まだまだ落ち着かないCOVID-19。COVIDに感染するとどうなるの?重症化って本当にするの?メディアでもこれまで多くの報道がされてきました。ここではCOVID患者さんの看護をするにあたって、どんなアセスメントが必要となるのか、どんな看護が求められるのかを紹介したいと思います。併せて、看護の楽しさも知ってもらえるような場になればと思います。
【COVIDに感染するとどうなるの?】
感冒症状からはじまり、発熱、倦怠感、咳嗽、鼻汁、咽頭痛、頭痛、筋肉痛などに悩まされる方が多いです。そしてCOVIDの怖いところは、酸素飽和度が低くても呼吸困難感の自覚がないという方が多いところです。風邪と症状が似ているため様子を見てしまい、なかなかよくならないから・・と検査をしてみるとCOVID感染が判明したということがよくあります。そのため、COVIDとわかった時には既に病状が進行しており、人工呼吸器が必要なくらい一刻を争うような状況になることも多いです。味覚・臭覚障害、下痢や腹痛などの消化器症状が出る方もいます。COVIDの症状は様々なため、PCR検査をしないと白黒つけることができません(正確には偽陽性・偽陰性というのもあるのですが・・)。
【COVID看護のアセスメントとケアのコツ】
どんな病気でも高齢の方や基礎疾患がある方が重症化しやすいというイメージがあるかと思いますが、COVIDは違います。もちろんそのような方々が重症化する可能性が高いことは否めませんが、COVIDは年齢が若く、基礎疾患がない方でも重症化します。特に、体格のいい方は重症化する傾向があり、入院がわかった時点で、体格がどの程度が情報をとり、入院準備をしておく必要があります。また、動作時の酸素重要が大きいため、ちょっとした動作であっても油断できません。ベッドにいるときはなんともなかったのに、トイレに移動した途端に呼吸状態が大きく悪化することも多々あります。適宜酸素飽和度を測定し、低酸素状態にならないよう目を張っている必要があります。
また、COVID患者は凝固系の異常が起こることも多く、深部静脈血栓症(エコノミー症候群)や脳梗塞などに注意する必要があります。入院中は感染対策のため部屋で隔離された状態となります。体調が悪いとなおさら活動量は減りますよね。日頃から血栓リスクについても患者に伝え、ベッド上にも積極的に足を動かすよう意識してもらうことも大切です。ほとんど寝たきりの状態の場合には弾性ストッキングなどを使用し血栓予防をするなどのケアも必要です。このようにリスクをアセスメントし事前に対応をすることで、リスク回避につなげられるケアがたくさんあります。
【COVID看護で大切なこと】
COVID患者さんは重症化すると病状の進行が非常に早いです。今までだったら朝まで経過観察してみようとアセスメントしていたところでも、COVIDではそれでは間に合わないことが多々あります。酸素需要が出てきたら要注意です。酸素飽和度が安定しない場合は低流量の酸素投与であっても人工呼吸器の使用がすぐそばまで迫っていることを考慮しながら行動しなければなりません。年齢が若く自覚症状がない方もたくさんいます。騙されるなかれ。実際はCOVID感染により身体はかなりのダメージを受けていることが多く、重症化の一歩手前である可能性があることを常に意識しておく必要があります。
また、隔離状態にある患者さんは、常にストレスフルな状況下にあります。面会はもとより、買い物なども自由にすることができません。日常生活内で不足することをストレスなく補っていけるようサポートすることも看護師の役割の1つです。さらに高齢の方は環境の変化により認知機能の低下やせん妄症状が出現することもあります。本来であればそばに付き添っていたいような患者であっても、感染対策のためスタッフの入室も最小限となるため、それが叶わないといった現実があります。入室するタイミングの1つ1つが患者にとってはとても大きな変化であり大切な時間です。看護師はその「最小限」の時間の中でいかに「最大限」のケアができるか、それが鍵になってきます。スタッフは皆、全身防護服に身を包んでいます。表情も読み取りづらい状況の中で、私たちはどうすれば患者が安心して過ごすことができるか、常に意識をする必要があります。例えば、アイコンタクトやタッチング、声のかけ方やボリューム、トーンも大切ですね。隔離という環境下では一般病棟と比較するとどうしても、患者と関わる時間が短くなってしまいますが、「あなたのことを気にかけています」ということがしっかりと伝わるよう、これまで以上にあたたかい看護が提供できるように意識していくことが重要です。
【ストレスの矛先を向けられることも・・】
急に隔離が必要な状況となりストレスフルな状況に置かれた患者は、怒りの矛先を看護師に向けてくることが多々あります。部屋の温度や食事のことなど・・病院ではなくホテルと認識しているのではないかと疑いたくなるような患者もいます。COVID病棟が立ち上がってすぐの頃は特にそういった患者が多かったように感じます。医療者自身、未知のウイルスや感染への不安、病棟立ち上げという様々なストレスがある中で、患者からストレスの吐口となることでさらにストレスがかかります。そんな時はスタッフ間で心のもやもやを共有することが大切です。それだけでどれだけ気持ちが軽くなったことか・・。そういった環境があったからこそ、不安定な気持ちを整理することができ、理不尽なことがあっても前を向きながら看護ができたように思います。
【看護力とは?COVID患者のお看取りからはじまった看護師たちの葛藤?】
残念ながらCOVIDで亡くなっていく患者もいます。感染対策のため家族との面会も叶わず、永眠されていく方のお気持ち、そしてそのご家族のお気持ちを考えるととても胸が苦しくなります。現在は、感染状況によって面会制限が一部緩和されていたりと少しずつ柔軟に対応できる環境が整ってきている印象はありますが、COVIDが流行し出した頃は、未知のウイルスに対し皆が警戒し、世界中で対策を模索している状況でした。正解がはっきりしない中で、病院でもその対策を求められ、兎にも角にも安全を第一にと厳しい感染対策が設けられ、様々な場面で制限がされていた現実があります。それは当然のことではありますし、医療者を守るために必要不可欠なことでした。しかし、これまで当たり前のように行っていた終末期のケアができないもどかしさは、現場で働く私たちにとって非常に大きいものでした。亡くなった後も、ご遺体は感染されたものとして袋に収納されます。エンゼルメイクなどもできないのです。当時は病院の「決まりごと」として受け入れざる得ない状況でした。私たちは様々な矛盾や葛藤を抱え、その度にスタッフ間で思いを共有していました。「決まりごと」だからといってそれに従うことが正解なのでしょうか?もちろんベースとしての決まりごとは必要です。しかし、その中から、できることとできないことを考え、できるようにするためにはどうすれば良いのかと模索していくことが重要であり、このような状況だからこそ模索していく力、発信していく力が求められることなのではないかと感じます。私たちの場合、現場から院内上層部へ意見を発信をしたことで、病院の決まりごとは少しずつ変化していきました。制限はもちろんありますが、面会制限が多少緩和されるなど対応が変わったことで、患者やそのご家族の満足感につながり、そして看護する側のもやもやした思いも軽減することができました。これはCOVIDに限らず、どんな場面でも言えることではありますが、看護の力は無限だと思っています。患者やご家族のニーズ、それを叶えるためにはどうすれば良いのか、常に考え模索していくことこそが看護力なのではないでしょうか。
まとめ
いかがだったでしょうか?一見、落ち着いていそうな患者さんでも騙されてはいけません。患者さんの主症状に加え、看護師としての客観的なアセスメントが非常に重要となります。COVID感染後の病状進行の速さを念頭に置くこと、そしてあなたの気付き1つで、患者さんの予後が大きく変わる可能性があることをぜひ覚えておいてくださいね。
そして、看護の力は無限です。決まりごとは、あなたの行動次第でいくらでもいい方向へ変化していきます。固定観念にとらわれず、柔軟な発想を持って看護を追求していきましょう。
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