働く職場をどこにするかは看護師にとって大きな悩みになる点です。納得して働ける職場を選び出せるようにするために看護師が活躍している転職先として介護施設と保健施設の魅力を紹介します。
・看護師には病院以外にも職場がたくさんある
看護師として働きたいと考えて大学や短大、専門学校などに通う人がよくイメージしている職場は病院やクリニックです。医療現場で患者と親しくコミュニケーションをとっている姿を見たり、病気や怪我で苦しかったときにお世話になったりしたのが理由で看護師を目指す人が多いのは確かでしょう。ただ、看護師が働く職場は病院やクリニックだけではありません。
医療以外の現場でも看護師は活躍しているので、就職や転職の際には候補として考えてみるのが大切です。必ずしも医療施設で働くのが自分にとって適しているとは限らず、他の種類の職場の方が楽しく働けたり、大きな活躍ができたりすることもあります。
代表的なのが介護施設と保育施設なのでどんな特徴があるのかを確認しておきましょう。
・医療施設と介護や保育の施設との違い
医療施設では病気や怪我で苦しんでいる患者が訪れてきて、その治療をすることで患者に満足してもらうというのが基本的な目標になります。
医療保険を適用することを前提とした保険診療をするのが一般的になっている影響もあり、患者が来たときにはどんな病気なのかを特定するために問診や検査をした上で治療方針を決めるのが普通です。
その際に根拠があって多くの患者にとって効果があることが示されている治療や看護の方法を踏襲するようにルールやガイドラインが定められているのが当然になっています。
人によって同じ医療費を払っていても受けられる治療が異なるのでは不満を抱く患者も出てくるでしょう。そのため、均質性を重視しているのが医療の特徴です。
これに対して介護施設や保育施設では個別性を大事にしているのが特徴として知られています。介護を受ける人によってどんな症状があるかは異なり、それに応じた対応をしなければ満足してもらうことはできないでしょう。
病気と違って原因に対して紐づけられた治療法があり、その通りにすれば大抵の症状は治るというわけではありません。
多くの場合には加齢に伴って生じてきた心身の機能低下が原因で大きな改善を見込むのは難しくなっています。
その症状と付き合いながらできるだけクオリティーオブライフを高めることが重視されるのが介護なのです。
そのため、均質的な対応をしていても納得してもらえる可能性が低く、個々に何を求めているのかを推し量りながら看護をしていくことになります。
保育施設での看護についても病気が原因で体調が悪くなってしまう子供だけでなく、雰囲気に馴染めなかったり、両親との関係がうまくいっていなかったりしているのが原因で体調を崩すことも少なくありません。
一対一の関係で対処できるわけではなく、一人一人とじっくりと話をしてどんな対応をしてあげるのが良いかを導き出すことが求められます。このような個別対応の必要性が高いのが介護や保育の現場に共通する点です。
医療施設でも個別医療が重要だということが言われるようになってきているのを知っている人もいるでしょう。
ただ、個別医療が本当に必要とされているのはターミナルケアや難治性疾患の患者の治療のときのように、この治療をすればほとんどのケースでは完全寛解するという治療法が存在していないケースです。
その場合には介護などと同じようにクオリティーオブライフを重視した治療が求められるので均質性よりも個別性を重視しなければなりません。しかし、ほぼ治療法が決まっている保険診療をする医療現場ではクレームをつけられるリスクを下げる意味でも均質性が重視されているのが一般的です。
・看護に対する考え方に応じて候補にしよう
介護や保育の施設が向いているかどうかは看護師としてどういう姿勢で看護をしていきたいかによって異なります。
均質性と個別性のどちらが自分なりの看護観に合っているかを考えてみましょう。有効性が高いことが示されていて確立されているプロトコルに従って看護をしていき、効率よく業務をこなしてより多くの人に元気になってもらいたいという人には医療施設が向いています。
均質性を保つためにプロトコルが作られている現場が多く、その通りに対応すれば多くの患者の容態が改善して喜んでもらえるようになっているからです。
それに対して、個人個人とじっくりと話をして、その人に対して最適な看護の仕方を自分なりに考えて実践していきたいという人は介護や保育の施設が向いています。大まかにはこういうときにはこのように対応した方が良いというガイドラインは存在していても、一対一対応でプロトコルが定められていないのが介護や保育の現場では一般的です。
看護師個人の能力に何をすべきかが委ねられていることが多く、自分なりの考え方で看護をしながら色々な人に対応できるようになりたいという人に適している現場なのです。どちらが自分の看護観に合っているかをよく考えて転職先の候補を選ぶようにしましょう。
・看護する相手に得手不得手があるなら候補にしよう
介護や保育の施設は看護する相手に得手不得手がある人にとっても魅力的な候補です。
基本的には介護施設では高齢者、保育施設では小学校就学前の小さな子供の看護をすることになります。
医療施設でも診療科の選び方によっては患者の年齢層や性別などを限定できる場合もありますが、その診療科での業務や求められているスキルが自分に合わないということもあるでしょう。
高齢者の看護なら自分は活躍できる、高齢者とのコミュニケーションには自信があるという人は介護施設を候補にしてみましょう。
また、子供と過ごす時間が楽しい、いつも子供に好かれているという人は保育施設への転職も考えてみるのが大切です。
今まで医療施設で働いてきた看護師にとってはキャリアチェンジになるので敷居が高いと感じるかもしれませんが、実際には医療現場で培ってきた経験がないと対応が難しい場合がほとんどです。
自分の取り柄も培ってきた経験も生かせる職場になる可能性があることを念頭に置いて、転職活動をするときには一度は検討してみましょう。
・責任のあり方が違うのも念頭に置いておこう
医療施設と介護や保育の施設とでは看護師が負う責任のあり方が異なっていることも知っておくことが必要です。
医療施設では現場に何人もの看護師がいるのが普通で、規模が大きい施設ではかなりの人数が確保されています。
特に大勢いる現場では役割分担をしていて、特定の業務にだけ従事していることもあるでしょう。
同じ業務に携わる看護師が何人もいることも多く、責任が分散される傾向があります。それに対して介護施設や保育施設では現場に看護師が一人しかないことが多いのが特徴です。
医療や健康に関わる業務は一手に引き受けることになり、自分が全ての責任を負う形になる場合が多くなっています。
大きな施設では二人か三人の看護師がいる場合もあるものの、自分に割り当てられた業務は自分で判断して行わなければならないのが通例です。
そのため、責任が重くてプレッシャーになる反面、やりがいや達成感も大きいという魅力があります。それが自分にとってストレスになるのなら医療施設を検討した方が良いでしょう。
しかし、プレッシャーを受けながら自分なりに考えて仕事をしていくのにやりがいがあると思うのであれば介護施設や保育施設には大きな魅力があります。実際にどんな業務をすることになるのかも念頭に置きつつ、転職先として前向きに検討してみましょう。
まとめ
看護師は医療施設をまず職場の候補にしてしまいがちですが、介護施設や保育施設にも医療施設とは違う魅力があります。個別性を重視して看護をしていきたい、プロトコルに従うよりも自分の考え方で仕事をしたいという人に向いているので転職のときには候補として考えてみるようにしましょう。
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