アセスメントが苦手な新人看護師さんへ、長期入院患者さんの事例から考えるアセスメントの意義

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#1211 2020/09/25UP
アセスメントが苦手な新人看護師さんへ、長期入院患者さんの事例から考えるアセスメントの意義
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新人看護師さんの中には、看護記録を書く際のアセスメントが苦手な方がいらっしゃると思います。
今回の記事では、私が体験した長期入院患者さんの事例を基に、私の考えるアセスメントの意義をお伝えします。
これを読んでアセスメントの意義を再認識し、少しでも苦手意識が軽減されましたら幸いです。

・アセスメントとは

アセスメントとは、患者さんの訴えなどの主観的情報、バイタルサインや検査値、表情や皮膚の状態などの客観的情報を総合的に分析し、患者さんの看護上の問題を明らかにすることです。
そして、明らかになった看護問題を解決するために看護計画を立案し、実行することが看護師の役割です。もしアセスメントが間違っていれば、患者さんへ間違った看護を行ってしまうことになってしまうため、看護にとって大変重要なものです。

・アセスメントが書きやすくなるコツ

しかし、アセスメントに苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか。看護師が「アセスメントが難しい」というとき、看護記録に書くアセスメントを指していることも多いと思います。
そこで、ここでは看護記録におけるアセスメントが書きやすくなるコツをお伝えしたいと思います。

・挙げられている看護問題ごとに記載する

看護師が業務の中で収集し記録する必要のある情報(観察項目)は多岐に亘ります。
例えば、寝たきりになった患者さんでは、自力での排痰が困難、褥瘡リスク、便秘など複数の問題を抱えた患者さんが少なくないと思います。
このような患者さんに対して、看護師が収集する必要のある情報は、痰の性状・量、呼吸状態、SpO2、皮膚の状態、栄養状態、便の量・性状、腸蠕動音など数多くあります。
これらの情報を全てまとめて看護記録に記載しても、焦点が絞れずうまくアセスメントを書くことが難しいでしょう。
そこで、看護問題ごとに情報を記載するようにします。
たとえば、上記のような患者さんでは「排痰困難」「褥瘡リスク」「便秘」などの看護問題が挙がっているかと思いますので、それぞれの看護問題ごとに情報を記録するようにします。
すると、看護問題ごとにアセスメントはある程度型があるため、看護診断の本や先輩の記録を見て、自分でもある程度迷わずに書くことができるかと思います。
例えば、「排痰困難」の看護問題について、SOAP形式であれば以下のように書くことができます。
S:「痰とって」
O: SpO2:95%。喘鳴あり。聴診にて下葉に雑音あり。吸引で粘稠痰、多量に引ける。吸引後はSpO2:98%まで改善
A:痰の貯留によりSpO2が低下しているが、痰の粘度が高く自己排痰は困難。排痰援助が必要である。
P:痰の性状・量・呼吸状態の観察、吸入、吸引、体位ドレナージ

・看護問題が挙げられていない場合

新規の患者さんで看護問題が挙げられていない場合などは、ヘンダーソンの14の基本的欲求、ゴードンの11の機能的健康パターン、NANDAの看護診断などの看護理論に沿って記録すると良いでしょう。これらもアセスメントはある程度パターン化されているため、それほど難しくないのではないかと思います。
例えば、ゴードンの機能的パターンのうち「2.栄養―代謝パターン」を用い、SOAP形式でアセスメント(記録)を書くと以下のようになります。
S:「お尻が痛い」
O:アルブミン3.0g/dL、仙骨部発赤あり、自己体動なし
A:低栄養状態で自己体動もないことから、仙骨部に褥瘡リスクがある。
P:体位変換、エアマットの使用、寝衣・シーツのシワをのばす、皮膚状態の観察

・異常はあるがアセスメントできない場合

しかし一番困るのは、想定されていない異常が起き、アセスメントができない場合ではないでしょうか。
そのような時にどうすれば良いか、私の病棟で実際にあった、アセスメントはできなくても異常に気がつくことができた新人看護師の事例を紹介したいと思います。

患者さんは骨折のリハビリのために転院して来られた方で、入院期間は数カ月にわたっていました。
よく、あちこちが痛い、調子が悪いと訴えられる不定愁訴が多く、訴えがあっても医師や看護師は「いつものことだ」と、あまり真剣に耳を傾けないことも多い患者さんでした。
看護問題としては、リハビリ中のため「転倒リスク」、また糖尿病の合併症があったため「血糖コントロール」が挙げられており、日々の看護記録も主にこれら2つについて記載されていました。
ある日、患者さんから「足が痛い」と訴えがありました。その日の担当の看護師は「リハビリ頑張り過ぎたんですかねえ」と言って、特にそれ以上のことは行いませんでした。
しかしその翌日、担当になった新人看護師は同じ訴えを聞いて、その患者さんの下肢を確認しました。
そうしたところ、いつもより下肢が熱感を持ち、腫れているようであると気がつきました。
彼女はいつもその患者さんのおむつ交換をしていたため、その日の状態がいつもと違うことに気がつくことができたのです。
彼女はこれらの異常についてアセスメント(原因の分析)はできませんでした。
しかし、先輩看護師に報告したところ「深部静脈血栓かもしれない」とのことで、すぐに医師に報告され、ドップラー検査の結果、DVT疑いとのことで急遽、救急病院へ搬送されました。
この事例で新人看護師はうまくアセスメントができませんでしたが、彼女の対応は不十分だったのでしょうか。
私はそうは思いません。
彼女は「深部静脈血栓症の疑いがある」というところまではアセスメントができませんでしたが、患者さんの訴えを受け止め、自分で観察可能な項目を観察し、先輩に異常を報告しました。
その結果、先輩看護師は医師に報告し、医師の診察・検査につながり、結果的に急変を予防することができました。

・アセスメントの意義とポイント

毎日看護記録を書く看護師にとって、アセスメントで悩んで記録が書けないということは正直に言うとなるべく避けたいことかもしれません。
先ほどアセスメントが書きやすくなるコツとして挙げた、看護問題ごとやゴードン等の枠組みを使い、ある程度パターン化されたアセスメントを参考に書くことは間違ったことではありません。
しかし、アセスメントを書きやすい看護記録(看護問題に応じたもの、枠組みに沿ったもの)を書くことに偏り過ぎると、看護問題に上がっていない情報やうまくアセスメントができない情報の収集や記録が避けられてしまうという可能性があります。
そうなってしまっては、患者さんの状態の変化に対応できなくなり本末転倒になってしまいます。
アセスメントの意義は極論してしまうと、患者さんの身体的・精神的・社会的健康を保つことだと私は考えます。
ですから、患者さんの状態悪化を防ぐためには
・患者さんの訴えに耳を傾ける
・看護問題・看護計画に挙げられた観察項目以外にも、異常がないか観察する
・うまくアセスメントできなくても、報告する
ということが大切なことだと思います。

・アセスメント力を向上させるには

しかし、新人のうちはアセスメントができなくてもやむを得ないですが、アセスメント力の向上は必要です。
アセスメント力を向上するにはもちろん医学関係の書籍などで自己学習する方法もありますが、先輩や他のコメディカルの記録やアセスメントを読むことも大変勉強になります。
先輩看護師や医師の記録だけでなく、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の記録やアセスメントも、それぞれの専門分野の視点から書かれているため、総合的なアセスメント力の向上につながるかと思います。

まとめ

アセスメントを書くコツは、看護問題ごと、あるいはゴードンなどの枠組みを用いて、ある程度決まったアセスメントを参考にすることです。
しかし、想定外の異常が起きることもあります。
新人さんでは、そのような異常に気がついてもアセスメントができないことがあるかもしれません。
そのような時、「アセスメントできないから」と看護記録に書かないのではなく、記録に書くことはもちろん、先輩にも報告しましょう。経験豊富な先輩ならきっと正確なアセスメントをしてくれます。
そのような対応によって最終的に患者さんの健康を保つことができれば、アセスメントの意義は果たされたと言えると思います。
普段から先輩や他のコメディカルの記録やアセスメントを読むのもアセスメント力の向上につながりますので、ぜひ日々実践してみて下さい。

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