最近は不景気ということもあり、社会人から看護師へ転職しようと思う方がとても多くなっています。私自身も学校に入ったのが32歳の時でした。新卒から10年以上たってから学校に入り、免許を取得するまでに心得ておきたいことや、大変だったことを体験からお話ししていきたいと思います。
1・看護師を目指したきっかけ
・私は30歳になるまで小売業界で正社員として働いていましたが、休みの少ない環境に嫌気がさし、転職するなら30歳前にと退職しました。その後は、人と触れ合うことが好きであったこともあり、介護士として施設で働くようになりました。介護の仕事は高齢者のお世話をさせていただく仕事ですが、様々な病気を抱えていらっしゃる方が多く、介護士の勉強しかしてない私には、わからないことが多くありました。高齢者のお世話をしているのに、体のことをわかっていないなんておかしいと考えるようになり、それなら看護師になってしまおうと看護学校を受験する決心をしたのです。
2.看護学校入学まで
私は恥ずかしながら、高校も偏差値40位の学校の卒業者であり、高卒で働いていたため、今までの人生で勉強などしたことがほぼありませんでした。そのため学校は中卒程度の学力で入れる准看護師課程のある学校を選び、准看護師から看護師を目指すことにしたのです。多くの方は看護学校入学に特化した予備校に通うかたが多くいましたが、金銭的な問題や仕事していたこともあり自己学習で目指しました。入学時の科目は国語、英語、社会でした。中学の勉強からおさらいできる参考書を購入し一から勉強し直し、約半年の勉強期間で無事合格することができました。職場の方々もキャリアアップのためならと祝福してくださり、もちろん親も安定した看護師になるならと大喜びでした。しかしほんとうに大変なのは入学してからだったのです。
3.准看護師課程入学
入学したのは、32歳の時でした、准看護師課程は2年間で午前は病院で看護助手として働き、午後から学校に通うというものでした。看護助手の仕事は最低賃金で月に約5万から6万程度のお小遣いかせぎにしかなりません。私は看護師になるためと親にお願いし、学校に通う期間は扶養に入れてもらい学業に専念することにしました。そしてまず最初に社会経験を経て学校に入学した私に壁となったのは、同級生たちとの年齢差でした。前職では高校生やパートの女性を雇い店舗を運営していく仕事だったため、どうしても上から目線になってしまいうまくコミュニケーションをとることができませんでした。さらにこの業界は女性社会です。学校の教員や職場の先輩もほぼ女性で、今までとまったく立場が逆になってしまったのです。しかしそのままではいけないとそれを打開した方法はプライドを捨てることでした。今までの会社での地位や立場はどこにもありません。自分は32歳の社会人経験者ではなく、皆と同じなのだと考え方を変えたのです。それからは同級生や職場の方たちともコミュニケーションが以前よりも円滑に進むようになりました。
4.実習
学校生活で最初に壁となったのは実習でした、学校に入る前から実習は寝れない・大変だと話しを聞くことが多くありました。自己学習やレポートの多さは私にとってはそれほど苦ではなかったのですが、実習先の教員や指導者との関係がネックになったのです。原因となったのはやはり若い子たちと比べた時の、覚えの悪さや初々しさの欠如だったかなと思います。実習に行くと様々なことで指導が入るのですが、若い子たちは教えられたことをすんなりと吸収しますが、それに比べると自分はものにするのが遅く怒られることが多くありました。また、どうしても社会人経験者とみられることが多いので、できて当たり前と思われることが多くあり、若い子と比べて風当たりが強いことが多くありました。しかしそんなことで負けるかと自分に鞭を打って周りの子よりも倍の努力をしてなんとか乗り越えることができました。また、同じグループの子たちの中でもそんな私の状況を理解してくれる子がおり、一緒に至らない部分を補いながら励まし合っていくことができ、それが実習を続けれたことに繋がったと思います。実習のメンバーとの相性は本当に大事です。メンバーはずっと同じではないので、中には相性が悪く足を引っ張りあうこともあります。実習では多量のレポートや学習の多さから寝不足になったり、怒られて人間性を否定されたりで、本当にボロボロになります。そのためメンバーともちょっとしたことで言い合いになったりすることもあるし、逆に仲間意識が芽生えることもあるし、本当に素の自分が露呈してしまうからこそ仲間との関係が実習を乗り越える最重要ポイントなのです。
5.准看護師免許取得に向けて
実習が終わると最後に待ち受けているのは准看護師試験です。国家資格の看護師試験に比べれば難易度は落ちますが、社会人組からすればこれに落ちれば食っていけないわけですからそれはもう必死で勉強しました。このころになると、看護学校受験まで勉強したことのなかった私でも自分の勉強方法がある程度確立できてきていたので、他のクラスメイトとともに図書室で勉強したりして無事合格することができました。
6.就職と再入学
そして私は看護助手として働いていた病院にそのまま准看護師として就職し、それと同時に看護師免許を取得するために定時制の看護学校に3年間通うことになったのです。この3年間は本当に辛かったです。朝の7時半に出勤し17時半に終わり、学校へ向かい、18時から21時まで授業を受けるという生活を続けたのですから本当に大変でした。仕事の方はやはり他の新卒の子と比べると容量の悪さが露呈し成長が遅く、プリセプターさんにもたくさん迷惑をかけましたが、幸い暖かく見守って下さり年内には夜勤もこなすまでになっていました。私が配属になったのは消化器内科や脳外科の急性期の混合病棟でした。最初は清拭やコール対応に始まり、採血やルートキープ、各種検査の介助など覚えることは大量にありました。最初は上手くできないことやミスも多く、先輩や先生にも怒られることが多々ありました。今思えば患者様にも本当に迷惑をかけたと思います。そんななか励みになったエピソードがありました。就職して三か月ほどたったときに、ある目がみえない寝たきりの患者様の採血をしていた時に「あんた最初はおぼつかなかったけど本当に上手になったね」と褒めてくださったのです。普段あまり発声がなく反応のない方だったので、びっくりしたのと同時に、涙がでるほど嬉しかったのを覚えています。
2年間そんな生活を続けなんとか乗り切り、最後の1年間は実習と国家試験です。実習は2年間の実務経験もあり知識も経験もあったためか、あまり辛かった記憶はなく、レポートもPCでの作業だったため楽しく過ごすことができました。しかも実務経験を経てからの他の病院での実習だったため理解度や吸収できることが多くあり本当に勉強になったと思います。
7.国家試験
最後はこの5年間の集大成となる国家試験です。全国で上位90%が合格できるという難関です。准看護師と看護師では初任給が約5万円近く変わり、現役で受からないと合格率が劇的に落ちるため絶対に落ちることはできない試験でした。幸い勉強期間として試験一か月前から職場でお休みを頂くことができた為、集中して勉強することができました。集中力が途切れないように、午前中は家で、午後は図書室でなどと環境を変えるよう工夫して1日あたり約8~10時間は勉強していたと思います。そうして試験当日もベストな状態で臨むことができ、なんとか無事合格し看護師免許を取得することができました。しかし中には私と同じような境遇だったのに落ちてしまった同級生もおり、素直に喜べなかった現実がありました。(その方は次の年にも受験し無事合格したそうです)
まとめ
いかがでしたでしょうか?人にもよりますが、ある程度年齢を重ねてからの看護師免許の取得は人一倍努力しないと乗り越えられないと考えていていいと思います。ただ、どんなことでもそうですが、結局は人対人です。勉強も実習も仕事も、周りの環境や人間関係で大きく変わります。最初は上手くいかなくても自分が変われば周りも変わりますので自分次第で乗り越えられると思います。これから看護学校を目指そうと思われる方がいれば参考になればと思います。
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