【事例から学ぶ】看護師の専門性を活かすアセスメント!

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#1489 2021/06/26UP
【事例から学ぶ】看護師の専門性を活かすアセスメント!
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腹痛の訴えのある患者さんへのアセスメントについて、事例を通して考えてみましょう!看護師としての経験が浅い方は特に、アセスメントに自信が持てない事が多いのではないでしょうか?私もそうでした。でも、事例に触れる事で、少しずつ力をつけることが出来ます!

事例紹介:A氏、60歳代、男性。頭頸部癌の治療のため、入院下で放射線化学療法を実施中。治療の副作用で口腔粘膜炎が生じ、経口摂取困難となっていました。栄養摂取方法は主に経鼻経管栄養でした。
そんなA氏を担当していたある日、A氏から強い腹痛の訴えがありました。

こんな時、あなたならどうしますか?


私は当時、病棟看護師として入職後2年目でした。フィジカルアセスメントの方法については学校や就職後の研修について学んでいましたが、実際に強い腹痛を訴える患者さんと出会ったのは初めての経験でした。A氏から腹痛の訴えがあった際、私は焦りを感じました。なぜなら、経験が少なく、看護師としての知識や判断力に自信がなかったからです。

ひとまず私は、アセスメントをするために情報収集から行いました。

① 腹痛を訴えるA氏の表情や話し方から、まずはA氏は疼痛があるものの会話可能で意識レベル清明、冷汗もないことを把握しました。加えて、A氏の表情が普段よりも苦悶様表情となっていることにも気がつきました。
② 腹痛の程度や痛みの部位、種類(刺すように痛むのか、チクチク痛むのか、締め付けられるような感じなのか、グルグルと腸蠕動が亢進している感じなのかなど)、発症時期、周期性(痛みは繰り返しているか、軽減や増強はしているのか)、移動性(他の部位への移動や拡大はないか)、これまでに同様の経験があったかどうかを問診しました。A氏は痛みについて、「これまでこんなに痛くなったことはない」「お腹全体がギューっと締め付けられるみたい」「胸とか他のところは全く痛くないんだけど、経管栄養がはじまって30分くらいしてからおかしくなった」と話されました。
③ 問診後、腹部の視診を行いました。腫瘤や変色といった視覚上の異常は見当たりませんでした。
④ 視診後に、腹部に触れ、反跳痛の有無についても確認しました。
⑤ 最後に聴診し、腹部全体で腸蠕動音がかなり亢進していることに気づきました。

ここまでの情報を得て、あなたはどうアセスメントしましたか?

 

以下は、私が行ったアセスメントです。

① 意識レベル清明で会話可能、冷汗がないことから、緊急性のある腹痛ではないとひとまず判断しました。もしここでA氏の意識レベルが変化していたり、会話も難しく、冷汗がある状態であれば、命に危険が迫っていると判断し、まずバイタルサインの確認を行います。A氏を安楽な体位へすることも忘れずに行います。
例えば腹部大動脈が破裂し出血していた場合、急激な腹痛が襲ってきます。腹部内に大量出血しているため、血圧や脈拍が異常値となります。このような場合は、すぐに応援要請し、医師へ緊急の診察を依頼、処置の準備を行う必要があります。現在の意識レベルに異常が無くても、状態が急速に変化しする可能性もあることを考慮しながら、問診へ進みます。
② 腹部以外の痛みがないことから、心筋梗塞の放散痛である可能性を除外しました。腹部全体に締め付けられるような痛みがあることから、十二指腸潰瘍や胃潰瘍などの典型的な症状ではないと判断しました。
「経管栄養がはじまって30分くらいしてからおかしくなった」という情報から、経管栄養によって腸蠕動の過度な亢進が引き起こされているのではないか、と考えました。経鼻経管栄養が始まってから腹痛が生じる場合、開始後すぐに痛みが生じる場合もありますが、しばらく経ってから腹部異常をきたす場合もあるからです。このアセスメントを行った段階で、A氏の経管栄養を一時中断しました。
栄養を一時中断して良いかどうかの判断には、厳密な血糖コントロールを行っている患者であるかどうかという情報が必要です。A氏が血糖コントロールを行なっていないことは、受け持ち時の情報収集で把握していました。
また、栄養を一時中断することにより、A氏の1日のスケジュールに問題が生じないかどうかについても考慮しました。予定通りの栄養が投与できなくなった場合、栄養剤投与が深夜に及ぶ場合もありますが、A氏の場合は30分程度の中断であれば、スケジュールへの影響はありませんでした。
③ 今回のA氏の場合は、腹部の視診上、異常が認められませんでした。しかし、もし異常があった場合はどうしたら良いか、という事も考えながら視診を行う必要があります。腫瘤が認められた場合は、破裂の可能性も考え、次に行う触診を避けなければいけません。皮膚異常があれば、なんらかの感染によって腹痛が引き起こされている可能性も考えられます。
④ 反跳痛の確認は、A氏の疼痛状況をみながら、行える場合は行います。これで虫垂炎の可能性が除外できました。
⑤ 聴診を行ったことで、経管栄養によって過度な腸蠕動が引き起こされた可能性について、更なる情報を得ることができました。

A氏のアセスメントを行った私でしたが、若手であり自信がなかったことから、A氏の状態に関するアセスメントをすぐに先輩看護師に報告しました。すると、先輩看護師から他にアセスメントに用いるための情報についてのヒントをもらうことができました。
最近の便通や便性状(色調や硬さ)に異常はなかったか、排尿時の疼痛や尿性状にも異常がなかったのか、出血の可能性や腎臓・肝臓の異常を考えるために血液検査値は把握しているのか、精神状態(A氏の苦手な検査や治療が控えていないか、面会予定者に緊張していないか)はどうか、といった項目の情報もあった方がより良いアセスメントを行えると教えてもらうことができました。

上記の追加項目についても情報収集を行いました。腹痛で苦しんでいるA氏にとっては、度重なる問診は苦痛を増強させる可能性かあるため、カルテから得られる情報についてはカルテから得ることが大切です。追加項目については、全てカルテから得ることができたので、A氏への追加の問診は行いませんでした。カルテから、A氏は最近3日間便通がないこと、普段は2日に1回は排便かあるという情報を得ることができました。排尿に関しては特別記載がなかったのですが、血液検査値から、腎機能に異常がないことや、肝臓機能にも異常が無く、貧血状態でも無いことがわかりました。精神状態については、その日のA氏には毎日行われている放射線治療以外の予定がなく、今回の腹痛への関連性は考えにくいことがわかりました。

追加情報から、A氏は排便状況以外には異常がないため、腹痛の原因は、もともとの便秘に加え、経管栄養の刺激が過度な腸蠕動を引き起こしたことによると考えました。

看護師が行うアセスメントは、医師の診療の補助になります。患者さんの最も近くにいる看護師だからこそ、普段の患者さんの様子との違いに気づくことができます。また、異常が起こっていた時、1番最初に発見することも多いでしょう。度重なる診察は、患者さんにとって苦痛となるため、看護師が得た情報やそこから行ったアセスメントは、正確に情報共有しましょう。この時、必要な情報を要約し、簡潔に説明することで、患者さんをより早く安楽な状態にすることが可能になります!
また、医師への情報共有だけでなく、看護師同士や他職種への情報共有も大切です。あなたのアセスメントの根拠となった情報も伝えることで、他の人がA氏と関わった際に、判断の手助けとなります。疼痛は主観的な情報であるため、対応する人によって評価・アセスメントにバラつきが出ないようにすることも、質の高い医療を提供する上で大切なこととなります。

まとめ

腹痛の訴えがあった時は、さまざまな可能性が考えられます。アセスメントでは、患者さんの命や健康を守るために、あらゆる可能性について考える必要があります。迷った時や困った時は、周りの同僚などに相談しましょう!色んなアセスメントのヒントをもらえると思います。みなさんの看護師生活に少しでもお役に立てれば幸いです。

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