心不全は病気ではなく、病態のため完璧に治す方法はなく、自己管理を行うことが重要です。しかし、一般の方は病態に関する知識不足があるため看護師が丁寧に指導し、知識の充足を行う必要があります。
そのための3つのポイントを記載したので、ぜひ指導するときの参考にしてみてください。
心不全は病気!?長く付き合う方法
心不全と聞いて、「病気」と考える方も多々いらっしゃると思います。しかし、心不全は病気ではなく、あらゆる疾患の終末像であり病態に分類されます。なので、心不全自体に効く薬や心不全を完璧に治す治療は存在しません。心不全の薬とは、尿を排泄しやすくする薬や心臓の動きを抑える薬なので心不全自体をよくしているわけではありません。なので、心不全を治すという解釈より「心不全と長く付き合っていく」という解釈が正しいです。
では、心不全と長く付き合うためにはどうすれば良いか3つのポイントに絞って解説します。
心不全で再入院される方の中で大きな要因が3つあります。それは、
- 内服薬の自己中断をしない
- 塩分・水分を取り過ぎない
- ストレスを溜めないです。
1つずつ解説していきます。
内服薬の自己中断
これは、心不全特有の原因だと思います。
なので、まずなぜ自己中断してしまったのかをアセスメントする必要があります。
もし、勝手な解釈で自己中断していた人がいるとします。
例えばですが、風邪をひいている時には薬を飲みますよね?でも、風邪の症状が治ったらどうですか。飲まないですよね。風邪の場合は、ウイルスがいなくなれば治ったも同然なので問題ありません。
しかし、心不全はそうは行きません。
心不全は症状が改善すれば普通の生活を送ることができます。なので、患者さんは「良くなったんだ」と解釈される方もいらっしゃいます。
しかし、それは間違いです。
心不全治療の内服薬は「退院した時の良い状態を維持するために内服しているもの」です。
なので、自己判断で内服中断したら心不全は悪化します。ただ、患者さんの中には「症状がないのに内服を続けるなんて無理だ!」と思う方もいらっしゃると思うので、家族や社会資源(訪問看護など)を活用することも効果的だということを提案してほしいと思います。
1人では、続けられなくても支えがあれば続けられるという方は多々いらっしゃるので、キーパーソン以外でもお孫さんに手伝ってもらうなどを試すこともオススメします。もし、独居の場合は内服カレンダーを用いて、飲み忘れを予防するような取り組みを行うこともできます。
塩分・水分の取り過ぎ
塩分の取り過ぎは体に悪いという話はどこかで聞かれたことがあると思います。
美味しいと感じる食べ物ほど、塩分を多く含まれています。
ちなみに、心不全患者が1日で摂取する塩分の目標は6gです。これは、ラーメンを汁まで全て飲み干してしまえば、1食で摂取可能な量に相当します。
では、ラーメンを汁まで飲み干したとします。そうすると、水分を飲みたくなりませんか?この行動は体の生理的な現象です。
摂取された塩分を中和するために水分を摂取しなければなりません。なので、ラーメンを食べるにしても汁は残すということは撤退する必要があります。もし、味が薄いなと感じる場合は、七味や香辛料などは塩分が少ないので、このようなもので味付けをする必要があります。
では、水分の1日の目安はどれくらいでしょうか?
これは個人差がありますが1L程度とされています。
水分の管理方法としては、500mlのペットボトルを2本用意して1日に飲む量を目で見てわかるようにします。これをするだけでも全然違います。
たまに、患者さんの中には「お酒は水分に含まないよね?」と言われる方もいらっしゃいますが、それは間違いです。なぜなら、お酒は飲むだけに終わらず、つまみも欲しくなったり、締めにお茶漬けなどを摂取する可能性もあるからです。
なので、お酒の量については主治医に判断してもらう必要があります。
塩分・水分の過剰摂取を抑えるための手段がもう1つあります。
それは、「毎日、決まった時間に体重測定を行なう」ということです。
体重が数日以内に2・3kg増加する場合は筋肉や食事ではなく、余分な水分貯留の可能性が高いです。なので、体重を量りましょう。
さらに言うと、同じ時間に量ることも重要です。例えば、1日目朝食時、2日目昼食後であれば、明らかに2日目増加しています。こういう誤差をなくすためにも同じ時間に量りましょう。その人に合った食事管理をアセスメントし、計画を立案することもとても重要です。
ストレス
現代社会において、ストレスがない人は存在しないと思います。
そして、ストレスは交感神経を活性化させるため心臓に負担をかけます。なので、心不全を悪化させる要因になります。
例えば「塩分・水分の取り過ぎ」についてです。塩分や水分の摂取ばかりを気にしてしまい、摂取量が極端に少ないと身体は体調を崩してしまい、ストレスがかかります。
そのほか長期旅行も含みます。
海外などに行く場合、飛行機による移動、不慣れな土地での生活などストレスは増大してしまいます。また、他の家族が病気をしたり亡くなられるということも大きなストレスとなります。昨年は被災された方も多く、避難所生活によるストレス増大に関連した心不全悪化を認めた方が多々いらっしゃいました。看護師としては、病態や症状に目を向けることも大切ですが、入院前の生活情報にも目を向けたり、家族も含めた介入が求められます。
今回、紹介させていただいた心不全管理のポイントはほんの一部に過ぎません。
でも、この3つを守るだけでも元気な時間を増やすことにつながります。心不全の患者さんはだいたい亡くなる前は寝たきりになるケースが多いです。完璧に管理をしていても、入退院を繰り返す方もいらっしゃいますが、ごく稀です。1日1日の積み重ねが、大切になるので、管理の必要性について指導をおこない、アセスメントし、患者指導に役立てていただきたいと思います。
まとめ
心不全は自己管理次第で長く付き合うこともできるし、短い期間で入退院を繰り返すことにもつながる病態です。
今回挙げたポイントは3点ですが、この3点を守るだけでも大きな成果が現れることは間違いないです。患者さんや家族の生活を維持できるよう、看護師として入院中に何ができるかを考え知識を提供することが重要です。
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