訪問看護師になって、感じたこと。それは病院で働いていた時には、医療材料がたくさんあり、どんな処置をするにも物品が足りないということをほとんど感じたことはなかったのに、在宅に訪問する時には、あーあれがあったらなと思うものがたくさんあることでした。
私たちが利用者の自宅で点滴や尿留置カテーテル交換など医療的なケアをするときに必要なものは、訪問看護指示書をもらっている病院から衛生材料としてもらえることがほとんどです。しかしそれも最低限のものなので、点滴を失敗することは許されないほど。(もちろん失敗したときには自分たちの訪問看護ステーションの予備を使用して実施します)
しかし普段から使用するものってありますよね。例えばプラスチック手袋やマスク、綿棒やアルコール綿、テープ類など。もちろん自分たちの訪問看護ステーションから持参します。しかし、これは持ち出しとなってしまうので、訪問看護ステーションとしてはなるべく節約もしたいところですが、必要なものだけに削ることはできません。
そんな中で保清などのケアを自宅で行う時には、なるべく利用者の自宅にあるものを活用することが基本です。
自宅で出来るケアには限りがありますが、それでも私たちは安全、安楽を考えてサービスを提供します。その際には、どこの家庭にもありそうなものを利用することが多いです。そこで今回は実際私たちが訪問する際に活用しているものを紹介したいと思います。特別なものはありません。多くのものはリユースできるものを工夫して使用しているだけです。
・ペットボトルは活用頻度が高い
どこの家庭でもペットボトルは、1本や2本はあるものです。そのペットボトルは、保清の際にとても活躍するグッズの一つになっています。
私たちが利用する方法としては、まずペットボトルのキャップの中心に穴をあける。そして中にお湯を入れて陰洗ボトルとして使用することです。もしもペットボトルがたくさんあれば、洗髪用、手足浴用などさまざまなものに活用することが出来るので便利です。
また家庭によっては、小さなペットボトルには熱めのお湯、そして大きなペットボトルには水を入れて用意してあり、処置の時にバケツに入れてお湯を調整してくださいという家もあります。
また冷感が強い人には、温罨法として使用することがあります。ペットボトルを湯たんぽ代わりに使用するのですが、性質上熱々のお湯を入れることが出来ません。それが火傷予防にもなるのです。もちろん低温火傷という場合もあるので注意は必要ですが、私たちが訪問中に限り布団や手足を少し温めたいときなどに活用することが出来ます。
・S字フックは便利グッズの一つ
私たちは、訪問したときにバイタルサインなどをはかります。それらの記録を家族と共有できるように、ご家庭にも情報ノートを置かせていただくことにしています。このノートは、私たちが測定したこと、実践したことを書くと同時に、家族が気が付いたこと、疑問なども書かれることがあり、まるで交換日記のような使い方をしています。
時にはヘルパーやデイサービスの職員たちとも共有して、処置の内容を統一できるようにすることもあります。
とても有効な使い方のできるノートなのですが、利用者に任せておくと、いつの間にかどこかへ消えてしまうことがあるのです。またテーブルの上やテレビの横といったところに立てておくと、いつの間にかなくなることもあります。
それらを予防するために情報ノートを保管する方法、それが吊り下げておくことなのです。そして活用できるのがSフックです。壁に刺さっている押しピンにかけたり、鴨居にかけたりして使うことが出来るので便利ですね。
S字フックもかなりの高頻度で利用者宅にあるものの一つですが、もしもない場合はどのようにするのでしょうか。その方法が、クリーニング店などでもらえる針金ハンガーを活用することなのです。針金ハンガーを折り曲げ、S字フックのように吊り下げるように利用することが出来ます。
S字フックにかけるものは情報ノートだけではありません。点滴が必要な時には点滴をぶら下げることもできるので、訪問看護では必須なグッズの一つになっています。
・ペットシーツは安価で使いやすい
私たちが寝たきりの人の洗髪をするとき、平おむつなどを使用させていただくことがあります。しかしオムツというのは意外に高価であるため、どんどん使うわけにはいきません。
そこで活用しやすいのがペット用のシーツなのです。これが置いてある家庭というのは限られていますが、購入して損はありませんのでおすすめしています。洗髪に限らず、手足浴や陰洗などをこの先も継続していくという場合、さまざまなシーンで活用できるので、あると便利なグッズの一つです。
・ゴミ袋やスーパーのレジ袋
レジ袋というのは、どこの家庭にもあります。私たちは排泄物のついたオムツを新聞紙に包んで捨てますが、臭気が強いものはやはりレジ袋に入れて廃棄します。訪問する家によっては、日中は寝たきりの利用者一人きり、介護者である家族は夜にならないと帰ってこないという所もあります。そのため、訪問時なるべく臭気が出るものはそのままにしておきたくないのが本音です。そのために、レジ袋を活用するのです。
また寝たきりの利用者のずれた体をベットの上の方に持ち上げる方法の一つとして、このレジ袋を活用することが出来るのを知っているでしょうか。
すでに、患者や利用者、そして介護者の身体に負担をかけないようにするためのスライディングシートというものがあるのですが、意外と高価だったりするのです。そこで代用するのがゴミ袋やレジ袋です。レジ袋の場合は、看護師の腕にはめて、摩擦による抵抗を軽減し滑りを良くすることで、患者の身体をベットの上の方にずらすことができるのです。
ゴミ袋は、もっと効果的に使用することが出来ます。ゴミ袋をわざわざ購入するわけではありません。どこのご家庭でも、市が指定するゴミ袋がありますね。それを活用するのです。まずゴミ袋の端を切り落とし筒状になるようにする。それをシーツと利用者の身体の間に引き込んで滑りやすくするのです。そうすれば、やはり利用者の身体の移動が楽になります。
またゴミ袋はとても万能で、ラバーシーツといった役割も担います。訪問看護師は、自宅で入浴できない場合、洗髪や陰洗、清拭などを行いますね。この時に身体の下にゴミ袋を引いてシーツを濡らすことを予防するためにも使用するのです。
出来れば厚手のゴミ袋がいいけれど、ない場合はどんなものでも使うことが出来ますので問題ありません。
・オムツの空袋を再利用する
訪問する利用者さんの中には自立している人も多いけれど、やはり寝たきりの人も多いです。そのためオムツは必需品なのです。自立している人でも、高齢のため夜間だけオムツを利用するという人もいます。また日中でも外出時はリハビリパンツをはくという人も。
そんなオムツを使用している人の家には、必ずオムツの空袋があります。このオムツの空袋は、とても丈夫で強い。そのため、この空袋をきれいに切って広げて、保清の時に身体の下に引いて使用することができるのです。なんでも活用できるものは使うのが基本であり、自宅にあるものは簡単に捨てられませんね。
・お湯が出ない!そんなときの清拭は?
訪問するお宅の中には、電気は使えるけれどガスがないという家もあります。それは経済的な理由ではなく、高齢になり料理もしなくなってしまったらガスレンジを外してしまったという家も少なくありません。また使っていたものの、壊れてしまったという場合。高齢者の場合、修理をしようにもどこに頼んだらいいのかわからない。また新しいものを買おうにも外出に行くこともままならず、結局そのままになってしまうということが少なくないのです。
しかし、そんな時こそ訪問看護師は臨機応変に対応しなくてはいけません。ガスが使えなくても、電子レンジがあれば温タオルは簡単に作ることが出来ますね。そのため、工夫をすれば清拭などをすることも難しくはないのです。
まとめ
訪問する利用者の家にあるものは、家庭により異なりますし、これがあれば楽なんだけどと思うこともあります。ただどんな時でも、限りある資源の中で臨機応変に対応できるような頭の柔らかさというのが訪問看護師には必要であると思います。
ここでは実際に訪問看護をしているときに使用するものを紹介してみました。是非参考にしてみてください。
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