透析患者さんの背部痛の訴えに対するアセスメント

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#1591 2021/10/04UP
透析患者さんの背部痛の訴えに対するアセスメント
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今回は、事例に基づいてアセスメントの説明を行っていきます。透析治療中に背部痛を訴えた患者さんに対して、どのように情報収集を行い、どのようにアセスメントを行い、どのように介入を行いその評価はどうだったかについて、深く解説をしていきます。

事例

事例対象の患者さんは、Yさん80歳女性です。
多発性嚢胞腎による慢性腎不全を患っています。10年程前から人工透析治療を行っています。
既往歴には、乳癌、高血圧があります。心臓疾患は特にありません。
自立度としては、歩行器を使用して歩行可能な程度です。自宅では、ほとんどベッド上で臥床して過ごしています。
介護としては、毎日ヘルパーさんに来てもらって日常生活援助と、週2日デイサービスに通っています。
内服薬は、血圧を下げる薬のみです。
時系列
透析前に、透析室に入室されたYさんは、いつもと変わらない様子であり、「体調はいいよ。変わりません。」という発言がありました。痛みの訴えも特になく、バイタルサインも安定していました。
しかし、透析開始30分経過後に、Yさんから背部痛を訴えがありました。
透析中は、除水により体内の血液量が減少して変化するため、心臓に負担がかかります。少なくなった血液量で身体に血液を回そうとするのです。そのため、既往歴に心臓疾患がなくても、心筋梗塞や心臓疾患を発症する可能性が高くなります。透析は手術と同じく、何が起こってもおかしくないと言われているため、透析中は細心の注意を払います。
また、Yさんは高齢者であるため、痛みに対して鈍感です。少しの症状の訴えも聞き逃さないことが、看護として大事なことです。
アセスメント
まず初めに、症状が背部痛であったため、アセスメントとして心筋梗塞の反跳痛を疑いました。看護として、透析中すぐに12誘導心電図を取りました。
結果として、心電図に心筋梗塞の症状は見られませんでした。医師にも報告をして確認をしてもらい、モニター心電図を付けながら透析を行うことになり、経過とバイタルサインを観察しました。
その次のアセスメントとして、背部痛がある部位を見せてもらいました。部位には、打撲痕や出血は見られませんでした。また、Yさんに最近背中をぶつけたことはあるか、聞きました。Yさんは特にないという反応であったため、次に何が心当たりがあることはないか伺いました。
そうしたら、前の日に寝違えてしまったという答えが返ってきました。アセスメントとして、今回は寝違えによる背部痛の可能性が高いと判断しました。医師にも報告をして、寝違えの可能性が高いため経過観察をすることとなりました。高齢者は、自力で寝返りを打てない方も多く、寝違えてしまう方も多いのです。
Yさんへの看護
Yさんと相談をして、湿布を貼付する看護を行いました。本人の希望で、背中をさする看護も行いました。背中をさすると、「少し良くなった気がするよ。」という発言がありました。
また、医師に追加で湿布を処方してもらい、家族との連絡ノートに、自宅で湿布を変えるようにお願いをしました。
アセスメントを行う際の注意点
アセスメントを行う際にはまず、最悪の事態を想定します。今回の場合は、Yさんが心筋梗塞であることが1番怖かったです。そのため、その可能性を1番に消したかったですし、もしそうなら早急な対応が必要であると思いました。結果、12誘導心電図も透析中のモニター心電図にも異常はなく、医師からは経過観察の指示が出ました。しかし、特に高齢者の場合は、心筋梗塞になりやすいです。
また、透析患者さんは血液を体外循環しているため、抗凝固剤を入れているとはいえ、少しの抗凝固剤の量の違いで血液が凝固してしまうリスクがあります。そのため、心筋梗塞を発症してしまう恐れがあるのです。
透析治療の怖さ
また、透析治療中は、本当に何が起こるか分からない程怖いです。血液を体外循環するということは、バイタルサインに異常が見られることも多いです。
今回は、Yさんは寝違えという症状でしたが、心筋梗塞の可能性は十分にありました。
透析中は、患者さんからの訴えを大事にするのはもちろんのこと、高齢者の方は自分で訴えをできない可能性も高いため、バイタルサインを適宜観察して、患者さんの顔色も伺い、対応していく必要があります。
透析治療の医師と看護師の役割
透析治療において、重要になってくるのは透析看護です。透析中は、医師は常駐していませんし、患者さんの変化に早急に気付ける可能性があるのは看護師だけなのです。1番身近にいる看護師が、いかに患者さんの膨大な情報から必要な情報収集を行い、その情報から自らの知識と技術を用いてアセスメントをすることが、役割となってきます。
看護師は、治療をすることはできません。しかし、患者さんの異変にいち早く気付いて対処できるのは、看護師しかいません。早急に異変に気付き、対応して医師に報告して判断を仰ぐことが、患者さんの命を守ることに繋がります。
透析看護におけるアセスメントとは
もちろん、透析看護はチームで行っています。患者さんに異変を感じたら、まずは多くのスタッフを呼ぶことが大切です。ゆっくりアセスメントをしていたら、間に合わないです。
そのために病気や治療の勉強は欠かせませんが、臨床で生かすことはまた違ってきます。新人の内は、異変を感じたらスタッフを呼んで、対応を仰ぎ、自分でも情報収集とアセスメントを行います。
また、先輩の情報収集とアセスメントを観察して、自分がしようと思っていたこととどこが違ったか、知ることも大事です。患者さんを守ることができる看護師の数は、多いに越したことはありません。ですので、患者さんを助けるのには的確な新人教育も大事になってくるのです。
透析看護師のアセスメント
透析看護というと、毎日ルーティンのように透析を回すだけというように思っている方も多いと思います。もちろん、クリニックによっては医師が常駐していて、すぐに対応できるようになっているかもしれません。
しかし、特に急性期病院や大きな病院の透析室では、高度なアセスメントを行う機会が圧倒的に多いです。人工透析を行っている方が手術のために入院される場合は、術前術後の観察や看護、アセスメントが重要になってきます。また、急性期病院では通院の患者さんも重症度が高い方が多いです。
対応の際の注意点
透析室は、患者さんのベッドの距離が近いです。そのため、アセスメントを冷静にできずにバタバタしてしまうと、他の患者さんが心配してしまいます。
その結果、他の患者さんの容態に異常が出ることも少なくありません。ですので、アセスメントをして対応をする時は、素早く落ち着いて、冷静に行うことがとても大事になってきます。
また、焦ってしまうと、他のスタッフにも伝染してしまう可能性があります。素早く行うことは大事ですが、落ち着いて冷静に行うことが1番大切です。
患者さんを守るためにアセスメントを行うスタッフ、ヘルプを行うスタッフ、他の患者さんの観察を行うスタッフなど、スタッフの役割もとても大事になってきます。チーム医療だからといって、1人の急変患者さんに全員がつくことはあってはなりません。

まとめ

アセスメントとは、まず最初に最悪の事態を想定して、最悪の事態の可能性を消すことが必要になってきます。また、最悪の事態に対する対応をできるだけ早くすることが必要になってきます。患者さんの一つの訴えや症状から、予想をして、必要な情報収集をして、アセスメントをして対応と看護をしていくことが大事になってくるのです。、あなたが訪問看護師として活躍できる日が来ることを祈っています。

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