エビデンスに基づいた看護を提供する上でアセスメントは欠かすことのできないものとなります。
この記事でアセスメントの必要性や実施する上でのコツを少しでもお伝えできればと思います。
これによって、皆様の看護観に何か新しいものが芽生えれば大変嬉しく思います。
日々看護を行なっていく上で「アセスメント」は決して避けることのできない項目かと思います。ですが、アセスメントを苦手とする看護学生さんはもちろん、看護師さんも多くいらっしゃるのが現実問題としてあります。
事実、わたしも看護学生の頃はもちろん、看護師になりたての頃はアセスメントが苦手で何度も悩んだ経験があります。
ですが、これからお話する出来事がきっかけで、アセスメントはもちろん、看護の捉え方が変わり、看護に愉しさを見出すことができるようになりました。これをご覧いただいた方々にも、私と同様に看護に愉しさややり甲斐を見出すことができましたら嬉しく思います。
私は看護師になって、2年目を迎えたころ何気なく看護学生の頃に勉強した参考書を見返していました。
看護学生の頃は試験の合格を目標にかかげ、ひたすら内容を暗記することに努力を費やしてました。そのせいか、なかなか勉強内容(とくに解剖生理学)を看護につなげる事ができていませんでした。
つまり、解剖生理学や疾患、看護をそれぞれ個々に勉強して、それらの繋がりまでは意識せずに勉強していました。
ですが、看護師として臨床経験を踏んだ後にもう一度、解剖生理学の知識を見直すと非常に興味深く、もう一度勉強してみようという気持ちになりました。
おそらくそのように思えたきっかけは、当時肝硬変の患者様を受け持っていたことにあります。
当時は肝硬変の患者様にどのような看護を提供すればいいのか、自分で考えることもなく、病棟のマニュアルやルーチンに沿って看護計画を立てていました。
つまり、よく言われる「個別性のない看護」が当たり前のように行われていました。
信じられないかもしれませんが、意外とこういった職場は各地にあるかと思います。
そこで、ふと私は自分の行ってる看護がどんな根拠に基づいて行っているのか疑問に思ったことがあります。また、自分の看護はこんなマニュアルに沿ったものでいいのかと不安にも思いました。
「肝硬変で、なぜ浮腫が起こるのか?」「肝硬変ではなぜタンパク質の制限が必要なのか?」「肝硬変で、なぜ黄疸が起こるのか?」「男性の場合、乳房が膨らむのはなぜか?」など、普段当たり前にしていたことをもう一度、解剖生理学から見つめ直そうと思い始めました。
私がまず初めに行ったのは、肝臓という臓器が人間にとってどのような役目を果たすのかを復習しました。
肝臓というのは、昔から「肝心な臓器」といわれることからこの名前がついてるくらいなので、様々な機能があります。
例えば、
①アルブミンを生成する
②アンモニアなどの有毒物を解毒して尿素に分解する
③ビリルビンを代謝する
④エストロゲンという女性ホルモンを不活化する
などがあります。(看護学生の頃は必死に勉強して覚えていたのですが、恥ずかしながらすっかり忘れていました。)
つぎに、これらの解剖生理学の知識が見えてくると、肝硬変という病気でどんな症状が出るのかが分かってきました。
例えば、
肝硬変は肝臓が機能しにくくなる→アルブミンの生成が低下する→膠質浸透圧(血管内に水を留めておく力)が低下する→血管外に水分が流出する→間質液が貯留する→浮腫や腹水が出現する
という流れです。
看護学生の頃は実際に疾患の症状を見ることも少なかったため、あまり上記のような考え方をしたことがなかったのですが、臨床で症状を間近でみることで、解剖生理学から疾患を考えるための大切さを実感する事ができました。
そして、症状のメカニズムがわかることで、その症状を改善するための医療や看護が自ずと視えてきます。つまり、エビデンスを持った看護を実践する事ができるのです。
例えば、
「浮腫が起こりやすいのはアルブミンが低下する事で低栄養状態に陥るためだ。それなら常にTPやアルブミン値を観察して、必要であれば医師にアルブミン製剤の点滴を検討してもらえるよう相談してみよう。」
とも考える事ができました。
この他にも、
「肝硬変の患者さん(とくに男性)で乳房が膨らみやすいのは、肝機能が低下することでエストロゲンが壊さない→乳房を増大させる作用を持つエストロゲンが体内に蓄積する→結果、男性でも乳房が増大する→ボディイメージの変容に関して看護介入をしてみよう」
とも思えました。
これによって、医師からも看護師として高く評価してもらう事ができ、対等に協同して働く事ができます。
現代でも「看護師は医師の指示にさえ従っていればいい」と考える看護師さんがいらっしゃいますが、私は決してそうではないと思います。現在、医師不足により看護師には以前以上にやらなければいけないことが増えています。
当然その中には、方法を誤れば患者様を危険な目に合わせてしまう処置などもあります。
看護師はそれらの処置を自分の判断で的確にこなしていかなければいけません。つまり、「患者様を守る」ためには確かな知識と技術が必要とされます。強いては「自分を守る」ためにも学習は必要となります。
看護をするためには、エビデンスが必要となりますが、そのためには的確なアセスメントが必要となることを記載させて頂きました。
前述した通り、アセスメントをするためにはまずは「解剖生理学」の知識が大変重要な役目を担っていると私は思います。
【正常を理解する→そして異常を理解する→最後に看護を見出す】
この流れがまさにアセスメントであるかと思います。
これが分かることで、もし患者様に症状に成り立ちを聞かれた際にも自信を持って答えることができ、信頼関係を構築することにつながります。
私は現在、看護学生を対象に、この重要性を早くに理解する事で看護に愉しさややり甲斐を持て頂けるよう講師活動をしております。
看護学生の1年生のうちから解剖生理学から看護を考える学習に取り組んでもらうと、去年まで高校生だった学生でも、患者さんに必要な看護をアセスメントすることができます。
また、早く看護師になって実践していきたいと非常に意欲的な面を見せてくれます。
正直に申しますと、私を学生の頃は、「看護師になることが憂鬱」に思っていました。ですが、アセスメントのコツを知ることでこんなにも感覚が変わるのです。
看護学校をすでに卒業した方や現在看護師として働いてる方であれば、看護学生以上に実際に疾患とも向き合われているので、間違いなく解剖生理学を学習し直すことで、看護に対する価値観が変わるかと思います。
なので、今現在アセスメントを苦手としてる方がいらっしゃれば、看護学生の頃に勉強した解剖生理学を是非見つめ直して頂ければと思います。
解剖生理学は範囲が広いため、急には難しいということであれば、ご自身が働かれている病棟に関する分野、これから働こうと思ってる病院の担当科目の分野のみでも構いません。
これを行うことで今後の看護人生が変化するかと思います。
今回の記事で看護の見方や取り組み方が変化し、少しでも皆様の看護人生がより豊かなものになることを願っております。
看護のチカラをより向上させて、現代の医療を共に支えていきましょう。
まとめ
今回の記事では、看護師として必要なアセスメントの意義とその方法のコツをお伝えさせて頂きました。
とくに重要なのが、アセスメントをする上で「解剖生理学」の理解は必要不可欠であるということです。
アセスメントの流れは【正常を理解する→そして異常を理解する→最後に看護を見出す】となります。ぜひ、これを意識してアセスメントを実践してみてほしいです。
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