看護記録に求められること~フォカスチャ―ティング記録を例に~

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#1323 2021/01/14UP
看護記録に求められること~フォカスチャ―ティング記録を例に~
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看護記録はただの記録ではなく、根拠に基づき記載され次の看護師もしくはチーム医療を担うものに共有されるべきものでありますが記録の種類によって書くべきポイントが変化していきます。今回はフォーカスチャ―ティング記録を例に紹介したいと思います。

はじめに看護記録にはいくつかの書き方がありますが、その中でも有名な書き方がSOAPです、これは患者に起きている事象を客観的情報、主観的情報にわけて最後に統合しアセスメントとして記載する方法です。それとは異なるFOCUSチャ―ティングは、今起きている目の前の事象に注目しそれに対してのアセスメントなどを行っていきます。では紹介していきたいと思います。

FOCUSチャ―ティングはF(取り上げたい事象)、D(Fをサポートするデータ、情報、プラン)、A(事象に対するアクション)、R(リアクション、患者の反応)などを記載していきます。この方法はソープと異なり、患者の相対的なアセスメントが欠如してしまうというデメリットがあります。一方で、患者の今目の前で起きている事象に対してすぐに適切な看護につながるとされています。ではここで簡単に実際の記録を紹介しながら深く紹介したいと思います。まずは、事例として発熱があり解熱剤を使用する患者の記録です。

F 発熱あり
D先日より微熱で経過しているが、熱上昇あり。
 倦怠感や頭痛、悪寒などの症状ないが体熱感強い。
A 1.頭部クーリング施行する。
 2.約束指示よりロキソプロフェン60 1T内服してもらう。
R30分後に解熱し「体が楽になった。」と笑顔で話す。


フォーカスチャ―ティングの場合にはこういった表記で記載します。
しかしここで気付いたように、患者の現在の状態に対して必要なアセスメントを即座に行うことが出来 ますが、すごく大切な情報を見失いがちになります。新人や学生などはこの記録を好みますが私は恐怖を感じています。
それは全体的なアセスメントがないままに進んでしまうからです。私たち看護師は薬剤を使用するにしても最終的な実施者として責任を負っているからです。

例えばこの発熱の原因が肺炎などであればこの処置は正しいものになりますが万が一インフルエンザなどの診断がついており、病名を無視して投与する事になった場合には重症化する恐れがあります。またこの情報の中には発熱しか注目されておらず全身状態の記載がありません。

例えば、食事摂取量や水分摂取量、血液検査データもないです。またバイタルサインズの表記もないために新人で看護の視点が未熟なうちは間違った処置施行する恐れがあります。では実際に私が体験したこの記録によるインシデントを紹介したいと思います。
同じく症状は発熱の患者さんです。数日前より倦怠感があり、肺炎の疑いで入院となりました。入院当初から発熱はなく経過しておりその日は新人が担当し私が教育担当としてついていました。私がいない間に発熱があり新人看護師は約束指示を使用して解熱剤を使用しましたが、その数十分後にAさんはBP50台となりショック状態となりました。一命を取り留めましたがその際の記録を紹介します。

F薬剤使用
D倦怠感あり、発熱見られている。
A約束指示よりアセリオ1000mg 使用する。


これが残されていた記録です。後のインシデント発生後の振り返りでいくつか新人へ質問しました。まずはこの人はなぜ入院して、発熱があったのか。なぜショック状態となったのか。を確認しました。
まずは考えたいのが発熱により薬剤を使用するのは適切な行為ですが、全身状態はどうであったのかです。この患者は降圧剤を飲んでおり、絶食も続いていました。日常の血圧は100代でコントロールしており、新人看護師は内服していることを知りませんでした。
アセリオを使用した後は発汗多量となり循環体液量が減少したために血圧が急降下しショックになったと考えられます。
医師の指示にも問題がありましたが、体重も40キロ前後の痩せた老人にアセトアミノフェンを1袋もDIVすると薬剤が多すぎると指摘もありました。
既往歴には肝不全による肝機能障害も挙げられており薬物代謝も普通の人に比べて時間を要する状態でもありました。

総合的に考えて今回の薬物の使用は過剰投与になると考えられます。医師の指示も悪いですが、最終的には点滴を施行した看護師に責任が圧し掛かります。この記録からも分かるようにフォーカスチャ―ティングでは前日の記録を読んでもしっかりと自分の頭の中で病名や患者の全体像を考えアセスメントしなければ適切な看護にはつなげることが出来ません。次に実習生の誤解を招く記録を紹介したいと思います。この記録を読んだ際に私たちは驚きを隠せませんでした。

F脱力あり
D訪室時、左上肢に脱力あり掌握できず。呼びかけに対しても発語乏しい。バイタルは変化なし。
A経過観察とする

この記録を読んで何に驚いたかわかりますか。脱力という症状がありなぜ経過観察となったのかという事です。脱力という症状があれば看護師は脳梗塞や神経疾患を疑います。緊急性の高いものとしては脳出血や脳梗塞ですぐに処置をしなければならないと考えます。この記録の患者は、数年前に脳梗塞や脳出血などを発症したこともあり発語は乏しく、脱力もある患者でした。そのためこの記録の書き方では誤解を招きます。看護は一人で行うのではなくチームで行う物です。そのため複数の職種も関わりますが全員が全員、患者の病名を把握しているとも限りません。そのため記録の書き方一つで処置を間違ってしまったりインシデントにつながるという事もあり大変危険です。では正しく記録を書き直すとどうなるか一番目の事例から紹介します

一番目は
F 熱上昇あり
D体熱感強く熱上昇あり。BP100代で降圧薬内服中で朝より絶食。 JCS0
Aアセリオ1000mg DIV指示だが、るい痩、降圧薬内服中、肝機能低下あるため500mgを30分かけてDIV
などと記載すれば全身状態が最低限伝えることが出来、次の勤務帯の看護師の判断材料の一つにもなります。また医師へのメッセージとして考慮してもらえるものとなっています。
では次に看護学生の記録についてみていきたいと思います。
F左上肢に持続する脱力あり
D脳梗塞、脳出血の既往あり。脱力は持続しているがバイタルサインズの著変や、瞳孔異常なく経過する。呼びかけに対して反応乏しいが痛み刺激に反応しJCS100 睫毛反射あり

といったように記載するだけで読み手は緊急性のない脱力であると判断することが出来ます。
ここで判断したいこととしては、脳梗塞や出血の既往が悪化していないかどうかです。患者自身が症状を説明できないのであれば私たち看護師は他覚的に異常がないか等を判断する必要があります。そこで判断材料としては、バイタルサインズや反射などが一つの指標となります。それらを観察した結果がどうであったのかを私たちは観察し記録に残すことが必要になります。
最後に大切なこととしてお伝えしまうが、看護記録において大切なことは記録で何を伝えるかです。簡単に言えば次に勤務してくる看護師へのバトンでもあると言えます。だからこそ必要な情報を洩れることなく簡潔に、統一されたスケールなどを使用し観察していき記載していく必要があると私は考えています。

まとめ

看護記録は、看護師、多職種への大事なバトンです。ただ患者の状態を記載する日記ではありません。そこには医学知識や看護知識に基き統一された専門用語やスケールを使用して共有される情報を患者の状態と絡めて記載する必要があります。そして誰が行っても同等のレベルの看護が提供できることが求められます。この記録の紹介で少しでもその役に立てればと思っております。

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