訪問看護におけるアセスメントとは

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#1171 2020/08/16UP
訪問看護におけるアセスメントとは
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病院で働く看護師と在宅で働く訪問看護師の二つを経験したことがある私は、病院と在宅で行われるアセスメントの方法が少し異なることを痛感しています。在宅でサービスを利用しながら生活する利用者のアセスメントに重要なのは、ストレングスモデルなのです。

著者である私は、約15年間の看護経験があります。その内訳は、病院勤務が約13年。そして訪問看護が約2年です。
病院勤務と訪問看護の勤務を行ってみて、大きな違いを感じていることがあります。またその違いは、アセスメントの違いにも通じていると思います。そこで今回は、私が感じている病院と訪問看護師のアセスメントの違いについてご紹介していきたいと思います。

・病院勤務の時のアセスメント

病院で勤務している時には、病院が治療の場であったため、病院に入院してきて治療を受ける人をまず患者と呼び、その患者の持つ症状や病気などで大きな問題点に注目をして看護計画を立てることがほとんどでした。

特に急性期であれば、病気や症状が命に直結することもあります。そのため自分が観察したことをすぐにアセスメントして、どのようにするべきか考えることは必須でした。
そのため急性期であれば、疾患の治療に関するケアや痛みに関することを看護上の問題として取り上げることも多かったです。老人看護の分野で対象が高齢者であれば、せん妄や褥瘡といったことも大きな問題点として取り上げていました。急性期を脱して退院が視野に入ってきた患者や、慢性期の患者では、日常生活についてのアセスメントを行い、退院に向けての看護計画を立てていました。

いずれにしても、私がアセスメントをするときには、まず患者の問題点に注目し、そこから分析をしていくという方法が基本だったのです。

・訪問看護のアセスメント

現在私は訪問看護師として、いくつかのお宅を訪問していますが、その方のことを患者と呼びません。在宅にいて、生活をしているということが基本でもありますし、その中で私たち、訪問看護のサービスを利用しているだけなので、利用者と呼びます。

訪問看護で行うアセスメントとしては、病院で勤務しているときのように、利用者のできないことに注目してアセスメントをすることもよくあります。しかし病院とは異なる在宅生活の場です。家族がいて、不自由はありながらも日常生活はおくることが出来ている、そのため生命を脅かすような緊急性の高い問題は、ガン末期や呼吸器を装着している人をのぞいては、それほどありません。

私が訪問看護師になってそこで立てられる看護計画で驚いたことは、利用者の出来ることに注目をして計画を立てるということでした。例えば、今の利用者はこれはできるけれど、これはできない。では出来る部分をもっと伸ばすためにどのようにしたらいいのかという点に注目をしながらアセスメントをすることが多かったです。

・病院と訪問看護の考え方の違いに戸惑い

私は、小児科や整形外科の病棟経験もあります。そのためやはり緊急性の高い問題や阻害されている健康障害に注目をして、看護計画を立てることがほとんどでした。またよく見られる事例ではクリティカルパスを使用することも多かったですね。個別性が重要といいながら、クリティカルパスを使用したときには、個別性は十分盛り込まれていなかったような気がしています。

始めは訪問看護師になってからも、その考えはかわりませんでした。
そこで訪問看護師になった時に初めて指摘をされたのです。私が受け持ったある事例では、身体の清潔保持が出来ないということに注目をしました。その方は、片足を切断してしまったため、日常生活で自分でお風呂に入ることが困難になりました。訪問入浴などのサービスを利用すれば清潔保持はできるようになりますが、訪問入浴も毎日ではありません。

そのため清潔保持が出来ないとアセスメントをしたのです。
しかし、古くから訪問看護を利用しているある利用者は、もうすでに十年くらい入浴をしていない人がいました。家族もいるのですが、お風呂という設備自体使うことができなくなっていたのです。それでも週一回の訪問の際には体をふいたりすることで、皮膚のトラブルを起こすこともなく、生活は支障なくできていたのです。また朝起きたときには顔と手をふくという習慣は確立されていたのです。

この利用者の事例を見ると、私は10年間も一度も入浴していない?と本当に驚きました。確かに臭気はあるし、着衣も汚れています。しかし本人はそれを不快にも思っていないし、それで十分だと感じていたのです。もしかすると年齢も増し、感覚も麻痺してきていたためだとも考えられます。また年齢を重ねてきたので、着替えることも面倒臭くなってしまったという理由もありました。しかしそれで不自由なく成り立っていたのです。

家族が生活をしている在宅に入り込んで看護をするということは、その家のルールに従うという必要があります。そのためこちらから清潔にしましょうと何度も働きかけても、それを受け入れられなければ実践することはできないのですね。その10年間入浴していない利用者もそうでした。そのため私たちも無理強いすることなく、利用者の希望に沿ってきたまでなのです。

そんな事例を見ると私が始めにアセスメントした、清潔が保持できないという利用者は、まだまだできることがいっぱいあったのです。片足がなくても、自分で這って移動できる。手を洗うことが出来る…。

そこで私は気が付きました。訪問看護の看護計画というのは、必ずしも問題点だけを解決するためのアセスメントではなく、今ある能力をどのようにすれば最大限生かすことが出来るかということを考えるアセスメントでなければだめだと。
どうしても問題点に注目してしまう病院の立場の看護師。しかし在宅に行くと、今ある能力を最大限生かすことに注目したアセスメントをすることが大切だということを痛感しました。

・ストレングスモデル

上記で述べたことをストレングスモデルということを訪問看護に来て初めて知りました。ストレングスモデルというのは、利用者の持つ強みや長所に視点を置いて考える。強みを伸ばす考え方なのです。

介護の現場や精神障害のある方のケアをするときに用いられることが多い言葉です。病院にいる時にはストレングスモデルという言葉は聞いたこともありませんでしたが、訪問看護師として在宅医療にかかわり始めて、耳にする機会が多くなりました。
ただまだ私の頭の中は、病院で働く看護師の考え方も残っています。そのためどうしても、これが出来ない、ここが問題点だとすぐに考えてしまう傾向もあります。

しかしながら、在宅に来ると、できないからじゃあどうする?在宅では改善することは不可能だということもよくあります。それだったら、今できるところを伸ばす。利用者がやりたいという方法でやってみるということに注目するのが一番効果的なのです。
ストレングスモデルという言葉を知り、私は利用者を見る目が少し変わってきたなと思います。看護師として問題点を見つける視点ではなく、出来ることは何かを見つけていく視点を持つことが出来るようになりました。

・医療と介護の生かせるアセスメントをしていこう

このように私は病院看護師と訪問看護師を経験することにより、以前よりも考え方の幅が広がりました。何よりもストレングスモデルを知ったことでアセスメントをする方法が変わってきたのです。
以前病院で働いている時には、患者の問題点を抽出してすぐにアセスメント出来る看護師はすごいなあと思っていたことがよくあります。またそのような人が出来る看護師だと思っていたときもあります。
しかし訪問看護師になってみると、利用者の話をじっくり聞き、出来ることを見出し寄り添いながらケアを行っていく方法もあるんだということを、いま身をもって実感しています。

まとめ

いかがでしたか?病院と在宅という二つの現場を経験したからこそわかる違いを紹介してみました。どうしても注目しがちな医療的な問題点。しかし在宅では、生活するために今ある強みや長所を伸ばしていくストレングスモデルに注目することが大切です。そう考えると、利用者の思いを聞き、寄り添いケアをしていくという訪問看護の本質を理解することが出来ます。

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