急性期における全身状態のアセスメントをするコツ

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#1848 2022/06/14UP
急性期における全身状態のアセスメントをするコツ
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みなさん、全身状態のアセスメントときくと「何から情報をとればいいのかわからない」「モニターの値はなんとなく理解しているけどアセスメントにつなげられない」といったことはありませんか?今回は、集中治療室に10年勤めた私が新人の頃から徐々に身に付けていった「急性期における全身状態のアセスメントのコツ」についてお話したいと思います。

急性期病棟やICU、HCU、CCUなどクリティカル領域の部署に配属されると、「全身状態ってどうみたらいいのかわからない」という壁にぶつかることがありませんか?
最初のうちは、目の前の患者さんのケア、記録といった日々の業務に追われてアセスメントまでなかなか頭がまわらないこともありますよね。今回は集中治療室での勤務を経験するなかで私が身に付けた「全身状態をアセスメントするコツ」についてお話していきます。「患者さんの情報はとれるようになってきたけどアセスメントにうまく結びつかない」「アセスメントしようとすると情報収集にとても時間がかかってしまう」といった方に少しでも参考になれば幸いです。

【患者さんの“どこ”をみたい?~カテゴリー別に考えてみよう~】

看護学生時代や新人の頃は患者さんの情報をどこまでとればいいか分からず「片っ端からカルテを読み漁った」なんて経験はありませんか?しかし、勤務前に情報収集として使える時間は限られていると思います。急性期においては、患者さんの状態も刻々と変化していくので、リアルタイムな情報収集も求められます。また、主疾患以外にも既往歴や薬剤の影響、治療に伴う合併症の有無だけでなく人工呼吸器や持続透析といったME機器を装着していればその機器による影響も考慮しなければなりません。これらの情報を一気にアセスメントしようとすると、何がどうなっているのか混乱してしまいますよね。そこで、患者さんの“どこ”をみたいのか、まずはカテゴリー別に考えていくことをお勧めします。

〇患者さんの循環動態について考えたい…心拍数、血圧、心機能(心エコーの結果など)、心電図の異常の有無、四肢末梢冷感の有無、採血結果(CK、AST、ALT、Lac、Cre)、腎機能、in-outバランス
〇患者さんの呼吸状態について考えたい…画像検査(胸部レントゲン・CT)、呼吸音、呼吸回数、呼吸苦の有無、痰の性状、SpO2値、血ガス値、酸素投与状況もしくは人工呼吸器の設定
〇患者さんの栄養状態について考えたい…皮膚の状況、褥瘡の有無、創部の治癒状況、食事摂取量、食欲の有無、四肢末梢冷感の有無、採血結果(TP、Alb)

実際に患者さんの全身状態をアセスメントするためには身体活動状況や意識の状態、睡眠の状況、身体的・精神的苦痛の有無なども考慮しなければなりませんが、まずはおおまかに「循環」「呼吸」「栄養」とカテゴリーに分けてみました。各カテゴリーをアセスメントするために必要な項目は、その患者さんに使用されているデバイスや侵襲後から回復期のどのステージにいるかによっても変わってきますが、まずは基本的なものとして上記を挙げています。バイタルサインや採血データ、心電図や画像検査の結果をやみくもに情報収集するのではなく目的をもって一つ一つの情報をとらえる必要があります。

呼吸状態を例にあげると、「SpO2が96%維持できているので異常なし」とアセスメントしたとしましょう。しかし、患者さんの臥床状態が続いていれば背側に無気肺が形成されて肺機能が著しく低下しているかもしれません。酸素4L/FM投与下でのSpO2:96%なら「異常なし」という判断になるでしょうか?SpO2の目標値は維持できていても、実は呼吸回数が上昇して負担が大きくなっているかもしれません。無気肺の形成は、呼吸音の聴取やレントゲンの画像を確認することでアセスメントが可能です。呼吸回数や呼吸の疲労感の有無は実際の呼吸の様子を観察することや患者さんとのコミュニケーションの中から情報を得ることができます。一つの情報だけをとって「異常なし」と判断するのではなく、「呼吸」に関わるあらゆる項目を観察したうえで、それらをつなぎあわせて「呼吸」について総合的に考えることでアセスメントが完成します。

【アセスメントには知識が必須!~正常と異常を判断するためのベースを作ろう~】

新人看護師さんや学生さんの中には先輩や指導担当の看護師から「アセスメントが浅いよ」「もっと深く考えてみて」とアドバイスされることがありませんか?私は新人の頃によく「患者さんの全体像が捉えられていない」とお叱りをうけましたが、最初の頃はどんなに考えてみても「血圧も心拍数も問題ない、治療後の合併症らしき症状もでてない。他に何があるのだろう?」とアセスメントがうまくいかないことが多々ありました。どんなに患者さんの情報をたくさん集めても、その情報をアセスメントするための「知識」がなければ意味がありません。新人の頃は(当然ですが)先輩と比べると持っている知識が足りません。疾患や薬剤に対する理解ももちろんですが、解剖学にもたちかえって総復習が必要だったりします。
例えば血圧について考えると、まずは収縮期血圧と拡張期血圧の正常と異常を覚えるかと思うのですが、そこからさらに血圧を決定する因子は何か、血圧は他のどのような要素に影響をうけるのか、血圧が上がるもしくは下がればどの臓器にどのような影響が出るのか等、血圧ひとつをとっても膨大な知識が必要になります。すべてを覚えるのは大変なので、まずはポケットサイズの参考書を買ったり、自分用の勉強手帳を作ったりして分からないことがあるときにすぐ確認できる「カンニングノート」を作ることがお勧めです。これも、やみくもに自分の所属する科の参考書を買いあさるのではなく、自分に足りていない知識を補えるようポイントをおさえる事が大切です。
例えば、心臓血管センターなどの循環器病棟に所属している場合はよく冠動脈の略称や循環作動薬の作用機序、副作用がのった参考書などが人気です。混合病棟などで化学療法も取り扱う科であれば、普段から使用する抗がん剤や治療薬が膨大にあるかと思います。「疾患やだいたいのバイタルサインの正常値はわかるけど、薬剤がまったく覚えられない」といった時には、手元に薬剤の種類や作用機序、副作用が載っている参考書もしくは自分でまとめたノートがあるとすぐに調べられます。看護師は「生涯学習」が必要な職種です。常に知識を身に付けなければならない大変さはありますが、身に付けた知識がどんどん深まり、実際の患者さんの病態と繋がった時、「あ!こういうことか!」と達成感を感じられるようになります。正しい知識を身に付け、正常と異常を判断できるベースができれば、アセスメントにもつながりやすいです。「知識」をみにつけるには、ひたすら「勉強」するしかありません。新人看護師さんの指導を担当したときに「ネットで調べたのですけど、よくわかりませんでした」と報告してきた方がいました。今やインターネット上から様々な情報が得られるので、「ネットで調べる」ことも手段の一つなのですが、ネットの情報には根拠に欠ける病態知識も散見します。バックグランドが明確な(例えば、某看護師向け転職支援業者が展開している病態知識に関するホームページなど)ものであれば、そこで調べることも悪くはないと思います。個人的には、疾患に関わる解剖学の基礎や治療に関する基本的な知識は、医学書や看護師向けの参考書など監修がしっかりしているもので勉強することをおすすめします。

【少ない情報でもアセスメントはできる!~病態と患者さんの状態を線で考えよう~】

これまで、患者さんの全体像をアセスメントするために項目別に情報を整理すること、情報をアセスメントするための知識をみにつけることについてお話してきました。これらは患者さんから得られる情報が膨大にある状況を過程していましたが、実際の臨床に出ると「ついさっき入院したばかりで患者さんに関する情報が何もない」というケースもあります。
例えば、「50歳代男性、職場の健康診断で高血圧を指摘されていた。その他大きな既往は聴取なし。胸痛を主訴に来院、心電図検査にてST上昇、採血にてCK値の上昇あり緊急カテーテル検査実施。左冠動脈に狭窄がありステント挿入術の治療を受けた」患者さんがいるとします。過去に入院歴もないため、既往歴なども分かりません。採血データも来院時のデータのみです。このような患者さんに、どのようなアセスメントをしますか?
きっと新人さんや学生さんだと「情報が全然ない」「アセスメントが難しい」と感じるかと思います。ですが、情報は少なくても、この患者さんの主疾患であると考えられる「ACS(急性冠症候群)」の病態が理解できていれば患者さんのアセスメントは可能です。患者さんの状態は時間の経過とともに変化していきます。病態についても、時間の経過とともに変化していくのは同じですよね。一般的に病態がどのような変化をしていくのか理解していれば、その変化と目の前の患者さんの状態を照らし合わせて考えることでアセスメントができます。ACSでいえば、発症後から時間経過とともに出現する症状や治療後の合併症の種類が明らかなので、「発症から〇時間後だから、今は??の状態に注意が必要だ」と見当がつきます。情報が少ないときこそ、患者さんの状態を「点」でとらえるのではなく病態とてらしあわせて時間の流れに沿った「線」の状態で考えてみるようにしましょう。

ちなみに、先ほどの症例についてざっくりと私なりにアセスメントをすると以下のようになります。
・50歳代、職場の健康診断で高血圧を指摘、既往の聴取はなし
一般的に働き盛りの世代、健康診断で高血圧を指摘されているが未治療の可能性があり、他高血圧関連疾患が潜在していることが考えられる。普段の生活状況や食生活について聴取し、再発リスクの有無をスクリーニングし疾患指導を検討する。
・左冠動脈に狭窄、ステント治療後
来院時既にCK値の上昇をきたしており左冠動脈の狭窄を認めているため、心筋障害の程度について採血データ、心電図変化を確認する必要がある。左心機能へのダメージと再灌流障害による不整脈の出現や血圧、心拍数の変動に注意が必要。また、治療後再狭窄のリスクも考えられるため胸部症状や突然の自覚症状の発症に注意する。カテーテル治療挿入部について、治療後抗凝固系の投与による出血傾向、血腫形成、感染兆候の有無を観察する。カテーテル治療に伴う造影剤使用に関して、腎機能、尿量を観察する。心筋ダメージの拡大による心不全合併のリスクが考えられるためin-outバランスに注視し、呼吸困難感の出現や酸素投与状況、SpO2値の変動に注意する。

やや紙面的なアセスメントになりましたが、このような形になりました。臨床現場を離れて数年経つので、現役で臨床に就かれている方のアセスメントに比べると浅い部分もあるかと思います。みなさんはどうでしたか?もっといろいろアセスメントができましたでしょうか?これまでのお話が少しでもみなさんのアセスメントの役に立てていると嬉しいです。

まとめ

いかがでしたか?急性期における全身状態のアセスメントのコツについて、私なりにお話しさせていただきました。急性期、とくにクリティカル領域における患者さんの全体像をとらえることは、なかなか容易ではありません。各疾患の知識、薬剤の影響、疾患・治療などからうける身体の反応とその経過に伴う観察項目など、考えなければならないことが膨大にあります。必要な情報をカテゴリーごとに整理し、頭に入っている知識とカンニングノートとを照らし合わせることで、少しでもアセスメントを導きやすくなると思います。人それぞれコツがあるかと思いますが、アセスメントがうまくいかず悩んでいる方に、この方法がひとつの参考になればと思います。

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