希死念慮のある患者との関わり方とアセスメントのポイント

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#1919 2022/08/24UP
希死念慮のある患者との関わり方とアセスメントのポイント
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希死念慮とは、「死にたい」「自分は死んだ方がいい」といった、死への願望のことをいいます。精神科や心療内科、終末期などのターミナルケアの患者さんに多く見られる症状です。
健常者でも辛いことや悲しい出来事があった時に軽度であれ「死にたいな」と思った経験がある人も少なくないのではないでしょうか。
ここでは希死念慮のある患者さんに対してのアセスメントや関わり方のポイントを私の経験も踏まえて説明します。

【希死念慮を抱く原因】

「死にたい」という気持ちに至るまでの要因は人によってさまざまです。同じ出来事でも、自分は全然気にせずいられたとしても他人にとっては生きていたくないほどの心理負担になることもあります。
多くは生まれ育った環境や愛する人との死別などのイベントといった外的要因や、うつ病などの精神疾患が原因となります。
しかし、中には外的要因もないのに強烈な希死念慮を抱き、時には自殺行為を繰り返してしまう患者さんも少なくありません。
「死にたい、特に何かあったわけじゃないけど。」というように、外的要因がないため、こちらもどうアセスメントし、アプローチすればよいかも分からず非常に解決が困難な事例になってきます。

【自傷行為=「死にたい」ではない??】

よく勘違いしてしまうのは、自傷行為を自殺行為と捉え、この人は死にたいと思っているんだ、と決めつけてしまうことです。
自傷行為をしたからといってその人に希死念慮があるとは限らないのです。
自傷行為でよくみられる理由は、「不安な気持ちを紛らわしたい」、「自分を痛めつけたい」といった自己懲罰的な動機が多く、繰り返すうちに依存的になってしまうことが多いのです。
依存的になってしまうと、その行為をしないと気が済まない、落ち着かない状態になってしまうため、本人が止めようと思っても、また周囲が止めさせようとしても自分の意思ではコントロールできなくなってしまいます。
私が精神科で勤務していた頃にリストカットを繰り返していた患者さんは、「死にたいとは思わないから死なない程度にやってる。どの辺を切れば死なないかは大体分かってるから。」と話していました。
ただ、だからといって希死念慮はないと決めてしまうのも危険なので、必ず自傷行為と希死念慮はセットにしてアセスメントを行う必要はあります。

【希死念慮のサイン】

希死念慮にも重度、軽度があります。
自分から周囲の人に「死にたい」と訴えられる患者さんは、裏を返せば「自分の話を聞いてもらいたい」といったSOSのサインを自ら出してくれているため、アセスメントや対応ができます。
しかし重度になると、周りには一切表出しなくなります。なぜなら周りに伝えることで「死」という目的が遂行できなくなるからです。それほどまでに死への執着が強くなると、周囲もなかなか気付けないためかなり危険です。

それでも少なからず行動の変化はみられます。
?急に身辺の整理を始める
?不自然なほどに明るく振る舞うようになる
?もしくは急にふさぎこむ
?全てのことに無関心になる
?死後の世界を気にするようになる など…
とにかく普段と違った違和感を察知することが大事になります。


【患者さんの事を知る】

看護としてアセスメントをするうえで最も大切なのは情報収集です。
急を要する場面では難しいですが、ある程度余裕のある状態であればまずは情報収集をする事が大切になってきます。
まずはその患者さんの出生や生活歴、家族歴、既往歴や仕事の経歴、学歴といった、その人の歩んできた人生を把握することも大事になってきます。相手のことを知らなければ本当の意味での共感もできないし、なにより相手にもそれが伝わってしまいます。
ただし精神科領域においてはカルテの情報は基本的に本人の証言ないし親族からの情報から作られる物なので一概に全て正しいとも言い切れませんし、事実の全部が記載されているとも限りません。
しかし我々はカルテの情報か本人とのコミュニケーションでしか本人の事を知ることはできません。そのため、せめてカルテに記載されている情報くらいは把握するようにしましょう。

【絶対にやってはいけない対応】

希死念慮や自殺企図のある患者さんへの対応の仕方はそれぞれですが、総じてやってはいけない対応の仕方があります。

「死んではいけない」と否定したりたしなめる
「どうしてそんな事を考えるんだ!」と咎める
「そんなの死ぬほどのことじゃない」と軽く流す
大げさに取り乱す
「死ぬ気があれば何だって出来る」といった無責任な励まし

このような対応はかえって精神状態を悪化させたり希死念慮を助長させてしまうことに繋がりかねません。
私の同僚看護師たちも普段はとても厳しい方ばかりなのですが、患者さんが「死にたい」と訴えてくると、絶対に否定したり咎めたりはせずに、まずは話を聞く事を徹底していました。そのため普段は反発している患者さんも涙を流しながら同僚看護師に心を委ねる様子をよく見ていました。
それでは、具体的にどういった対応をすれば良いのでしょうか。

【まずは「受け入れる」ことと「聞く」こと】

一概に「これが正しい!」という関わり方はありませんが、まずは心得ておくべき基本姿勢から説明していきます。
(打ち明けてくれた事、その勇気を評価しねぎらう)
訴えてくる患者さんは死にたい気持ちと生きたい気持ちの狭間にあって、相当な覚悟で打ち明けてくれます。そのことを理解し、まずは伝えてくれたことへの感謝の気持ちを伝えます。

(患者さんの話を傾聴する)
患者さんの思いを否定することもなく賛同することもなく、まずは「聞く」ことが大切です。その上で気持ちを「受け止める」ことです。
多くは、看護師に説得して欲しいのではなく、とにかく話を聞いて欲しいと思っています。
私も多くの希死念慮を持つ患者さんと接してきましたが、ほとんどの場合、相手を思いやる姿勢を持って共感してあげるだけで患者さんの気持ちは晴れていくものです。

また、共感したうえで「でも私はあなたが死んでしまったら悲しいな」と、自分の率直な思いも伝えるようにしています。
ただし、「きっと親は悲しむよ」などというのは、無責任な推測に過ぎないのであまり言わないようにしています。
あくまで自分はこう思う、といった、「自分の思い」を患者さんに伝えてあげることで、よりこちらの真剣さが伝わります。

【「TALK」の原則】

自殺願望のある方への関わり方の基本として、「TALK」の原則というものがあります。
以下の4つの単語の頭文字をとってTALK(話す)という意味になっています。

・Tell:「誠実な態度で話す」
しっかりと声に出して「あなたの事を心配している。」と伝え、誠実な態度を相手に示します。
・Ask:「死にたい気持ちがあるのか率直に尋ねる」
現実から目を逸らさずにしっかりと相手と向き合うことが大切です。
・Listen:「相手の訴えを傾聴する」
相手の辛い気持ちを全身で受け止め、聞き役にまわります。たとえ沈黙があってもそれもまたコミュニケーションなのです。
・Keep Safe:「安全の確保」
いかに周囲が頑張ってもすでに患者さんが危険な思考に達している場合は、やむを得ず安全の確保を最優先にする必要があります。
凶器になりうる物は遠ざける、物理的に自傷行為を行えない環境に身を置くなどの対処が必要になることもあります。

まとめ

精神疾患を抱えた患者さんはとても繊細です。
関わり方は多種多様ですし、関わり方しだいで良くも悪くも転がる可能性があります。
なかには引き留めてほしい、論理的に説得してほしい患者さんもいました。しかしわれわれ看護師は心理学のスペシャリストというわけではありません。心理学的な知見が少ない状態でむやみに教えを解くのはリスクも伴うため注意が必要です。
自分に出来ることを見極め、その出来る事を最大限に生かして心のケアに努めることが大事です。

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