最後は「コミュニケーション」です。コミュニケーションをとらなければ、主観的情報を知ることはできません。
情報には、主観的情報と客観的情報の2種類があります。
主観的情報は、患者さん自身の痛み、悩みなどの訴えです。客観的情報は、患者さんのバイタルサインや検査データ、表情、皮膚や排液の色・性状など、客観的にみて分かる情報です。
事例のAさんは、著しい体重増加と血圧下降という客観的情報がありました。要因を探るためには、本人や家族に生活状況を聞き、主観的情報を探る必要があります。
水分摂取が過剰である自覚は本人にはありませんでしたが、生活習慣を聞いていくと、何気ない行動に答えはありました。
汁物をとってしまうと、つい喉が渇き、自分が思っている以上に水分を摂取してしまいます。
また、デイサービスに関しては、病院との連絡不足が原因でした。
事前に、Aさんの情報共有がされていなかったため、水分摂取が過剰になってしまったと言えます。
結果的に、コミュニケーションをとらなければ分からない情報ばかりでした。
アセスメントを進める上で、コミュニケーションは重要なポイントです。

まとめ

事例を通して、看護師がアセスメントをする上で大切な3つのコツを説明しました。
「個別性」「信頼関係」「コミュニケーション」どれも基本的なものです。
分かっていても、対応に困る患者さんがいたり、複数の業務が重なって心に余裕がなくなったりして、うまく立ち回れなくなってしまいますよね。
新人看護師はもちろん、どんなベテラン看護師でも直面する問題だと思います。
ただ、そのモチベーションのまま顔や態度に出してしまえば、もちろん患者さんに伝わってしまいます。それでは看護師の存在意義はありません。
とはいえ、看護師が熱心に取り組む姿勢は、患者さんに伝わります。
患者さんにとって、看護師の存在はなくてはならないものです。ときどきで良いので、基本に立ち返ってみてください。
この記事が、そのきっかけになれば幸いです。

 

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