認知症のご利用者様へのケア~グループホーム、特養編

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#1033 2020/04/04UP
認知症のご利用者様へのケア~グループホーム、特養編
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介護歴、20年の介護福祉士です。ヘルパー2級を修了し特養で仕事、その後は認知症グループホームで10年以上管理者をやっておりました。たくさんの失敗事例があり、またいくつかの成功事例がありました。そのころの事例のお話を何点かしたいと思います。園の選び方・実際の面接をもとにした面接対策を紹介していきます。

何点かの事例をお話ししますね。

・食事編

グループホームのご利用者様の中でも食事を拒否される方もおります。認知症により食事するという行為を認識されておりません。笑顔で「いらない」と断れます。無理に口に入れようとしても、怒り出してしまうこともあります。最初のケースとして、みそ汁を飲まないおばあちゃんがおりました。 そのケースをお話しします。 おばあちゃんはみそ汁を拒否します。できれば、汁物は飲んでいただきたいものです。僕はグループホームに勤務していたので調理の業務があります。当然みそ汁も作ります。そこでおばあちゃんへの声かけの視点を変えます。 おばあちゃんは今まで、きっとたくさんのお食事を作ってきたことでしょう。戦争で食物のなかった時代があったかもしれません。 おばあちゃんに尊敬の念を持っておばあちゃんに質問します。本来の目的はおばあちゃんの口の中にみそ汁を飲んで頂きたいという目的です。 そこで視点を変えます。「おばあちゃん、僕の作ったみそ汁どうだい?薄いかい?ちょっと味見てよ」とおばあちゃんにアドバイスを求めます。どんな年になっても人に頼られるのはうれしいものです。 僕は男性だったのでおばあちゃんはいつも味見をしてくれました。普通に「口から召し上がる」「味見する」呼び方は違っても結果は、摂取することです。なんどか味を手直ししながら全量摂取することが出来ました。おばあちゃんも自分の味を聞いてくれたことが大変うれしかったそうです。 家にいてもお嫁さんに調理の指導権を握られていたようでした。 似たケースでごはんを食べてもらえないおじいちゃんが、おりました。 ぞの方は70年ほど農業に従事されお米を生産していた生活歴がありました。 このケースの場合は、おじいちゃんに「今年のお米の出来はどうだい?」「このごはんは、どこの農協の米かわかりますか?」と視点を切り返しました。 おじいちゃんは、一口食べて「まあまだな、今年の出来は…」のような返答で食べて頂きました。やはり長年の農家のキャリアがあります。 よくぞ自分に聞いてくれたなって言う表情でした。その他の食材やお茶とかでも応用できます。「今年の新茶はどうだい?」「このおかず何かわかりますか?」など質問の視点に切り替えます。そこで楽しく会話が弾めば少しずつ食事が楽しくなってきます。 とにかく僕は男性だったのでおばあちゃん方にはたくさんの味見をして頂きました。いつも質問していたおばあちゃんは、 毎回僕が質問することで、「私がやるよ」とキッチンに立ってくれるような時もありました。水分摂取のケースの応用もあります。やはり水分摂取は大事です。でもトイレに行くのが面倒なため、お茶などを飲まないケースもよくありました。水分摂取時の声かけの際「お茶飲みますか?」と質問すると「飲む」「飲まない」という二つの回答があります。そこで聞き方を変えてみます。「お茶とお水どちらの見ますか?」と選んで頂きます。「お茶」「お水」の回答が出やすいように聞きます。両手にカップなど持って聞いても良いかもしれません。高齢の方だと、「せっかく用意してくれてから悪いね」という意識も出ます。ご自分で選ばれたものは、比較的納得されておりますのでそのまま飲んでもらえる事が多かったです。「何が飲みたい?」という声かけも悪くはないですが、やはり遠慮されてしまうケースが多いので、はっきりと具体的な名称を出したほうが良いです。

・食事編2

次に重度認知症の方の食事事例です。 僕がヘルパー2級を修了して、初めて介護の職場に入った特養のおばあちゃんの話です。その方は食事は全介助でした、嚥下は良く先輩方は、だいたい10分ほどでほぼ完食することが出来ました。ある日、僕がそのおばあちゃんに介助に初めて着くことになりました。食事は荒刻みでした、マニュアル通り水分を横のみで摂取し、スプーンで介助を始めました。ですが、まったく口を開けてくれません。いろいろ試しても、一口も開けてくれませんでした。時間はどんどん経っていきます。食堂の他の介護員さんがバタバタと食事の片づけを始めています。僕は焦るだけでした。見かねて先輩と交代すると、ものの5分程度で完食しました。その介護員の方は、まったくの無資格で寮母さんと呼ばれる時代から20年以上勤務している方でした。完全にプロの実力を見せつけられました、また尊敬、感動すら覚えました。次の機会にその先輩の食事介助の方法を見せてもらうことになりました。もちろん声かけも大切ですが、見事な食事介助でした。まず、おばあちゃんは、口を開ける事を忘れておりますが、食材が口に入ると咀嚼し飲み込むことが出来ます。むしろ嚥下は良いくらいです。そして口の動きにパターンがあることがわかりました。上唇に酢の物が当たると舌で、上唇を舐めます。次に上唇におかゆを数粒乗せると、そのおかゆを舌でペロッととる動きが見られ、その次に大きく、こぶしが入るくらいに口が開きました。そこでスプーンで口腔内に食材をいれると、モグモグと食べ始め、飲み込むとまた大きな口を開けてくれました。その繰り返しで食事が終了しました。食事介助のポイントの重要性を見つけられました。常日頃からの行動パターンを把握する重要性に気が付きました。当時、ヘルパー2級(今の初任者研修)を修了しただけで、一人前気取りだった僕が目を覚ました瞬間です。

・入浴編

グループホームに戻ります。 グループホームでは入浴を拒否されるケースも良くありますね。一つの実例を上げます。あるおじいちゃんは、 入浴拒否がいつもありました。ただ、お風呂に入ることは、嫌いではなく認知症特有の「面倒だ」という意識から来ていました。 ここでも声かけの視点を変えます。「お風呂に入りませんか?」という声かけでは、「入る」「入らない」という回答があります。 このケースでも食事と同じように選択していただきます。「ここのお風呂と、電車に乗っていく〇〇温泉、どちらが良いですか?という二つの質問をします。元来、面倒くさがりのおじいちゃんなので、遠くの温泉には行くとはまず答えません。自分で答えた場合は比較的スムーズに入って頂けました。 一度、「温泉行く!」って言われ、別な日に温泉に日帰り旅行へ行ったことがありました。別なケースですが、この方は青森に永く住まれていたおじいちゃんでした。その方には「お風呂へ入りませんか?」という声かけはせずに、青森の津軽弁で「湯さ、どさ?(お風呂はどうですか)」と方言で話すととても理解をして頂けました。その方のケアでたくさんの津軽弁をマスターしましたね。本来、「ダメ」という言葉は、介護では不適切ですが、おじいちゃんは、にっこり笑って「まいねー(ダメだよ)」はいつも笑ってくれましたね。

・夜間編

ホームであった実話です。 あるおばあちゃんが、毎晩夜中12時過ぎに職員に「おなかがすいた、なんかくれない?」と来るようになりました。経過を観察して見ると夜中に起きてからしばらく、居室内をごそごそとして食べるものがない事がわかると、職員のところに来るようです。 当初は暖かい飲み物など提供していましたが、そのリズムが習慣化し、だんだん朝まで何度も来るようになりました。僕も夜勤に入っていたので、やはり朝まで何度も何度も来られます。温厚な方でしたので不穏になることはありませんでしたが、だんだんと昼夜逆転化してきました。 認知症介護の基本は説得では納得です。どうやったら、おばあちゃんが、納得してゆっくり夜中も休んでもらえるかを検討しました。夜間の食事量を微増したり、おなかがすかない方法を考えましたがなかなか解決できない日々が続きました。やはりその日の夜中も、ごそごそと居室内から、食べ物を探している音が聞こえました。「あ、そうだ」逆転の発想です。僕は一つの方法を試してみました。おばあちゃんが、来る前に僕から行く事にしました。 「〇〇さん?起きてる」おばあちゃんは、ドアを開け「どうしたの」と僕に聞いてきました。僕は逆に「〇〇さん、おなかがすいたんだけど、何か食べるものはないですか?」と質問しました。そうすると、数分ガサゴソとしてから、僕に「ごめんね、何にもないね、ごめんね」と話されました。その日は、結局そのまま居室から出てこなく朝まで休まれていました。翌日の夜中も職員が先手をうち、おばあちゃんがガサゴソを始めたときに聞くと、やはり居室内を数分探した後職員に食べ物がない事を伝え起きてきませんでした。三日ほど同じ対応をすると、おばあちゃんは夜中のガサゴソもやめて、良眠されるようになってきました。説得ではなくおばあちゃんは、食べ物がない事に納得されたようです。ある日僕が夜勤の日、おばあちゃんに言われました。 「夜中に来ても何も上げられなくてごめんね」と。その後生活リズムも戻り、問題なく暮らすことが出来るようになりました。

まとめ

認知症介護は大変奥が深いです。ご利用者様の状況によってすべて対応が違います。ここに書かれたことを実証しても上手くいく保証もありません。 ですが、本当にご利用者様の情報をアセスメントして日頃の行動を事細かく観察することにより、きっとケアのヒントが見つかるはずです。 安易に薬に頼るのではなく、僕の事例を一つの参考にしてもらえればなと思います。

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