看護アセスメントとはバイタルサインや検査データなどの情報だけではなく、患者さんの様子や訴え、家族さんからの話なども含めた総合的な情報を収集することを指します。
アセスメントを取るためには患者さんと信頼関係を築くことが必要不可欠であるほか、普段から患者さんの様子を観察したり継続して情報を収集することなどポイントを押さえて行うことが大切です。
1.看護アセスメントとは
看護師にとって、患者さんに対してアセスメントを取ることは非常に重要かつ、看護計画を立てたり日々の状態を観察する上で不可欠な看護過程の一つです。
そもそもアセスメントとは評価や査定のことを指している言葉なのですが、看護アセスメントの場合は情報収集のことを指しています。看護アセスメントには普段測定するバイタルサインや検査データだけではなく、患者さんの訴えや患者さんの家族からの話なども含まれます。
そして看護アセスメントを行うことでその後の看護診断や計画など、次の看護過程に進むことができるため、患者さんの全体像の把握や些細な変化を見逃さないためにも重要な意味を持った仕事と言えるのです。
そんな看護アセスメントを取るためにまず重要になってくるのが、患者さんとの信頼関係を築くことです。
アセスメントの中で体温や検査データ、客観的に看護師が見た患者さんの様子などは、初日からでもすぐに収集することができます。また継続的に収集することができるデータなので、患者さんと直接そこまで話をしなくても誰でも簡単に確認することが可能です。
ただ患者さんからの訴えに関しては、ある程度看護師のことを信用してもらわないと具体的なことや些細なことは教えてもらえません。患者さんからの訴えはその人の病気の状態を把握する上で非常に重要なデータであり、バイタルサインや検査データに問題がなかったとしても、本人の訴え次第では何らかの問題が浮上してくる可能性があります。
ただ患者さんも人間なので、ある程度信頼している看護師でなければ自分の状態を伝えにくい、伝えられないというケースは少なくありません。そうして重大なデータを収集し損ねた結果、思わぬトラブルに発展してしまうケースもあるのです。
このような点から、看護アセスメントを取る上で患者さんとの信頼関係を築くことは重要だと考えられています。
2.看護アセスメントを取るためのポイント
では実際に看護アセスメントを取るためのポイントは何かというと、ポイントとして以下の点が挙げられます。
・質問攻めをしない
・アセスメントは継続して収集するものであることを理解する
・普段から患者さんの様子を観察する
「質問攻めをしない」
看護アセスメントに慣れていない看護師がついついやってしまいがちなのが、患者さんに対して質問攻めをしてしまうことです。看護師としてはたくさんアセスメントを取って看護計画などに反映させたいと思い、情報を取得するためにとにかくたくさん質問してしまうことがあります。
ただ普段から信頼関係を築けていない患者さんだと質問攻めされてしまうと辟易してしまいますし、体調が優れない患者さんからすると苦痛でしかありません。
実際にとある病院で新人看護師のAさんが、担当の患者さんにアセスメントを取ろうとして、「体調はどうですか?」「どこか痛いところはありませんか?」「何か困っていることはありませんか?」と質問攻めを行ったことがあるそうです。最初は質問に答えてくれていた患者さんでしたが、あまりに質問が続くため「いい加減にしてくれ!」と怒ってしまったと言います。その後はAさんが声をかけても返答がなくなってしまい、アセスメントが取れない状態になってしまいました。
このようにある程度患者さんに対して質問をすることはいいのですが、あまりに質問の量が多かったり相手の都合を考えずに質問を続けてしまうと、信頼関係を損ねてしまいかねません。このため看護アセスメントを収集する場合は、どんな情報が欲しいのか事前にポイントをまとめてから手短に質問を済ませるようにします。
「アセスメントは継続して収集するものであることを理解する」
前述したように、看護アセスメントは体温や検査データなど毎日測定したり検査した結果を踏まえて分析する必要がありますし、患者さんの訴えはその日によって異なるため、1日だけではなく毎日継続してデータを収集することが必要です。
そのため無理に短期間でアセスメントを取る必要はなく、日々の変化などを踏まえて継続して収集していくことを理解しなければいけません。つまり患者さんの担当になったその日にたくさん情報を集める必要はなく、日々関わっていく中で少しずつ情報を取っていくという形でも問題ないのです。
また患者さんとの信頼関係を構築していくことで引き出せる情報量も増えていくので、まずは患者さんと気軽に話しができるようになることが優先だという意見もあります。
とある事例によると、中堅の看護師Bさんは、初めて担当する患者さんとはまず病気の話などは一切せず、世間話をしながら過ごしているそうです。患者さんの多くは最初は緊張しながら話をしているのですが、徐々にBさんを見かけたら軽い世間話をする程度にリラックスするようになっていました。
そしてBさんには質問をされる前に自分の体調の話をしたり、気になることを聞いてくるなど相談を持ち掛けることが多かったと言います。Bさんはそのことをアセスメントで取り上げるだけではなく医師にも相談し、結果として後日バイタルサインや検査データにも異常が見られるようになり、別の病気の可能性が見つかったそうです。
このようにアセスメントを継続して収集することで別の異常を早期発見することができるようになるため、あくまでも患者さんが退院するまでは継続して収集するものとして対応していくことが必要です。
「普段から患者さんの様子を観察する」
患者さんの普段の様子も、立派な看護アセスメントの一つです。
ただ患者さんの様子が普段と異なっているかどうかは、患者さんの様子を知っていなければ判断することができません。医師と違って看護師は毎日患者さんと接触することができる医療従事者なので、患者さんの様子は看護師しか取得できない貴重な情報となっています。
このため担当の患者さんの様子は普段から観察しておき、いつもと違うところがあればすぐに確認できるようにします。また家族の方が定期的に面会に来ている患者さんであれば、家族さんにも話を聞いて普段の様子と違うところがないかどうか確認してみるのもありです。患者さんによっては家族さんにだけ話していることもあるので、家族さんを通して患者さんを観察するクセをつけてみるのも重要なアセスメントのコツになっています。
例えばとある事例では、看護師Cさんの受け持ち患者さんの中に、Cさんという方がいました。この方はコミュニケーションを取ることが難しい方で、言葉で訴えることが難しかったそうです。そんな方が原因不明の発熱が続いてしまい、医師も看護師も一生懸命ケアしたものの、なかなか効果が出ませんでした。
そんな中、Cさんは患者さんの表情や仕草から腹部に何らかの症状が出ているのではないかと気づいたのです。Cさんから報告を受けた医師が検査を行ったところ、本当に腹部に病巣が見つかったと言います。
この事例は簡単に内容をまとめたものではありますが、Cさんが普段から患者さんの様子を観察していたからこそ、コミュニケーションが取れない患者さんの異常を発見することができたというものです。
患者さんの中にはうまく自分の症状を伝えられないケースも多いので、普段の様子を観察しておくことで患者さんの訴えに気づくことができる可能性が高まります。それこそ看護師でなければできないアセスメントの取り方なのです。
まとめ
患者さんからアセスメントを取ることは、患者さんの現状を把握するだけではなく、今後の課題や問題点を知る上でも重要なとっかかりの作業となります。
そのためアセスメントが上手く取れないと適切なケアができなくなったり、患者さんの変化を見逃して思わぬトラブルにつながってしまうリスクも考えられます。
実際にアセスメントを取るためのポイントは決して難しいものではないため、アセスメントを取らなければいけないという使命感で動くのではなく、その人のことを知りたいという純粋な気持ちで行動することが必要なのです。
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