訪問看護で初回訪問をした時に、利用者と対面して「あれ?」と思うことがあります。なぜでしょうか。訪問看護に限らず、病院でも患者を目の前にして何となく違和感を覚えることもあるのではないでしょうか。そんな事例のアセスメントについて紹介していきます。
・初回訪問時に認知症の程度をアセスメントする
私たちはさまざまな訪問依頼を受けてサービスを開始します。あらかじめ利用者情報をもらい、ある程度、その情報からアセスメントを行って初回訪問に向かいます。その利用者情報の中には、さまざまな身体的情報、精神的情報、家族情報などが書かれています。その情報を基に初回訪問したときに、「あれ?」と違和感を覚えることがあります。
例えば、家族からの情報で認知力の低下はそれほどないと聞いていても、やはり年相応の認知力低下があることもあります。時には、その認知力低下に伴う身体的・精神的な問題から、これは一度受診して専門的な治療を受けたほうがいいのではないかと考えられる場合もあります。
認知力が低下していても、これまでの生活を続けることはもちろん可能です。家族と同居の場合は特に介護力があるというだけに、私たちの訪問には心強いですね。また、独居の認知症の方も、在宅生活を続けられないわけではありません。周りにサポートをしてくれる人がいる、何らかの介護サービスの介入があれば、もちろんこれまでの在宅生活を続けることはできるでしょう。
ただ私たち訪問看護をはじめとする在宅診療など医療的な面において、少し気をつけなくてはいけないことも多いのです。特に認知症の方の場合、新しい薬や治療を始める時に、抵抗が強くなかなか受け入れられなかったりすることもあります。なぜなら在宅診療や訪問看護が導入になるときに信頼関係がまだできていないから。
ただどのような場合においても、私たちは根気強くかかわっていくことが重要だと思っています。相手の行動や言動、感情が認知症によるものだと理解しかかわることで、相手も徐々に心を開いてくれることも多いです。そして私たちが訪問することが自然と日常生活に溶け込んでいくことが多いです。そうなれば、利用者の生活リズムの一つになり、受け入れられるようになります。受け入れられるようになるには、2週間、1か月と少し時間がかかることもありますが、やはり根気強く、そして決して踏みこみすぎないかかわりが認知症の方には重要だと思います。
・郵便があちらこちらにある、管理しきれていない家
私たちは訪問を始めた時、初回から自宅の中をジロジロと見るわけにはいきません。ある程度信頼関係を築かなければ踏み込めない部分も多いからです。
そんな中で、何度が訪問を重ねているうちに、ここは郵便物が散乱しているなと感じることがあります。郵便物が散乱しているところもあれば、丁寧にタワー上に積み重なってほこりをかぶっているところもあります。よく見てみると、その郵便物が開封されていないことも少なくありません。
そのような利用者によく見られる問題。それが保険証や介護保険証の紛失や支払うべき税金や公共料金の滞納だったりするのです。
今でこそ引き落としで支払いができるものが多くありますが、昔から長年引き落としの手続きをせず利用している人の場合は、自分で支払いに行くしかありません。しかし、支払いの封書が届いているにも関わらず、それを開封していないのでいつまでも支払いが出来ないのです。
それにより、水道が止まる、電気が止まるといった事態になることも少なくありません。また税金の滞納も多くみられることです。
私たちは初回訪問時に保険証や介護保険証を確認することがよくあります。しかし、利用者本人も重要な保険証ですら、家のどこにあるかわからないという場合もよくあります。そして結局再発行を繰り返す人もいるのです。しかし、再発行の手続きをして「後で郵送で届くから」と言われても、その封書を開けずにまたしまい込んでしまう、また開けてもどこかに紛失してしまうということは少なくないのです。
このように、郵便物の問題のある家というのは、この人は認知症かもというヒントになります。上記の文章を読んでみると、これ独居の高齢者の問題なのでは?と思う人もいるかもしれませんね。しかし、決して独居の場合だけではありません。家族と一緒に住んでいても、利用者本人が郵便物に強いこだわりがあり、自宅に届いた郵便物を自分がいち早く受け取りそれをしまい込んでしまうため、家族全体が困るという場合も少なくないのです。
認知症には物とられ妄想がありますね。そのため、大切なものはため込んでいくという行動につながるのです。しかし、その郵便の内容が重要かどうかということは、本人にとって重要ではありません。またどこに置いたかを忘れてしまうことも多いのです。そのため、郵便物がどこにあるのかわからない、いろんな場所においてある、重要な郵便物を紛失するという事態になってしまうのです。
初回訪問時には郵便物から垣間見える認知症の程度も予測することが出来ることも多いので、少しずつ対処しながらかかわっていくことが重要であると感じています。
・全く季節感がない衣類を着ている利用者
私たちは訪問している利用者さんの身だしなみや衣類にも着目しています。洗濯したものを着用しているか、いつも同じものを着用しているのか、着替えがどの程度できるのかといったことです。
それ以前に、訪問をした時に、全く今の季節に合わない衣類を身に着けていることも。例えば、梅雨のジメジメしてむっと暑い時期に、冬場に着るダウンジャケットを着るとか。また着るものがなくて、巣だっていった子供の服を引っ張りだしてきている利用者もいました。
高齢になると、体温調節機能も低下していきます。そのため、私たちには想像できないような体温の感覚があることを理解しておきましょう。筋肉量も皮下脂肪も低下しますし、私たち以上に寒さを感じることもあるのです。
しかし、上記に加え、認知症である場合は見当識障害がくわわり、温度の感覚や季節の感覚というのがわからなくなることがあるのです。
私たちは利用者の初回訪問をした時、この人は室内で熱中症になる可能性はないかアセスメントをします。高齢者の室内での熱中症というのは、社会的にも問題になっています。少し周りが声掛けして環境を整え、注意を払ってあげるだけで予防をすることが出来るものですが、認知度の低下、ADLの低下した高齢者は、自分で水分を取ることもままなりません。また体温調節などもうまくいかず、口渇なども感じることがなく、水分を摂取する必要すら感じないこともあるのです。
訪問看護師はケアマネージャの作成する、サービス提供票に基づいて訪問を行います。そのため毎日訪問とはかぎりません。では、誰も行かないときにどうなるのか?もちろん、そのようなサービスの提供について取りまとめをしてくれるのはケアマネなのですが、訪問看護師も看護のプロとして、医療面からのアドバイスは欠かせません。利用者に注意が必要な場合は、訪問介護や通所サービスなどを利用して、なるべく一日一回程度誰かの目に留まるように働きかけていきます。
もちろん医療的な面で毎日サポートが必要な人もいます。その場合は、毎日訪問が必要になることもあります。
例えば内服の場合。継続して毎日飲み続ける必要のある内服がある場合は、初回訪問から集中して毎日訪問し、自分で内服できるような習慣をつけてあげる場合もあります。また在宅診療の時に医師に相談して1日3回の内服を1日1回朝のみとするなど服薬調整を行い、利用者の習慣に取り込みやすい形にすることもあります。習慣化されれば、毎日訪問看護がサービスに行かなくてもよい場合もあります。
認知症の利用者の言動を見ながら、必要なかかわりをしていくことは重要です。利用者本人がサービスの提供にも慣れてきた、そして認知症の症状も少し安定し生活リズムも整ってきたというときには、再び自分でできるという自信を取り戻し、利用者なりに安定した生活を送ることができるのです。
まとめ
訪問看護において、利用者情報や初回訪問時にアセスメントをする重要性を上記ではご紹介しました。いろいろな問題を抱える認知症の利用者において、アセスメントをして個別性を重視したかかわりをしていくことはとても重要です。根気強くかかわること、そして長い目で継続してみていくことがとても重要だといえます。参考にしてみてください。
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