緩和ケア病棟の勤務前後の印象の変化

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#1846 2022/06/12UP
緩和ケア病棟の勤務前後の印象の変化
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私は以前、地元の大学病院の緩和ケア病棟にて勤務していました。新人看護師として初めての勤務が緩和ケア病棟でした。元々希望していた科は救急医療に携わりたかったのですが、希望人数が多く、緩和ケア病棟に勤務する流れになったのです。勤務する前と後の印象の違いをお話ししたいと思います。

◯緩和ケア病棟で勤務し始める前のイメージ

私は、幼い頃からドラマなどで救急医療に対する憧れが強く、いつか自分も命の危機に瀕した人を助けられるような人になりたいと強く懇願していました。救急医療に携われるように地元で有名な大学病院附属の看護学科に入学し、様々な医療知識を身につけていきました。こうして、無事に大学病院を卒業し、私が通っていた大学の看護学生は8割くらいが、そのまま大学病院に就職する人が多かったです。
私もその1人でした。そして、入社式があり、1人1人勤務する病棟が発表されていきました。私もドキドキしながら待っていると、私の名前と勤務する病棟が発表されました。最初はすごく耳を疑いました。命じられた勤務病棟は緩和ケア病棟でした。就職する時に希望する科は3つまで書く事ができるのですが、どこにも書いていませんでした。この瞬間から私の不安は始まりました。
看護師は、幅広い分野の知識を勉強するとはいえ、やはり興味のある科の事を専門的に勉強したりもします。私は、救急医療であったり急性期の知識はかなり勉強していましたが、緩和ケアの知識にはあまり自信がなかったのです。
そして、何より緩和ケア病棟というところは、救急医療とは少し意味合いが違い、死というものを受け入れ、準備していく場所であるため、命を救うぞと意気込んでいた私にとっては、かなり衝撃的な看護師人生の開幕だったのです。緩和ケア病棟は、患者様本人とご家族との関係性がすごく深く、本来新人看護師が勤務することは滅多にないそうです。対応するスキルが未熟であることや、他病棟よりもお亡くなりになる方も多いため、精神的な負担が大きくベテランの看護師が勤務する事が多い特徴があるのが緩和ケア病棟です。
こういった内容を、発表されてから知ることになり、より一層不安が増してきました。この時点での、私の緩和ケア病棟の印象は、ベテランの先輩看護師がたくさんいて、死というものを目の当たりにする機会の多い未知の世界という感じでした。

◯緩和ケア病棟での勤務開始

いよいよ、緩和ケア病棟での勤務が始まりました。緩和ケア病棟では、聞いていた通り、ベテランの看護師さんがすごく多く、年齢が近いと感じる方はすごく少なかったです。業務内容としては、まずは申し送りでどのような患者様が病棟にいらっしゃるのか、その上で要注意の患者様の情報を全員で共有するカンファレンスです。ここはどの病棟もさほど変わらないと思います。そのあと、緩和ケア病棟には、緩和ケア専門の教授や医師がいます。
1番トップの教授から、最近の薬剤の使用方法であったり、新薬が出た時には新薬の知識など、10分程度の講義ありました。これは、緩和ケア特有の時間だったかと思います。こうしてカンファレンスが終わると、それぞれの受け持ちの患者様の巡回に回ります。バイタルサインのチェックから、終末期特有の症状の有無や程度の観察、寝たきりの方が多く、意識レベルも低い方が多いため、陰部洗浄や褥瘡の処置などもこの時に一緒にする事が多かったです。
そして、何より緩和ケアで大事にされていたのは、傾聴をするという事です。死と向き合っている患者様の心の声と毎日向き合っていかなければなりません。私の中では、傾聴する時間が1番辛かったです。患者様の中には、死が訪れることに対して、受容していて穏やかな顔をされている方もいましたが、死が迫っていることに対して恐怖心をぶつけてこられる方もいました。ぶつけられる事というよりも、その恐怖心を全て理解して差し上げられないことへの無力感や、辛いと思っていることに対して処置をして治るわけではなく、ただただ経過を見ていくしかないということが新人看護師の私にはとても辛かった事を覚えています。こうした中で、気づいたことは、緩和ケア病棟でのアセスメントで重要になってくるのがメンタル面へのアセスメントだという事です。患者様の声をしっかり受け取り、ただお話を聞くだけでも良いのです。何に困っているのか、何かできることがあるかということはじっくり一緒に悩んでいくことが大切なのだと思います。こうして日々を過ごしていた私ですが、緩和ケア病棟の業務の中で辛いことばかりではなく、すごく好きだった業務があります。それはハーバード浴というものです。
このハーバード浴は何かというと、病棟のベッドのまま浴室に向かい、ハーバード浴に使用するストレッチャーに移乗し、ストレッチャーがそのまま浴槽に自動で入っていくというものです。通常の入浴介助とは違い、寝たままの状態で入浴を行う事ができるため、寝たきりの患者様にも負担が少なく入浴できることが最大の特徴です。この装置はどこの病棟にもあるというものではないため、緩和ケア病棟ならではのものだと思います。私がこの時間が1番好きだった理由は、いつも辛そうにされている患者様ですが、このハーバード浴の時間だけは、すごく穏やかな顔つきをされるのです。そのため、私はこの時間はいつもよりも丁寧にケアする事を意識して取り組んでいました。ハーバード浴は週に3回と決まっていたので、この時間を楽しみにされている患者様はとても多かったです。
他にも、私の好きな時間は、緩和ケア病棟では週1回ですが、お茶会というものがありました。ボランティアの方のご協力があり、コーヒーや和菓子などを準備して病棟内の患者様同士が触れ合い、談笑する時間です。普段、看護師には話さないような、患者様同士しかなかなか理解が難しい体の症状であったり、やれる事が少なくなってきた終末期の中でどんな趣味をして過ごしているのかなど、患者様同士で情報を共有できる唯一の時間でした。こうしたお茶会は、スタッフにとっては、準備など大変なことも多かったですが、やってよかったなあと毎回の如く思えた、貴重な時間でした。アセスメントというのは毎朝の巡回の時間だけでなく、その患者様と触れ合う時間全てを使ってするものなのだと身を持って感じました。

◯緩和ケア病棟での勤務前後の印象の変化

私は、緩和ケア病棟で勤務する前は、命を救うために看護師になったのに、どうして救うという行為ができない病棟の勤務になってしまったのだろうと、少し落ち込んでいた日々もありました。
しかしながら、そんな考えはすごく甘かったのだなあと今では反省しています。緩和ケア病棟では、身体的には治療して治す目的の患者様はいらっしゃらなかったものの、終末期の極限の身体症状が出現している中で、少しでも改善できるようにお手伝いするといったことで、辛い身体状態から救うという同じ仕事であるということに気付かされました。また、日々患者様の思いと向き合う時間が多いからこそ、話を聞くという人間として大切なスキルを身につけることもできました。他病棟よりも患者様や家族の方と向き合う時間が多いからこそ、感謝の声をいただくことも多かったように感じます。私から患者様になにかできたと自信を持って言えるような出来事は少なかったですが、少しでも患者様の笑顔を増やす事ができたのであれば、看護師冥利に尽きるのだなと概念を覆されました。緩和ケア病棟には緩和ケア病棟としての、救うがあるということに気付くことができ、私の看護師人生の幅を広げる事ができた時間でした。これからも色んな形で、患者様を少しでも救うお手伝いができるように邁進していきたいと決意することができました。

まとめ

このように、自分の希望していた病棟と違う病棟で勤務することになった看護師さんは、沢山いるかと思います。特にこの時期、私と同じ思いをしている新人看護師さんも沢山いるかと思います。どんな病棟だとしても、その病棟ごとに必ずやりがいであったり、やっていることで誰かを救うお手伝いになっていることにぜひ気づいていただけたらいいやと思います。同じ思いをされている看護師さんのお手伝いに少しでもなりますように。

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