急変時に慌ててしまって上手く対応ができなかったなと落ち込むことはありませんか?
ここでは急変時及び救急外来で命の危機にあるような患者さんをどのようにアセスメントしてどのような行動をとるのかお伝えしたいと思います。
また、急変及び救急外来に役立つ研修についても併せてご紹介致します。
【急変/救急外来で患者さんが来たら..】
あなたは救急外来に勤務している看護師です。救急車で患者さんがストレッチャーで運ばれてきました。さて、あなたならどうしますか?
救急のA・B・C・D・Eの確認、その前にやるべきことがあります。それは「第一印象の把握」です。
あなたの主観でいいので、まずは患者さんを見た時「良い/急ぐ必要はない」「悪い/急げ!」を 30秒以内に判断します。後者を選択して人がいなかった場合、すぐに応援を要請します。院内の病棟の急変の場合、コードブルーなど院内救急コールをして対応するスタッフを集めます。
心停止の場合はすぐにCPRを開始します。
第一印象の把握後、心停止ではない場合、A・B・C・D・Eのアセスメントに入ります。
この順番は心停止に影響を及ぼすリスク順になっています。
A(Airway):気道の状態
気道が狭窄、あるいは閉塞している場合は呼吸の出入りができません。そこを改善することによって次のB(Breath)項目が正常であれば状態は改善するかもしれません。
気道の異常、気道が狭窄、閉塞していないかをアセスメントします。
患者さんの口元に自分の耳を近づけて、息をしているか、しているとしても弱くないかをアセスメントします。
顎が下がって気道が閉塞されていたら頭部後屈あご先挙上法、または下顎挙上法を行って、呼吸ができるようになるかを試みます。
頭部後屈あご先挙上法は、患者さんの額部及びあご先に手をのせ、スニッフィングポジション(鼻先をあげ香りを嗅ぐようなポジション)をとるように額を下げ頭部を後屈させます。
下顎挙上法は、頭部や頸椎の位置を変えることなく気道の閉塞あるいは狭窄を改善させる方法です。患者さんの頭側に立ち掌を側頭部におき、指を下顎枝の下に置き下顎を挙上させます。頸椎損傷が疑われる患者さんは頭部後屈あご先挙上法を行うと増悪させるリスクがあるため、下顎挙上法を選択します。
痰が詰まっていれば痰の吸引を、飲食物が気道に詰まっていたらハイムリック法(腹部突き上げ法)で飲食物を取り除く方法を試みてください。
気道の狭窄により呼吸状態が保てない場合は、場合によっては気管切開が必要な場合もあり、ミニトラックを使うかもしれないということを念頭に入れておくと、出番があった場合慌てずに落ち着いて行うことができるかもしれません。
B(Breath):呼吸状態
正常な呼吸か、異常な呼吸なのか。
異常な呼吸の例として、呼吸数の異常、チェーンストークス呼吸、ビオー呼吸、クスマウル呼吸、失調性呼吸などがあります。
呼吸数の正常な回数は16?18回前後です。少ないか、多いか。少ない場合は尿毒症・頭蓋内圧亢進、糖尿病性昏睡などが考えられます。多い場合は過換気症候群、代謝性アシドーシスなどが考えられるため、場合によっては血液ガス分析検査を行うこともあります。
チェーンストークス呼吸は、15?20秒の無呼吸から深く早い呼吸になり、その後浅くゆっくりした呼吸が繰り返される呼吸です。重症心不全、脳血管疾患、薬物中毒が考えられます。
ビオー呼吸は、浅くて早い呼吸と無呼吸(10?60秒)を交互に繰り返す呼吸です。頭蓋内圧亢進が考えられます。
クスマウル呼吸は異常に深くゆっくりした呼吸です。昏睡時、代謝性アシドーシス、尿毒症が考えられます。
失調性呼吸はリズムが全く不規則な呼吸で、呼吸停止に移行するリスクが高いので、原因検索を急ぎます。
必要に応じてSpO2が低下していれば酸素投与、ネーザルハイフロー、用手換気、場合によって気管挿管をすることもあります。
C(Circulation):循環動態
心電図モニターをつけ、血圧を測ることだけが循環動態の評価ではありません。患者さんから分かることがたくさんあります。
橈骨動脈の触れ具合の強弱やリズムの不整、末梢冷感、顔色や唇の色、皮膚の浸潤、尿流出の量など、患者さんのフィジカルはたくさんのサインを出してくれています。
血圧計のマンシェットを巻いて測定し、心電図モニターをつけたら不整脈の有無をアセスメントします。
血圧が下がっている場合は必要に応じて輸液や輸血、昇圧剤(カテコラミンなど)を使用するとともに、出血などの原因検索を急ぎます。
特に致死的不整脈(VT、VF)が出現している場合、抗不整脈(アミオダロン、硫酸マグネシウムなど)を使用したり、除細動器を使用します。
心電図が苦手で自信がない方もいらっしゃるかと思います。大事なのは、その不整脈によって循環動態が破綻しているかどうか、ということです。もちろん不整脈に対する早急な治療は必要ですが、破綻している場合は循環補助としてIABP(大動脈バルーンパンピング)、ECMO(体外式膜型人工肺)を使用することもあります。
原因検索として心臓カテーテル検査を実施する場合もありますので、特に心疾患が疑われる場合は心臓カテーテル検査を実施できる病院へ搬送できるとなお良いです。
D(Disability):意識(中枢神経)
意識レベルの評価としてJCS、GCSなどがあるかと思いますが、所属している組織でどちらを採用されているかによって使用するツールも異なるかと思います。
初めに患者さんに呼びかけて頂いてると思いますが、応答がない場合、強い刺激を与えて反応があるかを見ます。爪を強く押す、胸骨をグーでグリグリする、乳首を強くつねる(これが一番強い痛み刺激と言われています)などの方法があります。
中枢神経系の評価として瞳孔反射や瞳孔径、四肢麻痺のチェックをします。低血糖によって意識障害が生じている場合もあるので、血糖チェックを行い、低血糖の場合はブドウ糖の経口投与あるいは静脈注射を行います。
E(Exposure&environmental control):脱衣と体温管理
脱衣後の全身観察及び体温測定を行います。低体温は血液凝固因子の活性が下がり出血が止まりにくくなるため、保温に努めます。熱中症の場合はクーリングしながら冷やした輸液を投与し熱を下げます。
原因検索は患者さんにファーストタッチした時からすでに始まっています。チームのメンバー全員で考えながら、A・B・C・D・Eに沿ってアセスメントしつつ対応していきましょう。
急変時も同様に第一印象の把握、A・B・C・D・Eのアセスメントを行って原因ごとに対応していきます。
A・B・Cまでは馴染みのある方も多いかと思いますが、D・Eの評価も重要です。急変や救急外来で命の危機にある患者さんを目の前にして焦ってしまう気持ちはあるかと思いますが、まずは一呼吸、対応するのはあなただけではありません。救命はチーム力が命ですので、このようなアセスメント能力だけではなく、あなたのコミュニケーション能力も大変重要になってきます。
救命チームの一員として、チーム力を活かして落ち着いて対応していきましょう。
【ケースごとのアセスメントに役立ちそうな救急看護の研修】
心停止の対応:BLS(一次救命処置)、ACLS(二次救命処置)、PALS(小児の急変時対応)、ICLS(院内の心停止に特化した処置)
脳血管疾患の場合:ISLS(神経救急蘇生)
まとめ
いかがでしたでしょうか。まずは急変のような状況に当たった場合、頭が真っ白になってしまうかもしれませんがまずは一呼吸。一つずつ項目をアセスメントしていけば大丈夫です。やることは分かっています。
そしてあなただけが対応するわけではありません。チーム力がものをいうので、1人でなんとかせず、コミュニケーションをよく取ってみんなで対応に当たりましょう。
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