看護アセスメントは情報統合力と危機回避がポイント

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#1229 2020/10/13UP
看護アセスメントは情報統合力と危機回避がポイント
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看護のアセスメントについて、難しいと感じる学生さんや、日々の業務の中で「アセスメントが苦手」「看護師のアセスメントって何をどう考えていいのだろう」などと思っている看護師の方もいるのではないかと思います。
実は、看護師のアセスメントは情報統合力と危機回避がポイントなのです。
今回はアセスメントについて、そのコツや考え方などを看護記録を事例として交えながらお伝えします。

<看護においてのアセスメントの意義と概要>

アセスメントを直訳すると「評価・査定」という言葉だということは、皆さんもよくご存じだと思います。
しかしそれを業務に当てはめると、具体的にどのようなものがアセスメントというものなのか分かりにくいと思います。
看護におけるアセスメントとは「医療現場における危機を回避するための看護師の考え方」を指すのだと思います。
看護業務をしている間の思考回路こそ、看護師のアセスメント全てだといっても過言ではないと思います。

<具体的な事例>

では、アセスメントが「危機回避をするため」ということが、具体的にはどういうことなのかご説明します。

例えば、患者さんが「痛い」と訴えたとします。
その情報だけでは私たちは何をすべきか、どう苦痛を取る介入をすべきかわかりません。
そのため、私たち看護師は客観的情報・主観的情報を集め、統合し、起こりうるリスクつまり危機を「アセスメント」し、
その危機を回避するために行動するのです。

今回の訴えを聞いた場合、看護学生・看護師の皆さんは、その患者さんが訴えた「痛い」という主訴の背景を自然に探ると思います。
その時点で、実はアセスメントが始まっています。
さらに大事なことは、適切な情報収集力とその統合力です。
その力が身に付くことで、アセスメントの質が上がります。

では、ここまで看護師のアセスメントは危機回避のためであり、質を上げるためには情報収集と統合力が大事だとお伝えしましたが、
次からはこれらを実際に意識したアセスメント方法について具体例をあげてお伝えしていきたいと思います。

今回は「腹痛」の訴えがあった患者さんの痛みのアセスメントの例をあげます。
分かりやすいようにSOAP式の記録で書きます。

S:お腹が痛いです。追加の痛み止めを下さい。少し吐き気もします。

寝ようと思ったけど、眠れなくて辛いです。痛みは(NRS)6から7くらいかな。
眠れないと思えば余計に不安になって・・・。どうしたら眠れますかね・・・。
(アセリオ使用後)効果ありました。(NRS)3になりました。お腹の張りも少し良い気がします。

O:23時、上記ナースコールあり。やや苦悶顔貌あり。

胃癌・腹膜播種によるイレウスでイレウス管留置〇日目。
明日の午前レントゲン撮影後、昼より流動食を検討中。
癌性疼痛に対し、9時と21時にオキシコンチン(麻)〇mg使用中。
22:00に頓用指示にあるオキノーム(麻)〇mgを使用したが、1時間後に疼痛再燃し眠れないとのことで再度コールあり。
22:00はNRS 6、その後NRS 3~4程度まで落ち着いたが、 
23時はNRS 6~7とやや強くなったとのこと。
オキノームは2時間空ける指示なので、アセリオを頓用の鎮痛剤として使用した。
アセリオ投与後15分でNRS 3に疼痛軽減された。
超蠕動音弱め、イレウス管からのドレナージは〇ml/Hと廃液ペース著変なし。
癌性腹水による腹満感あり。
その他、バイタルサインは著変なし(熱型など別途記録する場合記録不要)。
不安も強く、アセリオを投与しつつ、ベッドサイドで下肢の温罨法とマッサージを行った。
0時にオキノームを内服して再入眠された。
その後3時に再度NRS6~7まで増強し、オキノームを内服した。
嘔気に対して制吐剤提案したが希望されず。

A:ベースのオキシコンチンの効果がやや乏しいか。

オキノームの効果は1時間程度の程度はあったようだが、眠れないほどに疼痛が再燃してしまっているよう。
アセリオは播種や腹水による腹満感にも効果がある可能性あり。
不安も強く、夜間の疼痛の感受性が高まっている可能性あり。
身体の苦痛症状が増悪した際、メンタル面への介入も必要。
疼痛や不安により不眠に繋がっている可能性が高く、医師や緩和ケアチームに相談してもよさそう。
イレウス増悪はみられていないが、食出しした場合、イレウス再燃に十分注意して観察が必要である。
嘔気は麻薬によるものか。イレウス症状とも鑑別しながら経過を追う必要あり。

P:オピオイドや非オピオイドを定期的に使用し苦痛を軽減していく

疼痛コントロールや不眠について医師と緩和ケアチームに相談していく
メンタルケア面・安楽面への介入
イレウス再燃に注意

上記がアセスメントの一例ですが、実際の記録はもっと簡単で良いです。
(長いとカルテが読みにくいので短く端的な方がいいです。今回は患者さんの設定が分かるように詳細に書きました。)
上記の具体例の内容を看護師の思考回路に照らし合わせて簡単にまとめると、このような形になります。

①「痛い」という訴えを聞く
②痛みが起こりうる情報収集をする
③使用中の薬剤や疾患、身体症状について特徴を考える
④薬剤の効果や症状増悪の有無を考える
⑤その状況でどうなったら問題なのか?という危機を予想する
⑥危機回避をするためには何ができるかを考える
⑦介入内容を実行する
⑧その介入の効果を評価する

といった考え方をひたすら繰り返していくことが看護のアセスメントだと思います。
痛いという訴えから、色々な情報を集め、統合し、起こりうるリスクの危機を回避するための介入を検討していることが事例から分かるかと思います。
①~⑧はアセスメントの中に実際の行動(看護記録で言うとP部分の「プラン」)も含まれていますが、
それも含めての看護アセスメントと言えます。
なぜなら、その介入したこと自体のアセスメントも行うからです。
つまり、看護師の考え方と行動の一連がすべてアセスメントなのです。

一つ一つの考え方と行動にアセスメントがベースとしてあり、その質を上げることで患者さんの危機が回避されます。
この考え方は初めは日常では行わないことなので、難しいと感じるかもしれませんが、看護アセスメントとは何なのか、
その意義と概要を理解して情報を集められるかどうかで、全然行動力が変わってきます。

<よりアセスメントの質を高めたい方へ>

より看護アセスメントの質を高めたい、と考える方は、「医療・看護の知識」を蓄積することでアセスメント力が高まります。
さらに、看護記録が早くなったり、医師への報告が上手くなったりすることに繋がります。
また、アセスメントといっても分野が様々で、「身体(フィジカル)について」「薬剤について」「メンタル面について」など、色々あります。
おそらく、新人看護師さんや新しい分野へ部署異動したばかりの方がつまずくのは、「フィジカルアセスメント」や「薬剤」なのだと思います。
ですので、その部分を自己学習し知識として補完しつつ、アセスメント力を高めるのが良いのだと思います。

<看護師としての経験が浅く、アセスメントの自己学習において何から始めたらいいか分からない方へ>

よくある学生さんや新人看護師さんの悩みで、「解剖や疾患を勉強したけど行動に繋がらない」「知識は身に付いたけど、何を看護記録に書いたらいいのか分からない」
ということを聞きます。
この場合は、知識とフォーカスを当てるべき部分、具体的介入が繋がっていないのだと思います。
看護記録はある程度逆算(つまり結論を出してから)しながら書かないといけないので、
その辺が難しいのだと思います。
お勧めのトレーニング方法として、慣れるまでは疾患について記載されている参考書を見ながら、看護師のアセスメント風に言うとどうなるだろう?と考えながら
シミュレーション自己学習するといいと思います。
例えば参考書で喘息のページを見たとします。
「S:息が苦しい」「O:呼吸状態増悪の所見(バイタルサイン異常など)・Wheeze(喘息時の呼吸音)あり」
「A:喘息の可能性あり」「P:発作時の指示に従い〇〇投与/Dr報告」などです。
これにより、自己学習中でも危機回避のための看護アセスメントや情報統合のシミュレーションができます。

まとめ

以上となります。
一度この「看護アセスメント」の考え方のコツをつかむと、自分が今後どうしたら良いのかまで導き出すことが出来るので、とてもお勧めです。
アセスメントに対して苦手意識を持つ方も多いと思いますが、実は結果的に自分の看護業務や患者さんへの対応に
役立つことが多いので、是非日頃の業務の中で「アセスメント力」を意識した思考や行動を心がけてみることをお勧めします。
ぜひ、日頃から「看護アセスメントは情報統合力と危機回避がポイント」であることを、頭の片隅に置いていただけると幸いです。

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