人工呼吸器装着小児患者の急変時アセスメント?SPO2低下事例?

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#1421 2021/04/19UP
人工呼吸器装着小児患者の急変時アセスメント?SPO2低下事例?
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小児病棟で働いた経験のある看護師さんなら誰しも通るSPO2低下事例。
今回は私の病棟での実体験を下に、どのようなアセスメントをし、看護介入し、その後どうなったかを共有したいと思います。少しでも実践の役にたてればとても嬉しいです。

それでは事例について紹介します。
ご覧の皆様も、シチュエーションを想像しながら、自分だったらどうするか?という視点で読み進めていただけると嬉しいです。

ショートステイ利用で入院してきたAくん2才。
気管切開をしていて人工呼吸器管理をしていました。SPO2はルームエアーで98%
言葉は話せず、目線は合います。

ある日の午後、Aくんの部屋からSPO2低下アラームが鳴り駆けつけます。
病室に駆けつけたときにはモニターには
SPO2:72%
心拍:150回/分
人工呼吸器には呼吸器高圧アラームがなっています。
顔色不良のAくんがいました。
こんな場面に遭遇したら、どうしますか?

 

実際の対応を見ていきましょう。

今回のアセスメントのポイント・コツはDOPEです。DOPEとは人工呼吸器患者の急変時に用いられるものでトラブル対策のアルゴリズムと言われています。
D:Displacement (チューブ)位置異常
O:Obstruction (チューブ等の気道)閉塞
P:Pneumothorax (緊張性)気胸
E:Equipment failure 装置の異常
これらを疑い、アセスメント・介入していきます。

それでは事例と一緒に進めていきます。

病室について、このような状況であったらまず人を呼び、すぐに用手換気に切り替えます。
絶対にその場から離れてはいけません。呼吸器装着患者さんはマイアンビューバックをベッドサイドに持っていると思うので、すぐに用手換気に切り替えます。
このとき酸素もMAX10L?流しながら加圧します。(心疾患をもつお子さんでも急変時は交流量の酸素を流して対応します。またアンビューバックは必ず患者さんの規格に合ったサイズがありますので対応を間違えない事が大切です)
用手換気ができ、SPO2が改善すればD:位置異常とO:閉塞には問題がないことになります。
しかしAくんSPO2は80%までしか上がりませんでした。(心の声:ヤバイ・・・なんでだ?酸素10Lも流してるのに・・・)
胸の上がりもなんだか悪い・・・
つまり、どこに問題がありそうですか?どう対応しますか?

次に行うことはD:位置異常の確認です。

確認方法としては①気管チューブの位置を確認します。(気管切開孔にちゃんとチューブが入っているか?抜けかけているのか、完全に抜けているのか?)カニューレホルダーを外して確認します。
同時進行で②胸郭の動きを見ます。(エアーは入るか?自発呼吸はあるか?規則的か?)そして③呼吸音を聴取します。(エアーは充分入るか?痰がつまってないか?両肺の音に左右差はないか?)
というポイントを絞って見ていきます。文章にするとイメージできないかもしれませんが、この間は数秒単位のレベルでアセスメントしていきます。アセスメントに時間をかければかけるほど患者さんは悪くなっていくし、苦しいままです。

Aくんの場合は、アンビューバックが抵抗なく加圧できたので用手喚起ができるということはカニューレは開通していて痰詰まりではないなとアセスメントをしました。
そして、いざカニューレバンドを外して見てみると・・・

(カニューレが抜けている・・・!!!)
すぐに再挿入し(このときには応援の医師が駆けつけてくれていたので、医師の手技によりカニューレの再挿入が施されました。)
アンビューバッグで再加圧をしたところみるみるSPO2は改善しAくんの普段のSPO2:98%まで戻ることができました。
その後、Aくんの使用していた呼吸器を再装着したところ、SPO2低下することなくAくんは呼吸を維持し、いつもの様子に戻ることができました。
ここでもし、呼吸器に載せ換えた途端に再びSPO2が低下するようなことがあれば、E:機器異常を疑わなければなりません。
機器異常を疑う場合は再度用手換気に切り替えて、呼吸器回路を全てチェックして異常を確認する、という流れになります。
実際に呼吸器の誤作動によるSPO2低下事例はまだ経験した事がありません。先輩看護師も未経験だと言っていたのでかなりレアかもしれません。
まれにヒヤリハット
また、もし用手換気をしてもアンビューバックが押しにくかったり、吸引を試みても吸引チューブが挿入長まで入りにくいという事があればOカニューレ閉塞を疑わなければなりません。閉塞したら、カニューレを換えるしかありませんので早急に対応します。
ちなみにカニューレを挿入しているお子さんは、同じカニューレの予備をベッドサイドに必ず用意しておきます。気管切開したてのお子さんはもうワンサイズ小さなカニューレを持っていることも多いです。この辺は施設基準によるところが多いかもしれません。
カニューレ再挿入後は、胸部レントゲンを撮影し、誤挿管をチェックし無事位置確認ができました。
今回の事例のAくんは、カニューレとカニューレホルダーと首の間にYガーゼを挟めていたので、カニューレが抜けていることにぱっと見で気がつけませんでした。(気切しているお子さんは大体ガーゼ挟みます。肉芽予防や浸出液を清潔にする目的など)

とてもドキドキひやりとした経験でしたが、日頃からアセスメントをする視点を勉強しておくと、いざというときにとても役に立ちます。実践を重ねるほどアセスメント能力は磨かれていくというのは事実としてあると思いますが、やはり日頃の勉強によって、少しでも自分の中で不安要素を減らしておくことが大切だと思っています。
今回の事例ではDOPEが役に立ちました。やはり焦っているときには、誰がどうやっても同じようにアセスメントできるツール、知識を身につけておく重要性を感じました。

最後にもう一度DOPEと内容の確認をしていきたいと思います。
D:Displacement (チューブ)位置異常
・気管チューブの位置の確認 抜けかけているのか、完全に抜けているのか
・胸郭の上がりの確認 左右差はないか
・カニューレホルダーの緩み・外れはないか
・呼吸音の聴取 肺野による差はないか エアいりはどうか
O:Obstruction (チューブ等の気道)閉塞
・胸郭の左右差はないか
・吸引をする 吸引チューブは通るか 分泌物が吸引されるか 性状はどうか
P:Pneumothorax (緊張性)気胸
・胸郭の上がりを確認
・呼吸音の聴取
・気管変異
・皮下気腫
・胸部の打診
E:Equipment failure 装置の異常
・呼吸器の電源確認
・呼吸器回路の確認 緩み・外れ・故障・リーク・屈曲はないか
・ウォータートラップの外れ・緩みはないか

今回のケースのように、患者さんの急変時には普段1番近くで見ている看護師のアセスメント能力が本当に重要になります。
患者さんの異変にいち早く気付いて介入しドクターへの連携をスムーズに行えるよう、そして自信を持ってアセスメントできるように、患者さんとその場面に適した看護ができるようにして行けると良いかなと思います。
私の経験が、少しでもお役に立てると嬉しいです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

まとめ

・急変時対応は絶対にその場を離れずに応援を呼びましょう。
・小児患者における人工呼吸器管理には、気道確保、挿管チューブ、換気様式などに特徴があり、小児の特徴に適したアセスメントと介入が必要です。
・人工呼吸器患者の急変にはDOPEを用いて原因検索しましょう。
・看護師の日頃のアセスメント能力が本当に重要です。

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