患者急変を予測する!アセスメントの重要性

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#1626 2021/11/08UP
患者急変を予測する!アセスメントの重要性
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自宅で体調不良を訴え救急車で来院されたAさん。軽度の肺炎が見つかり、救急外来で処置を受けた後に内科病棟へ入院することになりました。そこでAさんの受け入れを担当した私が、Aさんの病状をどうアセスメントし対処したのか、数時間後にICUへ転棟することになった経緯についてお話しします。

患者急変を予測する!アセスメントの重要性

私は内科病棟の中堅看護師をしていました。日勤帯に緊急入院の受け入れ要請があり、救急外来で処置を受けている70代男性で軽度の肺炎と診断されたAさんの受け入れ準備をしていました。救急外来で書かれたカルテには、既往歴、主訴、救急外来で行われた処置、バイタルサインについて記載がありました。
・既往歴:高血圧、高脂血症、もともとADL自立 認知レベルはクリア
・主訴:いつもより元気がない、顔色不良、トイレにも動けない
・救急外来で行われた処置:採血の結果脱水がみられたので生理食塩液により補液2000ml、バルーンカテーテル挿入、抗生剤の投与
・体温37.0度、脈拍120回/分、血圧100/60mmHg、酸素飽和度94%(酸素投与なし)

このカルテ記載から私はADLが低下した状態で肺炎による呼吸状態に注意が必要な高齢男性を想像しました。すぐに入室できる部屋の準備ができていなかったため、看護師の詰め所の隣にあるリカバリー室を使用することになりました。私は一般的な入院に必要なベット周囲の準備に加えて酸素飽和度モニターと酸素投与ができるよう準備を行いました。準備ができAさんが救急外来の看護師とともに病棟へやってきました。ストレチャーに寝かされてやってきたAさんの第一印象は、私が想像した状態よりも悪そうでした。顔色は悪く、受け答えもできるような状態ではありません。一番気になったのが、カルテに記載の無かった酸素を投与されていたことです。救急外来の看護師より申し送りがあり、救急外来を出発する前に酸素飽和度の低下がみられたので酸素を2L/分を経鼻カニューレから投与開始し、酸素飽和度は94%であるとのことでした。状態があまり良くなさそうなAさんですが、ひとまず病棟に到着しバイタルチェックを行います。体温37.2度、脈拍135回/分、血圧90/60mmHg、酸素飽和度90~93%(酸素2L/分)バイタルサインに緊急性は無いものの、脈拍が多いことと、高血圧の既往がある方の血圧が90/60mmHgとやや低めなことが気になりました。ですがさらに私が異変を感じたのは、尿量です。救急外来で挿入されたバルーンカテーテルのバックの中には濃縮尿が100ml程度しか出ていません。ここで私はAさんに急変の可能性があることを察知し心電図モニターを装着し、病棟課長に報告をしました。

ここで私が何を察知しどうアセスメントしたのかを説明します。

・もともと高血圧であるAさんの血圧がやや低い
・脈拍が多い
・もともとADL、認知能力ともに問題の無いAさんの反応が乏しい
・尿量が100ml程度

Aさんに何が起きているのか想像ができるでしょうか。カルテに軽度の肺炎と記載があったことから、肺炎のことばかりに意識が行きがちですが、結論から言うとAさんは心不全です。そこにいち早く気づくことができるかどうかは、私たち看護師のアセスメント能力にかかってきます。私がAさんの異変に気付いたきっかけは尿量でした。救急外来で2000mlもの補液を行っているにも関わらず尿量が100mlというのは少なすぎます。採血結果で脱水がみられたとはいえ、尿量が少ない、頻脈、血圧低下が見られれば心不全を疑うべきでしょう。さらにAさんは2000mlという大量補液を行った後に酸素飽和度が低下し酸素投与を開始しています。典型的な心不全の兆候です。ここですぐに主治医へ報告するのももちろん正解ではありますが、私たち看護師にできることはまだまだたくさんあります。さらにこの時点で主治医へ報告しても、主治医が忙しかった場合には、酸素飽和度が上昇するまで酸素投与量を上げて様子を見てと言われかねません。主治医が看護師からの報告を受けてすぐに処置をしなければと思えるような報告の仕方を考えなければなりません。ここでも看護師のアセスメント能力が問われます。

Aさんに対して看護師ができる対処

・来院してから現在までの補液総量と尿量を確実に把握する
・呼吸状態悪化に対して酸素を経鼻カニューレからマスクに変更して酸素投与量を上げる
・心電図を装着してモニター管理を行う
・予測される心不全に対して、臥位から可能な範囲で上半身を起こし、呼吸状態や循環動態に変化が無いか確認する
・心不全でなかった場合に何が考えられるのかを予測する

ここで私は心不全の可能性を考えながら行動していましたが、心不全だと決めて対処することは非常に良くありません。あくまで医師の救急外来での診断は軽度の肺炎です。それは紛れもない事実です。しかしそれ以外の何かがAさんの状態を悪くしているのは確かですが、その何かは心不全以外にも考えられるはずです。
Aさんのケースで心不全以外に何が考えられるのか。私が予測していたのは敗血症です。
Aさんは肺に炎症が起きているのでウイルスもしくは細菌感染による肺炎が起きています。
これが細菌性肺炎であった場合、細菌が血液中に移行し敗血症に陥る可能性が考えられます。
敗血症であった場合にも血圧低下や頻脈、酸素飽和度の低下、尿量減少はみられる症状です。基本的な対処方法は同じですが、決定的に違うのが血圧低下と頻脈に対する対処方法です。心不全であれば上体を起こすことで心臓に戻る血液量が減少することで頻脈や呼吸苦が軽減しますが、敗血症であった場合にはショック状態による血圧低下を代償しようとして頻脈が起きているので、上体を起こすのは厳禁で下肢挙上をし、心臓へ少しでも多く血液を戻す必要があります。
なので心不全と予測して、臥位から上半身を起こす体勢にしたときに循環動態がどう変化するのか、血圧と脈拍がどう変化するのかをきちんと観察してから主治医へ報告する必要があります。
私は上記に挙げたようなできうる対処をすべて行いました。
上半身を可能な範囲で起こした結果は血圧、脈拍ともにあまり変化はありませんでした。しかしここまで対処しているうちにAさんの呼吸状態はみるみると悪化し病棟へ来てから30分程で酸素5L/分をマスクで投与し酸素飽和度93%前後を維持できる程度まで悪化していました。
主治医へ呼吸状態が悪化していること、尿量が少ないことを報告すると幸いにもすぐに診察に来てくれました。同時に私は病棟課長へも状況を報告すると、病棟課長は最悪のケースを考えてICUのベット調整をする準備を進めてくれていました。
主治医が診察し、出された指示は補液の追加投与と抗生剤の変更でした。主治医は心不全ではなく敗血症をまず考えたのです。
病棟課長も私も利尿剤を投与すると想定していたので初めは戸惑いましたが、主治医の指示通りに整理食塩液を追加で1000ml投与しました。するとみるみると脈拍が上昇し一時150~160回/分にまで上昇したのです。ここで主治医はようやく利尿剤の投与を決めました。
私は指示通り利尿剤を投与しましたが、呼吸状態はさらに悪くなり酸素10L/分をリザーバーマスクで投与し酸素飽和度90%維持できる状態でした。
急激に呼吸状態が悪くなったことで主治医がICUへの転棟を決め、病棟課長がICUへの調整を事前に行っていたこともあり、Aさんは私が担当してから2時間もたたない間にICUへと運ばれて行きました。その後はカルテでしか確認できませんでしたが、心エコー、レントゲン、採血などの結果から心不全と診断され、一時呼吸状態が危険ではありましたが、人工呼吸器を使用することなく回復されていました。

ここで私が言いたいのは主治医が心不全を見抜けなかったことや敗血症と考えて対処した結果、心不全が悪化したことではありません。結果的にAさんは無事に回復しています。なぜ回復できたかというと、主治医、看護師、病棟課長全員がおのおのの立場から状況をアセスメントし、何が最善かを考えて行動した結果、Aさんに対してスムーズにとられるべき処置が行えたからです。
看護師というのは主治医以上に患者さんの体の変化を目の当たりにしています。その変化をしっかりアセスメントし、適切な情報を適切なタイミングで主治医や上司に報告することで患者さんにとってより良い医療を提供することにつながります。今回のケースではAさんの尿量が少ないことに早い段階で気づき、心不全や敗血症などの急変リスクのある病態を予測して行動したこと、一般病棟では対応困難になることまで予測してICUとの連携も早い段階で行えたことが良い点だったと思います。
患者さんの些細な変化にも気を配り、アセスメントしていけると良いと思います。

まとめ

看護師というのは病気の診断はできませんが、異常の早期発見と急変の予測を行うことはできます。一般的に命に関わる急変の8時間前から些細な変化や自覚症状が起きていると言われています。急変は怖いものではなく、看護師のアセスメントによって未然に防いだり、急変の程度を軽減することができます。また予測することで取るべき対応の準備を行うこともできます。今回の症例はそれがよくわかるものだったと思います。看護師のアセスメントによって患者さんの命を救うことができます。日々アセスメント能力が向上できるよう意識して看護を行っていきたいですね。

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