看護師にとって、実施したことをカルテに残す「看護記録」を書くことは看護師に必要なスキルの1つとも言えます。
その中でも1番難しく、手が止まり、実習でも新人指導でもやり直しの回数が多いのが「アセスメント」ですよね。
「何を書けばいいんだろう?」「アセスメントって難しくて苦手」「何回書いても書き直し…もう嫌!」
そんなお悩みを解決して、スラスラとアセスメントが書けるようになるコツをお伝えします。
アセスメントって何?
看護の記録方式は「SOAP」と「フォーカスチャーティング」の2種類が主流となっていますが、どちらの看護記録にも「アセスメント」の項目があり、これが看護学生や新人看護師を悩ませるタネにもなっています。
「アセスメント」とは「考察」のことで、「物事を明らかにするために十分考えること」という意味があります。つまり、「自分が観察したことを十分に考え、問題点を明らかにする」という頭の中で行われている作業を「アセスメント」といいます。
アセスメントの目的って?
アセスメントを含む、看護記録の目的から考えてみましょう。
看護記録を記載する目的は、次の3点です。
- 自分が行った観察やケアを「事実」「証拠」として記録する
- 患者の看護問題に対して観察したことや変更したことを記録する
- 次の勤務者など患者に関わる職種全体への情報共有をする
この3点について、「事実に基づいた自分の考え」を述べる場所が「アセスメント」となっています。
アセスメントを難しく考えてしまう理由
根拠付けが苦手
実習先や先輩からの指導で、二言目には「根拠は?」と聞かれ、言葉に詰まった苦い経験があるでしょう。アセスメントで自分の考えを述べるには、この「根拠」が必要とされる場面が多くあります。根拠とは言い換えれば自信のようなものです。それを持って自分の考えを述べることは、百戦錬磨の看護師でない限りなかなか容易ではありません。
専門用語や病態生理が苦手
アセスメントをするためには、まず患者の観察を充分に行えなければ話になりません。そのためには、その患者の疾患や病態生理を理解し、専門用語を用いて記録する必要があります。病態生理が頭に入っていないと専門用語も出てきませんし、観察が不充分で記録に不足がある場合は永遠にアセスメントと結びつかない迷宮入りの記録になってしまいます。
自分の考えを医療的な文言を交えてまとめるのが苦手
観察も充分にでき、結論も頭の中にはある…それなのに、アセスメントだけ書けない場合もありますよね。話し言葉では考えを伝えられるのに、記録で文章にするとなると書けないパターンです。観察記録までは専門用語を使ってバッチリ書けているのに、アセスメントになると途端にしどろもどろな言葉使いになっている記録もよく見かけます。
アセスメントを書きやすくするコツ
では、どうすればアセスメントがスラスラ書けるようになるのでしょうか?
まずは病態生理を叩き込む!専門用語に慣れる!
いきなりアセスメントがスラスラ書けるようになることはありません。千里の道も一歩から、です。まずはアセスメントを導くための観察が充分できることが重要です。そのためには、現在関わっている疾患の病態生理を叩き込みましょう。
全て覚えるのは大変ですから、最初は教科書を見ながらだっていいのです。「◯◯という疾患の主な症状は××と△△である」から始まり、そこに「観察した症状がある」という事実を当てはめて書くと「だから自分は◯◯という疾患の可能性があると考えている」という根拠になります。教科書には専門用語で書かれているため、書いているうちに覚えるようにもなります。
「何を伝えたいのか?」を考える
病態生理と専門用語に慣れたら、次は「自分以外のスタッフに何を伝えたいか」を考えましょう。
- 症状が悪化してないのでこのまま継続して観察でOK
- 緊急性はないけど、ちょっと変な感じもあるから注意してください
- 新たな問題が出てきたみたいだから看護計画を変更します
- 体は大丈夫だけど、精神面に心配な部分があるからよく話を聞いてあげて
- よくわからない症状だから、主治医に報告してあります
などなど。異常がないから継続して観察しましょう、といったアセスメントがほとんどですが、少しでも変化がある場合や看護計画をかえる必要がある場合、必ず「伝えたいこと」があるはずです。
「伝えたいこと」を専門用語使用率60%くらいの気持ちでわかりやすく
医療用語や難しい漢字ばかりのカルテは見にくくて、「賢い印象」しか残らず何が言いたいのかわからない…と思ったことはありませんか?
大切なのは「伝わらなければ意味がない」ということ。
話し言葉で書くことはできませんが、オール専門用語でも伝わりません。カルテは看護師以外も見るので、他の医療者にも伝わるように記載する必要があります。
「??になることが予測される」「??を起こすリスクがある」「??が問題である可能性がある」など自分の恐れていること、他のスタッフに注意をしてもらいたいことを自分の思いを乗せて記載していきましょう。
診断や断定など、看護師の業務範囲を越えないように書く
心電図などの記録では「af波形なので??」などの記載を見かけることもあります。アセスメントなので、その波形に見えたという考えを記載したくなりますが、あくまで「診断するのは医者」です。「この波形かな?この病気かな?」と思っても、医者が診断する前だった場合は「??波形の可能性があるため主治医に報告が必要」などと、あくまで予測の範囲にし、診断は医師に仰ぐ姿勢を記しておきましょう。
アセスメントをしっかり書いている人の記録を繰り返し読む
病態生理もされていて、自分の考えも入ったアセスメントを書く先輩はたくさんいるはずです。看護師はもちろん、医者やリハビリセラピストなど、他職種の記録もたいへん参考になります。カルテを読む際は、患者の症状の情報収集だけでなく、「誰のどんな記録が読みやすいか」を意識して読むようにして見ましょう。
上手い人の記録を意識して読むようになると、自分の記録のセンスも格段に上達します。医療とは関係なく、本を読むことも言葉の使い方や言い回しの勉強になるためおすすめです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?アセスメントの苦手意識は、勉強することと他の人の記録を読み込むことで解決できるものです。
1番大切なのは「その患者に対して起きていることの、何を伝えたいか」という自分の熱い気持ちです。それがベースにあれば、あとは繰り返し書くことで記録の力はついてきます。自分の受け持ち患者の何を伝えたいのかさえまとめることができれば、もうアセスメントは怖くありませんよ。
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